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ベースアップ評価料は2026年度改定で何が変わった?算定要件と届出手順を解説

公開日/2025.07.10 更新日/2026.10.26
目次

ベースアップ評価料の対象が広がり、自院で算定できるのか、届出をどう進めるべきか判断に迷う経営者は少なくありません。2026年度の診療報酬改定で対象職種に事務職員や40歳未満の勤務医師が加わり、すでに算定している医療機関も届出の再提出が必要になりました。自院に関係する区分の選び方から、届出と報告の実務、算定のメリットと注意点までを解説します。

ベースアップ評価料とは【基礎知識】

ここでは、ベースアップ評価料がどのような制度で、何を目的にしているのかを解説します。2026年度改定で対象がどこまで広がったのかも含めて確認します。

ベースアップ評価料の目的

ベースアップ評価料は、令和6年度(2024年度)の診療報酬改定で新設された評価料です。物価の上昇や人材の確保難が続くなか、医療機関が職員の賃金を継続的に引き上げるための原資を、診療報酬として手当てすることを目的としています。算定して得た報酬は、対象となる職員の基本給や毎月の手当の引き上げに充てることが求められます。政府は改定のたびに賃金改善の目標値を示しており、2026年度改定でも職種ごとの目標が設定されています。

ベースアップ評価料の対象

対象は「施設」と「職種」の両面で決まります。施設面では、外来・在宅医療を行う医療機関、入院機能を持つ病院、訪問看護ステーション、歯科医療機関に加え、2026年度改定で保険薬局や歯科技工所が新たに加わりました。

職種面では、看護職員や薬剤師などの医療関係職種に加え、事務職員や40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師などへ範囲が広がっています。自院がどの区分に該当するかは「自院で関係するベースアップ評価料の区分」で、対象職種の詳細は「ベースアップ評価料の対象職種と賃金改善ルール」で整理します。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」

自院で関係するベースアップ評価料の区分(医科・訪問看護)

ここでは、ベースアップ評価料の区分を施設の種類ごとに整理します。医科・訪問看護のどちらに自院が当てはまり、どの区分を併せて算定するのかを確認できます。このほか、歯科医療機関や保険薬局、歯科技工所にも、それぞれ評価料・支援料が設けられています。

区分 対象施設
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)
診療所・外来中心医療機関
入院ベースアップ評価料 入院機能を擁する病院・医療機関
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)
訪問看護ステーション

病院・診療所(医科)で関係する区分

医科の医療機関で中心になるのは、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)と入院ベースアップ評価料です。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、外来医療または在宅医療を行う医療機関が対象で、初診・再診・訪問診療などに応じた点数を算定します。(Ⅱ)は、(Ⅰ)を届け出たうえで、(Ⅰ)による収入が賃金改善に必要な額の50%未満にとどまる場合に評価を上乗せする制度です。初診・訪問診療時は、新たに賃上げを行う施設で8〜96点、継続的に賃上げを行う施設で16〜160点、再診時等はそれぞれ1〜12点、2〜20点の範囲で算定します。

入院機能を持つ医療機関は、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と併せて入院ベースアップ評価料を届け出ます。入院ベースアップ評価料は1日単位で、所定の計算式にもとづき区分ごとの点数を算定します。

