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2020.9.25

広がる「特定行為に係る看護師の研修制度」
看護師のレベルアップが医療・介護の質向上に

お話を伺った人:
公益社団法人日本看護協会
常任理事 荒木 暁子 氏

超高齢社会、医師の働き方改革、在宅医療へのニーズの広がり。これからの医療には、解決しなくてはならない課題がたくさんあります。そのなかで脚光を浴びているのが、看護師の力。看護の分野だけでなく、医療・介護全体の質向上に貢献する可能性を秘めた「特定行為に係る看護師の研修制度」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

病態把握力などを磨き
在宅現場での活躍などに期待

「特定行為に係る看護師の研修制度」とは、どのような制度でしょうか。

荒木 医師または歯科医師の判断を待たずに、胃ろうカテーテルの交換や点滴の投与といった、一定の診療補助(=特定行為)を行える看護師を育成するための研修制度です。

研修修了後に行える「特定行為」には、21区分38行為があり、医師が作成した「手順書」に従って、研修修了した看護師は特定行為を行えます(図表)。研修は、区分ごとに15時間~72時間ある「区分別科目」のほか、250時間の「共通科目」を修了する必要があります。共通科目のなかで特に重要視しているのは、臨床推論力や病態判断力です。もともとは「チーム医療の推進」を検討するなかで看護師の業務を拡大する議論から始まり、研修制度が作られました。

超高齢社会では、医師だけでは業務を担いきれないことが予想されます。加えて、「病院から在宅へ」という流れの中で、医療ニーズの高い患者さんが在宅生活を続けることも増えており、医療と介護の連携も含めたチーム医療が重要となっています。この研修制度によって、業務の効率化やチームのコミュニケーションの円滑化、さらには医療・介護全体の質の向上が期待されています。

認定看護師や専門看護師などとの違いはなんですか?

荒木 専門看護師や認定看護師は、特定の看護分野で高度な実践能力を発揮できることを目的につくられた、日本看護協会が認定している資格制度です。特定行為に係る看護師の研修制度は資格を与えるものではありません。

これまでは認定看護師の資格取得と特定行為研修は別々に実施されていましたが、2019年に認定看護師制度が改正され、今年から認定看護師を教育するカリキュラムのなかに、特定行為研修が組み込まれました。

さらに、在宅領域に必要な科目を整理し、実施頻度の高い行為をまとめて行う「在宅・慢性期領域パッケージ」の研修も、今年からはじまっています。病院だけではなく、訪問看護ステーションや介護施設などで活動する看護師などから、多くの注目を集めています。

医師の考え方を理解し
適宜・適切な対応を可能にする

研修を修了した看護師がいることで、医療・介護の現場にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

荒木 大きく分けて3つのメリットが期待されています。

1つ目は、タイムリーに症状緩和ができること。たとえば、在宅患者さんを訪問した際、熱中症でぐったりしていた場合、通常であれば、その場で医師の指示を得なければ、点滴などを打つことができません。しかし、研修を修了した看護師は、点滴の投与に関して指示された「手順書」を予め出してもらっておくことで、それに従い、すぐに処置を行えます。それにより、悪化を早い段階で防いだり、入院などをせずに自宅での療養生活を支援することができます。適宜・適切に医療の必要性を見極められることが、重症化予防などにつながり、患者さんの負担を減らすことにもなります。

2つ目は、看護全体の力を上げられること。臨床推論や病態判断力をつけていくことによって、患者さんの全体像を把握し、より良い支援につなげられます。ある特別養護老人ホームでは、看護師が特定行為研修修了した年には、脱水症状に対する輸液による補正を400件以上実施していました。しかし、翌年に半分程度にまで減ったという事例があります。早めの判断と対処ができたことが理由です。事例や判断の規準などを他職種や看護師仲間と的確に共有することで、職場全体のケアのレベルも上げていくという、教育指導的な役割も期待できます。

3つ目は、医師とのコミュニケーションの改善です。研修の共通科目には、「医師の思考プロセス」の勉強も含まれています。通常、看護師は「病気があって、症状があり、対応する」の順で考えますが、医師は逆で「症状から検査をして、病気にたどりつく」という形です。思考の違いを踏まえ、「医師は、どんな情報があればより適切に判断ができるか」をわかるようになれば、医師との相談や提案も円滑にできるようになるわけです。医師にとっても効率的ですよね。

特定行為に係る看護師の研修制度による、看護師の活躍の可能性をお聞かせください。

荒木 看護師は、生活と医療の両方の視点から、看護を行います。研修で医療的な面を説明する力をより身につけられれば、医師だけでなく、介護福祉士やケアワーカーなどの他職種とコラボレーションしていく際にもコミュニケーションが取りやすくなり、患者さんのQOL向上につながります。研修を受けることで、生活と医療をより強く結びつける存在として活躍してもらえることを期待したいですね。

(提供:株式会社日本医療企画)
以上

図表 出典:
厚生労働省資料をもとに編集部作図
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070423.html