1. トップページ
  2. コラム
  3. コラム
  4. 「開業医はやめとけ」は事実?よくある失敗例と原因・成功の秘訣を解説
医療事務

「開業医はやめとけ」は事実?よくある失敗例と原因・成功の秘訣を解説

公開日/2025.08.22 更新日/2025.08.22

「開業医はやめとけ」といわれていることをご存じでしょうか?しかし、失敗の原因をしっかりと押さえれば、開業医としての成功を目指すことが可能です。本記事では、開業医が直面する廃業リスクなどを徹底解説。よくある失敗例とその原因を分析し、成功するための5つのポイントや、向いている人の特徴を具体的にご紹介します。

なぜ「開業医はやめとけ」と言われるのか?

「開業医はやめとけ」と言われるのには、大きく3つの理由があります。以下、「廃業リスク」「不安定な収益」「医業以外の業務」について一つずつ解説します。

廃業のリスクがゼロではない

令和5年令和4年増減の差
一般診療所の施設総数104,894105,182-288
うち、有床診療所の施設数5,6415,958-317
うち、無床診療所の施設数99,25399,224+29
1年間で開設・再開した一般診療所の総数5,854
(令和4年10月~令和5年9月)
1年間で廃止・休止した一般診療所の総数6,142
(令和4年10月~令和5年9月)

参考:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」

開業医は勤務医と異なり、常に廃業リスクが伴います。競争の激しい地域や人口減少が進むエリアでは、患者数の確保が難しくなることもあるでしょう。

また、経営に必要な知識やスキルが不足していたり、投資の回収が滞ったりすると、医院の運営が困難になり、最終的には廃業に追い込まれる可能性も生じます。実際、令和4年10月~令和5年9月までの1年間で廃止・休止した一般診療所の数は6,142にものぼりました。廃止・休止の明確な理由をまとめた統計はありませんが、経営の知識・スキルの不足に加え、開業時の医師の平均年齢上昇や後継者不足なども、要因として挙げられます。

収益が安定しない可能性もある

開業医は患者数が収益に直結するため、収入が不安定になりがちです。集患が計画通りに進まなかったり、医療機器や材料費の高騰で支出が上回ったりすれば、収益は減少します。

さらに、収入や支出が増えれば税負担も重くなるのが現実です。固定給で働く勤務医とは異なり、経営状況次第で収入が大きく変動するリスクがあります。

医業以外の業務に追われやすい

開業医は診療に加え、経営者として多岐にわたる業務をこなす必要があります。資金繰りやスタッフの採用・労務管理、集患のための広報活動など、勤務医時代にはなかった業務に追われがちです。

医師自身の疲弊はもちろん、診療業務に集中できず、患者さんへのサービスの質が低下するリスクもあります。

知っておきたい!開業医の失敗例と原因

開業医には、さまざまなリスクがあることがわかりました。ここでは、開業医の具体的な失敗例とその原因を解説します。失敗のリスクを減らすためにも、まずはその内容を知っておきましょう。

開業地域の選定ミス

開業にあたって適切でない地域を選んでしまうと、患者さんの確保が難しくなります。開業地域の選定ミスは、地域の人口動態や競合医院、医療需要の調査不足が原因です。

また、自分の専門分野に合う地域や、地域の特性・住民のニーズの理解不足も要因の一つと言えます。

資金の管理不足

資金調達やその後の計画が甘いと、資金繰りが悪化し、経営難に陥るケースがあります。開業時の初期投資や、運転資金の確保・見積もりの不足が大きな原因です。

資金が尽きれば人件費や家賃の支払いも困難になるうえ、融資の返済にも追われることになり、経営破綻に至るケースは少なくありません。

設備投資・選定ミス

設備投資の失敗も経営を圧迫する大きな原因です。過剰な設備投資が、資金繰りを悪化させます。反対に、必要な設備が不足していると提供できる医療の質が落ち、患者満足度の低下や集患の失敗を招くことになるでしょう。

自院の診療方針や患者層に見合った、適切な規模の投資判断が不可欠です。さらに、高額な設備や機器を勧めるのではなく、各医院の身の丈に合った適正な提案をしてくれる設備営業担当やコンサルタントを選ぶことも意識しましょう。

経営知識・集患対策の不足

優れた医療技術があっても、経営が成功するとは限りません。開業医には、医師としてのスキルに加え、経営やマーケティングのスキルが不可欠です。

しかし、経営の基本的な知識や集患対策の知識、インターネットマーケティングなどの知識が不足している医師は少なくありません。結果、よい医療を提供しても患者さんに認知されず、経営難に陥ってしまうケースもあります。