【外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)】
施設基準 (1) 外来医療または在宅医療を実施している保険医療機関であること
(2) 当該保険医療機関に勤務する職員がいること
(3) 対象職員の賃金改善(ベースアップ等)を実施すること。賃上げの目標は2026年度・2027年度ともに+3.2%(看護補助者・事務職員は+5.7%)
算定できる点数 新たに賃上げを行う施設:初診 17点 / 再診等 4点 / 訪問診療 79点(同一訪問診療時は19点)
継続的に賃上げを行う施設:初診 23点 / 再診等 6点 / 訪問診療 107点(同一訪問診療時は26点)(2026年6月〜2027年5月)
2027年6月以降:新たに賃上げを行う施設:初診 34点 / 再診等 8点 / 訪問診療 158点(同38点)、継続的に賃上げを行う施設:初診 40点 / 再診等 10点 / 訪問診療 186点(同45点)へ拡大予定
※継続的に賃上げを行う施設:2026年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出ている施設、または2024年3月と比べて基本給等を2026年度に5.5%(看護補助者・事務職員は8%)以上引き上げた施設
届出できる医療機関 病院、有床診療所(医科)、無床診療所(医科) ※歯科は「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」が対象
【外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)】
施設基準 (1) 入院基本料等を算定していない、または1か月あたりの算定回数が30回未満の保険医療機関であること
(2) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)を届け出ており、入院ベースアップ評価料を届け出ていないこと
(3) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)による収入の見込みが、対象職員の賃金改善に必要な額(賃金改善算定基礎額)の5割未満であること
(※区分は、賃金改善算定基礎額などをもとに決まります。詳しくは厚生労働省の届出の手引きをご確認ください)
(4) 常勤の対象職員が2人以上いること(過疎地域などの例外あり)
算定できる点数
(初診・訪問診療時/再診時等)
新たに賃上げを行う施設:初診・訪問診療8〜96点/再診等1〜12点(12区分)(2026年6月〜2027年5月)
継続的に賃上げを行う施設:初診・訪問診療16〜160点/再診等2〜20点(12区分)(2026年6月〜2027年5月)
2027年6月以降:新たに賃上げを行う施設は初診・訪問診療8〜192点/再診等1〜24点、継続的に賃上げを行う施設は初診・訪問診療16〜256点/再診等2〜32点(24区分)へ拡大予定
※継続的に賃上げを行う施設:2026年3月31日時点でベースアップ評価料を届け出ている施設、または2024年3月と比べて基本給等を2026年度に5.5%(看護補助者・事務職員は8%)以上引き上げた施設
届出できる医療機関 無床診療所(医科)、有床診療所(医科)
※入院基本料等の算定が月30回未満で、入院ベースアップ評価料を届け出ていない医療機関
【入院ベースアップ評価料】
施設基準 (1) 入院基本料、特定入院料または短期滞在手術等基本料を算定している保険医療機関であること
(2) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(または歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ))を届け出ており、(Ⅱ)は届け出ていないこと
(3) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)による収入の見込みが、賃金改善算定基礎額未満であること(区分は賃金改善算定基礎額や延べ入院患者数などをもとに決定)
(4) 常勤の対象職員が2人以上いること(過疎地域などの例外あり)
算定できる点数 1〜250点(1日単位) ※2026年6月〜適用(2027年6月以降は500区分まで拡大予定)
届出できる医療機関 病院、有床診療所(医科)

訪問看護ステーションで関係する区分

訪問看護ステーションは、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)が対象です。

(Ⅰ)は勤務する看護職員などの賃金改善を目的とし、利用者1人につき月1回算定します(重複算定は認められません)。

(Ⅱ)は、(Ⅰ)だけでは改善しきれない場合に、賃金改善算定基礎額や医療保険の利用者割合などから決まる区分に応じて月1回30円〜1,040円(2027年6月以降は最大1,580円)の範囲で算定する上乗せの評価料です。

段階的な引き上げが予定されており、2027年6月以降は原資がさらに増える見込みです。過去の年度に賃上げの実績がないステーションでも、2026年度以降の計画があれば新規に算定できます。

【訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)】
施設基準 (1) 訪問看護ステーションであること
(2) 当該訪問看護ステーションに勤務する職員がいること
(3) 対象職員の賃金改善(ベースアップ等)を実施すること
算定できる点数 新たに賃上げを行う訪問看護ステーション:1,050円(月1回・利用者1人につき)(2026年6月~2027年5月)
2027年6月以降:2,100円(所定額の100分の200)
1,830円(月1回・利用者1人につき)(2026年6月~2027年5月)
2027年6月以降:2,880円
※継続的に賃上げを行う訪問看護ステーション:2026年3月31日時点で訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)を届け出ていた、または2024年3月と比べて基本給等を2026年度に5.5%(看護補助者・事務職員は8%)以上引き上げた訪問看護ステーション
届出できる医療機関 訪問看護ステーション
【訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)】
施設基準 (1) 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている訪問看護ステーションであること
(2) 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される金額の見込みが、賃金改善算定基礎額に医療保険の利用者割合を乗じた額の5割未満であること
(※区分は、賃金改善算定基礎額や医療保険の利用者割合などをもとに決まります)
算定できる点数 新たに賃上げを行う訪問看護ステーション:30円〜540円(2026年6月〜2027年5月)
継続的に賃上げを行う訪問看護ステーション:40円〜1,040円(2026年6月〜2027年5月)
※2027年6月以降は最大1,080円(新たに賃上げを行う訪問看護ステーション)/1,580円(継続的に賃上げを行う訪問看護ステーション)へ拡大予定(36区分)
届出できる医療機関 訪問看護ステーション

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】」

2026年度診療報酬改定によるベースアップ評価料の主な変更点

引用:厚生労働省「令和8年度診療報酬1.賃上げ対応」

ここでは、2026年度の診療報酬改定でベースアップ評価料がどう変わったのかを、4つの見直しに分けて解説します。対象の拡大や評価料の新設など、すでに算定している場合も対応が必要になる変更が含まれます。

