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ソラストオンライン

医療・介護従事者のための
Newsコラム

医療や介護現場の課題や業界の動向、最新情報を多角的にお届けする「ソラストオンライン」。従事者のみなさまに役立つ話題をさまざまな切り口で提供しているNewsコラムです。

2021.3.11
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ニュース解説
データに基づいた"科学的介護"が
介護のあり方を変える⁉

2021年度介護報酬改定の議論は、改定率プラス0.7%という結果となりました。今回の改定では多くの部分で介護サービスのデータ、エビデンス(科学的根拠)を集め、提示していくことが求められており、科学的介護の推進につながるものとなっています。ここでは、「科学的介護」がどのようなものか、また「なぜ、科学的介護を進めるためにはデータベースが必要なのか?」を解説します。

介護の質やケア提供の
標準化にもつながる科学的介護

科学的介護では、提供した介護サービスによって自立支援につながることなどが、エビデンスをもって示すことができるようになる。職員の負担軽減や質の向上なども期待されている。

科学的介護とは、要介護者の自立支援や重度化防止につながることなどが、数字データなどの客観的なエビデンスによって認められた介護サービスを意味します。厚生労働省では「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護サービス」とも説明しています。

これまでの介護現場では、食事や排泄の介助など、提供したサービスの効果について、数字データなどの根拠を示しながら説明することができませんでした。そのため、「食事介助をしている」とは言えても、「食事介助により、利用者の身体状況や介護状態にどのような効果を与えているのか(与えていないのか)」が、わかりづらい状態にありました。

この点は、医療現場でのEBM※(エビデンスに基づいた医療)と、よく対比されます。研究や治療の積み重ねにより、「この疾患であればこの薬を飲ませて、このような体調管理法を徹底すれば、回復する」といった根拠に基づいて医療は提供されています。そのため、医師は個人的な経験や勘に頼ることなく、EBMをもとに、患者を治療することができます。介護現場ではこうした根拠を示せていない点が、問題視されていました。

科学的介護では、たとえば次のように効果を説明できるようになります。
<近くの公園まで10分散歩することで得られる効果>
これまでの介護…「日々のお楽しみや満足度向上」
科学的介護…「〇カ月継続することで、筋力が◎%アップし、歩行速度が●%速くなる」

主観的ではなく、客観的に効果を示すことができます。これにより、利用者に提供するサービスの意義・意味を、今まで以上に理解してもらいやすくなるとも考えられています。

さらに、どの職員であっても同じ効果が引き出せることにもつながるので、介護の質の向上・標準化が進むことが期待されます。また、利用者ごとにどのようなサービスが適正かがわかりやすくなるため、提供サービスを考える時間なども短くなり、介護職の負担軽減の可能性もあります。

根拠ある介護を行うために
活用が期待されるLIFE

科学的介護では効果の有無を示す根拠の蓄積が必要。そのためのデータベースとなる科学的介護情報システム「LIFE」が2021年4月から稼働する。分析結果をもとに、より質の高い介護が提供されることが期待される。

この科学的介護を実際に行う上で必要なのがエビデンスです。「どのような状態の人に、どのようなケアを提供すれば、機能の維持・向上につながるのか」といったデータを収集することで、根拠として積み上げられていきます。これを収集するために厚生労働省がつくったデータベースが、「CHASE」と「VISIT」※です。

「CHASE」では、利用者のADL(日常生活動作:食事や入浴など)や栄養、口腔・嚥下状態、認知症状、ケアの内容などに関するデータを介護事業者がデータベースに入力し、提出します。「VISIT」では、心身機能が「自立」「一部介助」「全介助」のどれに当てはまるかなど、通所・訪問リハビリテーションが提供しているリハビリテーションの質の評価に関するデータを集めています。

なお、2021年度の介護報酬改定で、厚生労働省はこの2つを一体的に運用していくとして、名称も「科学的介護情報システム(LIFE※)」に統一されることになりました。その上で、LIFEに対して介護事業所が必要なデータ提出をした場合の加算(科学的介護推進体制加算)が新設されます。

介護事業者は関連するデータをLIFEに入力すると、収集されたデータが分析され、その結果が利用者・事業所単位で介護事業者側にフィードバックされます。事業所が提供していたケアが適正だったのかどうかを判断したり、良い結果が出ていなければリハビリ計画を見直すなどPDCAサイクルを回すことで、成果が出るケアの提供が期待されています。

各介護事業所においては、LIFEにデータを提供するだけでなく、フィードバックされたデータをもとに、自事業所の提供している介護サービスの効果が出ているのか、利用者の自立支援につながっているのかなどを、確認することが大切になります。データ入力を単なる手間と捉えず、データ活用がより質の高い介護を提供していくことにつながると捉えることができると、一つひとつの業務の利用者への効果を考えて実施するようになるなど、介護への向き合い方も変わってくるのではないでしょうか。

※各略語の正式な表記
EBM:Evidence Based Medicine
CHASE: Care,HeAlth Status & Events
VISIT:monitoring & eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care
LIFE:Long-term care Information system For Evidence

(提供:株式会社日本医療企画)
以上

図表 出典:
図表1
未来投資会議構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」会合(第1回)「資料4」をもとに、日本医療企画作図
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/health/dai1/siryou4.pdf

図表2
第191回社会保障審議会介護給付費分科会「【資料2】自立支援・重度化防止の推進」をもとに、日本医療企画作図
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000691249.pdf