採用活動・教育力の不足

スタッフマネジメントの失敗は、医院経営の根幹を揺るがします。採用の広報活動が不十分だったり、人材を見極める目がなかったりすると、よいスタッフは集まりません。

また、採用後の教育体制が確立されていないと、定着率が低下し業務効率も悪化します。スタッフの教育不足が患者満足度の低下にも直結するため、院長のリーダーシップが問われます。

コミュニケーション力不足

コミュニケーション能力の不足は、経営に深刻な打撃を与えます。スタッフとの対話がうまくいかない場合、離職のリスクが高まります。

また、患者さんへの説明不足、威圧的な態度はリピート率低下につながるでしょう。患者さん、スタッフから信頼される医院になるために、開業医自身のコミュニケーション能力は不可欠です。

今までのやり方への固執

勤務医時代の感覚のまま開業すると、失敗するリスクが高まります。勤務医とは違い、開業医は経営や人事、経理、広報などすべての最終責任を負います。同じ医師でも、勤務医と開業医の違いがあることをしっかりと自覚しなければなりません。

この意識転換ができず、経営者としての視点を持てなければ、失敗のリスクは大きくなるでしょう。

開業医に向いている人・向いていない人を比較

開業医に向いている人 開業医に向いていない人
・コミュニケーション能力がある
・変化に対応する柔軟性がある
・強い責任感や向上心がある
・コミュニケーションが苦手
・リスクを極端に恐れる
・学ぶ意欲が低い

失敗を防ぐためには、開業医に求められる資質を知っておくことも重要です。ここでは、開業医に向いている人・向いていない人の特徴を詳しくご紹介します。

開業医に向いている人の特徴

・コミュニケーション能力がある
・変化に対応する柔軟性がある
・強い責任感や向上心がある

開業医として成功するのは、優れた臨床能力に加え、経営者としての資質を兼ね備えた人です。まずは患者さんの不安に寄り添い、信頼関係を築く高いコミュニケーション能力が求められます。また、スタッフの意見に耳を傾け、チームをまとめるリーダーシップも必須です。

そのほか、経営の全責任を負うという強い覚悟も求められます。医療技術はもちろん、経営やマーケティングといった未知の分野も貪欲に学び続ける姿勢が欠かせません。医療制度の変更や社会の変化にも柔軟に対応し、常に最善の策を考えて実行できる人が、地域に根差したクリニックを築き上げていけるでしょう。

開業医に向いていない人の特徴

・コミュニケーションが苦手
・リスクを極端に恐れる
・学ぶ意欲が低い

逆に、開業医に向いていないタイプも明確に存在します。前述の通り、コミュニケーションが苦手な人にとって、開業医は困難と言えます。患者さんからの信頼を得られなければ集患率は低下し、スタッフとの関係が悪化すれば離職につながるためです。

また、収益の不安定さやトラブルなどのリスクを極端に恐れる人、自身の健康や時間を管理できない人も要注意です。そして何より、経営やマーケティングなど、診療以外の分野を学ぶ意欲が低い人は不向きと言えます。「診療だけが仕事」という意識では、激しい競争の中でクリニックを存続させることは難しいでしょう。

開業医として成功を目指す5つのポイント

開業医はやめとけと言われる理由や、具体的な失敗例を解説してきました。これらを踏まえて、開業医として成功するためのポイントをご紹介します。以下5つのポイントをしっかりと押さえましょう。

ゆとりある資金計画を立てる

具体的な取り組みの例
・想定外の支出にも対応できるように予備の資金を用意する
・必要な初期投資・運転資金の詳細を入念に計画する
・専門家のアドバイスを受けながら資金計画を立てる

開業に際しての成功の鍵は、余裕のある資金計画を立てることです。初期投資だけでなく、開業後すぐには収入が安定しないことを見越して、十分な運転資金と予備資金を確保しましょう。

予期せぬ支出や収入の変動に対応できるよう、入念に計画することが大切です。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けながら資金計画を立てましょう。

開業地域・設備を慎重に選定する

具体的な取り組みの例
・地域の人口動態や競合医院を調査・分析する
・必要な設備を見極め、無駄な投資を避ける
・マーケティング視点を持って医院名を定める

地域の人口動態や競合医院を調査・分析し、自院の専門性が活かせる需要の高い地域を選定しましょう。自院に必要な設備を見極め、無駄な投資を避けることも重要です。

また、医院名は患者さんが覚えやすく、診療内容が伝わる名前にするなど、細部にまでマーケティング視点を持つことが集患につながります。

経営知識・スキルを高める

具体的な取り組みの例
・経営の基本を理解し、収支管理や人材マネジメントを行う
・常に最新の経営情報をキャッチする
・経営セミナーや講座の受講を視野に入れる

臨床医としてのスキルだけでなく、経営知識・スキルを高める必要があります。経営の基本や収支管理、人材のマネジメントといった経営スキルは必須です。

また、医療制度の改定や経済動向など、常に最新の情報をキャッチする姿勢も欠かせません。必要であれば経営セミナーや講座の受講なども視野に入れ、積極的に知識を吸収しましょう。