対象施設・対象職員の拡大

2026年度改定では、ベースアップ評価料の対象が施設・職員の両面で広がりました。職員面では、これまで対象外だった事務職員が加わり、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師や薬局薬剤師も新たに対象になりました。施設面では保険薬局が加わっています。 対象が広がった分、自院で誰が対象になるかの線引きと、常勤換算を含む人数の把握がこれまで以上に重要です。

調剤ベースアップ評価料の新設

保険薬局の対象追加に伴い、調剤ベースアップ評価料が新設されました。処方箋の受付などに応じて算定し、得た収入を薬剤師や薬局事務職員の基本給・手当の引き上げに充てる仕組みです。医科の評価料と同じく、施設基準の届出と算定後の報告が必要です。

歯科技工所ベースアップ支援料の新設

歯科技工所で働く歯科技工士の賃金改善を後押しするため、歯科技工所ベースアップ支援料が新設されました。歯科医療機関が外部の歯科技工所へ補綴物などの製作を委託した場合に算定できる評価で、補綴・義歯・矯正など幅広い技工物が対象です。

委託先の技工所の処遇改善につなげる趣旨のため、自院が委託を行っている場合は、算定と費用の扱いを確認しておきましょう。

運用ルールの見直し

運用面の見直しは大きく3点です。1点目は評価体系で、継続的に賃上げを行ってきた医療機関を手厚く評価する区分が設けられ、2026・2027年度で段階的に引き上げる設計になりました。外来・在宅ベースアップ評価料は2027年6月以降におおむね倍増、入院ベースアップ評価料は区分が165から250に拡大しています。

2点目は入院料で、一般病棟入院基本料等が引き上げられた一方、2024・2025年度に継続的な賃上げを行っていない医療機関には入院基本料等の減算規定が新設されました。減算を避けるには入院ベースアップ評価料の届出などの要件を満たす必要があります。

3点目は原資の使途で、夜勤手当の増額に充てられることが明確になり、基本給等の引き上げに伴う賞与や法定福利費の増加分も賃金改善の実績に含められます。

ベースアップ評価料の対象職種と賃金改善ルール

ここでは、ベースアップ評価料の対象になる職種・ならない立場と、得た原資の配分ルールを解説します。誰の賃金をどの費目でどれだけ上げるのかを、院内で決めるときの判断材料になります。

対象となる職種

職種分類 具体的職種 2026年度改定による位置づけ 国による賃上げ目標率
看護職 看護師、准看護師、看護補助者 2024年より継続 +3.2%(看護補助者は+5.7%)
医療技術職 薬剤師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士
臨床工学技士、診療放射線技師、臨床検査技師、栄養士
管理栄養士、診療情報管理士
医師事務作業補助者
歯科衛生士、歯科助手
2024年より継続 +3.2%
事務職員 受付、医療事務職員、歯科診療所の事務職員、薬局事務職員、訪問診療に従事する関連職員、医療補助員 2026年度より対象職種に
明確に位置づけ
+5.7%
勤務医師等 40歳未満の
勤務医師・勤務歯科医師
2026年度より新たに追加 +3.2%
薬局職員 薬局薬剤師(40歳未満)
薬局事務職員
2026年度より新たに追加 +3.2%

対象は、看護師・准看護師・看護補助者などの看護職、薬剤師や各種療法士・臨床工学技士・診療放射線技師などの医療技術職、事務職員、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師などです。

国が示す賃金改善の目標は職種によって異なり、看護補助者や事務職員には他職種より高い目標が設定されています。雇用形態は問われず、正職員だけでなくパート職員や派遣職員も対象です。

対象外となる職種・立場

対象外となるのは、医療機関の経営者や役員(専ら事務作業のみを行う医療法人役員を含む)、管理者である院長、業務委託で働く人などです。40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師は、2026年度改定で新設された若手医師向けの区分の対象にはなりません。

また、派遣労働者や出向者については、自院の指揮命令下で主たる業務に従事し、派遣元等との契約変更等を通じて確実に賃金改善が図られる仕組みが担保されている場合は対象とできます。ただし、外部委託契約(清掃・設備管理等)の従事者は対象外です。

賃金改善の配分ルール

配分の基本は「3分の2ルール」です。算定で得た原資のうち、原則として3分の2以上を基本給または毎月決まって支払われる固定手当の引き上げに充てます。これに伴って増える賞与・時間外手当・法定福利費の事業主負担分は、賃金改善の実績に含めて差し支えありません。

恒常的に夜間の交代制勤務を担う職員の夜勤手当も、毎月の手当に準じて扱えます。配分の考え方は、職種ごとの役割や目標率をふまえて院内で整理しておきましょう。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 ベースアップ評価料等について」

ベースアップ評価料の届出と届出後の実務

ここでは、届出前の準備から必要書類、提出後に続く報告・管理までの流れを解説します。事務をどこまで自院で担い、どこから外部に任せるかを判断する材料にもなります。

届出前に確認したいこと

届出に入る前に、まず算定のメリットと注意点をふまえ、自院として賃上げをどう進めるかの方針を固めます。あわせて、自院が該当する区分(「自院で関係するベースアップ評価料の区分」を参照)と施設基準を満たせているか、対象職員の給与水準や常勤換算数はどうかを確認しておきます。

2026年度改定に対応するには、すでに届け出ている場合でも施設基準の届出をやり直す必要があります。届出が受理されれば、その翌月1日から算定を開始できます(月の最初の開庁日に受理された場合は当月1日から)。

必要書類と届出の流れ

・厚生労働省のページから届出様式をダウンロードする
・自院の施設に応じたベースアップ評価料の届出書を作成する
・管轄の地方厚生(支)局へ、必要書類を添えて提出する
・受理された翌月から算定を開始する
・算定した年度の8月に賃金改善中間報告書を提出する
・翌年度の8月に賃金改善実績報告書を提出する
・届出様式は算定するベースアップ評価料の種類によって異なる

届出様式は、厚生労働省のホームページや管轄の地方厚生(支)局で入手できます。届け出る評価料によって様式が分かれており、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)だけなら専用の様式、(Ⅱ)や入院ベースアップ評価料はさらに別添の様式が必要です。

2026年度改定では、以前は別に作成していた賃金改善計画書が届出様式に組み込まれ、提出書類が減りました。自院がどの様式を出すのかを早めに確認しておくと、準備がスムーズです。

届出後に必要な計画書・報告・管理

算定を始めると、報告の提出が2段階で続きます。始めた年度の8月に中間報告書(6月・7月分の実績)を、翌年度の8月に実績報告書を提出します。改定をまたいで届け出ている場合は、旧様式分と新様式分の両方が必要です。

あわせて、対象職員数が届出時から1割以上変わって区分が動くときや、算定をやめるときは、速やかに変更の届出をします。算定取り下げ(辞退)の届出を行うと、その翌月(または届出時期に応じた月)から算定が終了します。なお、職員数の変動による区分の変更届の場合は、翌月より新区分が適用されます。

ベースアップ評価料を届出・算定するメリット

ベースアップ評価料を算定すると対象職員の賃金が上がり、経営面でも次のような効果が期待できます。

人材確保や定着につなげやすい

ベースアップ評価料を算定して対象職員の賃金が上がると、仕事への納得感が高まり、離職率の低下につながります。医療業界は他業界と比べて賃金水準が低いことが人材流出の一因とされており、基本給や手当の改善は流出を抑える打ち手です。

離職が減れば、採用や教育にかかるコストの抑制にもつながります。欠員による現場の負担増や、残った職員のさらなる離職といった悪循環も避けやすくなり、人員配置を安定させられます。

採用面でもプラスに働きやすい

求人の場面でも、ベースアップ評価料による賃金改善は訴求材料です。基本給や手当の水準を引き上げていることを具体的に示せれば、他業界や近隣の医療機関と比較されたときに選ばれやすくなります。賃金改善を継続している実績は、募集条件の説得力を高め、応募の質にも影響します。

待遇の改善は、経験やスキルのある人材の採用にもつながり、安定した人材基盤づくりを後押しします。

賃上げの方針を院内外に示しやすい

ベースアップ評価料は、賃金改善の計画と実績を書面で管理する制度です。そのため、賃上げの方針や配分の考え方を、根拠を持って院内に説明しやすくなります。院内での合意形成が進めば、配分をめぐる不満も生じにくくなります。

算定にあたっては院内掲示や患者さんへの情報公開も求められるため、制度の目的を対外的に説明する準備にもつながります。

ベースアップ評価料を活用する際の注意点

一方で、ベースアップ評価料の届出・算定には注意点もあります。届出の前に、次の点もあわせて検討することが欠かせません。

事務手続きや院内調整の負担がある

算定を続けるあいだは、毎年の中間報告書・実績報告書の作成と提出が必要で、対象者の管理や給与計算との突き合わせも欠かせません。

集計や入力の誤りは後の返還リスクにつながるため、正確さが求められます。あわせて、配分の考え方を院内で合意する調整や、患者さんからの問い合わせへの対応も負担になり得ます。