マーケティング施策に取り組む

具体的な取り組みの例
・Webサイトを充実させる
・SNSで情報発信をする
・マーケティング施策で医院のブランディングを強化する

開業に際して、患者さんの獲得やリピート率向上を目指すには、効果的なマーケティング施策が不可欠です。とくに、インターネットを活用した集患施策は、現代の開業医にとって重要な手段と言えます。WebサイトやSNSを積極的に活用しましょう。

こうしたマーケティング施策によって医院のブランディングが強化され、患者さんの信頼を得やすくなります。

質の高いチーム作りを目指す

具体的な取り組みの例
・スタッフの教育や研修を積極的に行う
・スタッフとのコミュニケーションを重視し信頼関係を築く

良質な医療サービスを提供するには、理念を共有し共に成長できるチーム作りが不可欠です。スタッフの教育や研修を積極的に行い、スキルアップを支援する体制を整えましょう。

また、日頃から密なコミュニケーションを心がけ、スタッフ間の信頼関係を築くことも重要です。質の高いチームづくりにより、医院全体の評価向上を目指せます。

開業医になるためのステップ

1.開業時期の目処を立てて、事業計画を立案する
2.開業地を選定する
3.資金調達を進める
4.クリニックの内装や扱う医療機器を選定する
5.従業員の求人を作成し採用活動を進める
6.開設届等各種申請を行う
7.クリニックのホームページや広告を打ち出す

開業医になるには、綿密な準備と段階的なステップが不可欠です。まず「いつまでに開業するか」を決め、理念や詳細の収支計画を盛り込んだ事業計画を立案します。次に、診療圏調査に基づいて開業地を選定しましょう。自己資金と金融機関からの融資で資金調達を進めながら、クリニックの内装や医療機器を選定します。

その後、共に働くスタッフの採用活動を開始し、保健所への開設届など法的な手続きも済ませます。最後にホームページや広告で開院を告知し、地域への認知度を高めていきましょう。

開業医になるメリット・デメリット

メリット デメリット
・勤務医よりも高収入を得られる可能性がある
・診療方針や導入機器などを自分で決定できる
・自分やスタッフが働きやすい職場環境を築ける
・経営の全責任を負う
・精神的な負担が伴う
・廃業のリスクがある

最後に、開業医になるメリットとデメリットを押さえましょう。勤務医とは異なる働き方だからこその魅力と、背負うことになるリスクの両側面について、具体的に紹介します。

開業医になるメリット

・勤務医よりも高収入を得られる可能性がある
・診療方針や導入機器などを自分で決定できる
・自分やスタッフが働きやすい職場環境を築ける

開業医は、開業地の選定や集患施策、スタッフの教育などが効果的に進めば、安定した高収入を得られます。また、診療方針や導入する機器から内装デザインまで、すべてを自分で決定できることも大きな魅力です。

さらに、スタッフの採用や労働条件も自由に設定できます。人間関係のストレスが少なく、自分にとってもスタッフにとっても働きやすい職場環境を築き上げることが可能です。

開業医になるデメリット

・経営の全責任を負う
・精神的な負担が伴う
・廃業のリスクがある

開業医のデメリットは、診療だけでなく経営の全責任を一人で負わなければなりません。そのため、収益の不安定さやスタッフの労務管理など、精神的な負担が大きくなります。また、経営スキルの不足など、さまざまな要因で廃業のリスクも伴うでしょう。

経営面に不安がある場合は、専門家に相談するのが賢明です。ソラストでは、医療機関経営支援サービスを展開しています。クリニックの収益改善や施設基準遵守、診療報酬の適正化など幅広く対応しています。一人で抱え込まず、外部の力を借りることが成功の鍵です。

経営スキルと周到な準備で開業医として成功を目指そう

開業医は廃業リスクや不安定な収益、多忙な業務から「やめとけ」と言われがちです。その原因には、杜撰な資金計画や開業地の選定ミス、スタッフ管理の甘さなどがあります。成功するためには、臨床能力だけでなく、経営者としてのスキルと周到な準備が不可欠です。リスクを理解し対策を講じれば、高収入と理想の医療を実現できる大きな魅力があります。

ソラストは、長年の実績で培ったノウハウを活かし、医療機関経営支援サービスを展開しています。診療報酬の最適化からスタッフの接遇研修、日々変わる法令への対応まで、クリニック開業医さまごとの状況に合わせた適切な支援をご提供します。ぜひ下記からお気軽にご相談ください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

関連コラム

他カテゴリーのコラムはこちら