持ち出しや配分バランスの課題がある

ベースアップ評価料は、算定で得た収入以上の額を人件費として職員へ還元することが前提です。そのため、医療機関としての持ち出しが生じる場合があり、各院の経営状況によっては負担が大きくなる点に注意が必要です。

また、事務職員や看護補助者など高い目標が設定された職種と、それ以外の職種との配分のバランスも論点です。評価があいまいなまま一律に上げると現場の不満を招きやすいため、数年先の昇給カーブまで見据えて、無理のない引き上げ幅を検討しておくことが欠かせません。

継続的な管理や報告対応が必要になる

制度は改定のたびに様式や要件が変わるため、最新の内容に追随し続ける必要があります。要件の誤認は遡っての自主返還につながりかねないため、対象者の範囲と「3分の2以上」の要件は正確に押さえておくことが重要です。

雇用契約書には、基本給と手当のどちらで改善したかや職種区分を明記し、算定対象と整合させておきます。こうした事務は、システム化や外部委託で負担を抑える工夫がしやすい領域です。

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ベースアップ評価料に関するよくある質問

ここでは、ベースアップ評価料について経営層からよく寄せられる質問に回答します。再届出の要否や、賃上げ済みの場合の扱い、算定をやめるときの手続きなど、判断の分かれやすい点を取り上げています。

Q. ベースアップ評価料をすでに届け出ていても、再度の届出は必要ですか?

A. 2026年度改定に対応するには、すでに届け出ていても施設基準の再届出が必要です。

改定前の届出は自動では引き継がれず、改定後の様式で提出します。届出が受理されれば、その翌月1日から算定を開始できます(月の最初の開庁日に受理された場合は当月1日から)。

Q. すでに賃上げを実施している場合でも、ベースアップ評価料は算定できますか?

A. 算定できます。2024・2025年度から継続して賃上げを行ってきた医療機関は、新設された継続実施機関向けの区分でより高く評価されます。

過去の賃上げを実績に含める取り扱いも認められています。

Q. 届出をしたあとで算定をやめることはできますか?

A. できます。算定をやめる場合は、速やかに変更の届出を行います。

届出をすると、その翌月から算定が止まります。ただし入院医療機関では、賃上げを実施していないと入院基本料等の減算対象になる点に注意が必要です。

Q. 小規模なクリニックでもベースアップ評価料は算定できますか?

A. 算定できます。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は無床診療所も対象で、施設規模による制限はありません。

パート職員は常勤換算をしたうえで届け出ます。得られる点数は対象職員数などに応じて決まります。

Q. ベースアップ評価料を算定しないと、どうなりますか?

A. 賃上げの原資を診療報酬で確保しづらくなり、人材の確保・定着でも不利になりやすくなります。

入院医療機関の場合、2024・2025年度に継続的な賃上げを実施していないと入院基本料等が減算される点にも注意が必要です。

自院の区分と届出期限を確認し2026年度改定のベースアップ評価料を賃上げ原資に活かしましょう

2026年度の診療報酬改定で、ベースアップ評価料は対象職種と対象施設が広がり、評価体系や届出の方法も見直されました。まず自院が関係する区分を把握し、届出の要否と時期、そして届出後に続く報告と管理まで見据えて算定の可否を判断することが、賃上げ目標の達成と施設基準の遵守、収益の安定につながります。

届出様式の作成や賃金改善の配分設計、毎年の報告書の管理には、専門的な事務が伴います。自院のリソースが不足する場合は、医事関連業務のアウトソーシングや経営支援の活用も検討できます。ソラストは医療機関向けのサービスを幅広く展開しています。まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

武井 智昭 たけい ともあき
2002年慶応義塾大学医学部卒業。内科・小児科の専門医資格を持ち2020年4月より医療法人つばさ会高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)に就任。この傍ら、株式会社TTコンサルティングを設立して医療機関へのコンサルティング・医学教育などを展開しており講演など多数実施。診療報酬に関しては医師会業務として理事(社会保険)を歴任。【保有資格<専門医資格>内科専門医・小児科専門医・感染症専門医・糖尿病専門医】
監修日 2026.10.26
記事の内容は監修日時点の制度に基づきます

この記事の著者

ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。
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株式会社ソラストは、1965年に医療事務の教育機関として創業した、
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(グループ社員約30,000人)

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1965年、日本で最初の医療事務の教育機関として創業。60年にわたり、診療報酬改定への対応を積み重ねてきました。
  • 1965年創業
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