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医療安全管理者とは?配置義務化の背景や経営層が取るべき対応を解説

公開日/2026.03.30 更新日/2026.03.30

医療事故やインシデントへの対応が厳しく問われる今、医療機関の経営には「医療安全」の視点が欠かせません。中でも注目されているのが、医療安全管理者の配置です。本記事では、その役割や配置義務化の背景、経営層が取るべき対応をわかりやすく解説します。

医療安全管理者とは【2026年4月から配置義務化】

医療安全管理者とは、「管理者から医療安全対策の権限を与えられ、部門を横断して安全対策を推進する実務者」です。厚労省の資料では以下のように位置づけられており、資格要件は一律に定めず、各施設の機能に応じた配置とされています。2026年1月19日に実施された社会保障審議会医療部会において、2026年4月1日から全病院と入院・入所施設がある診療所・助産所で、医療安全管理者の配置を義務化すると発表されました。

【医療機関における医療安全管理者の位置づけ】
医療安全管理者とは、各医療機関の管理者から安全管理のために必要な権限の委譲と、人材、予算およびインフラなど必要な資源を付与されて、管理者の指示に基づいて、その業務を行う者とする。

引用:厚生労働省「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針 ―医療安全管理者の質の向上のために―」

医療安全管理者の配置義務が決定した背景

医療現場では従来から医療安全対策が進められてきましたが、院内で中心的に統括する「医療安全管理者」は制度上明確に位置づけられていませんでした。そのため、インシデント報告や学習システムは存在しても、分析に時間を要し、改善策が現場に十分還元されない課題が指摘されてきました。厚生労働省の「医療安全管理指針」や医療事故調査制度の趣旨では、「個人の責任を追及するのではなく、組織的な事故防止策を講じること」が求められています。

よって、医療安全管理者の配置を義務化することで、組織として安全管理を統括するリーダーシップの所在を明確化し、迅速な対応や安全指針の実効的な運用、組織的な再発防止を図る狙いがあります。

医療安全管理者に期待される主な役割・業務

医療安全管理者に期待される主な役割・業務をご紹介します。自院の施設の規模や機能に応じて、実効性のある範囲から体制を整えることが重要です。病院経営者さまや開業医さまは、しっかりチェックしておきましょう。

院内の安全管理体制の構築

・医療安全に関わる多職種による委員会を設置する
・安全基準の指針や手順書・マニュアルを整備する
・各部門との連携を強化し、課題を共有しながら改善を進める

医療安全管理者は、院内の安全管理体制を継続的に維持・推進する中核的役割を担っています。医療安全に関わる多職種による委員会のほか、必要に応じてプロジェクトチームなども設置し、運営に参画します。

また、医療事故を未然に防ぐため、安全管理についての基本的な考え方や指針、手順書・マニュアルの整備を行い、現場で確実に運用できるように準備を進めます。

看護部門や診療部門、事務部門など各部門との連携を強化し、課題を共有しながら改善を進めることが重要です。定期的な体制の見直しや評価を通じて、実効性の高い安全管理体制を構築します。

安全管理に関する職員教育・研修の実施

・職員に対して計画的な教育・研修を実施する
・職種や経験に応じた研修プログラムを立案・運用する
・ヒヤリ・ハット事例など具体的な事例共有や実践的な演習を行う

医療安全管理者は、職員一人ひとりの安全意識を高め、職種を超えて横断的に医療安全活動を推進するために、計画的な教育・研修を実施します。全職員が医療安全の基本を理解し、日常業務で実践できるように、職種や経験に応じた研修プログラムを立案・運用します。

研修の具体的な内容は、「医療の質向上・安全確保に必要な知識・技術に関するもの」や「法・倫理に関するもの」「患者さん・ご家族・医療従事者間で信頼関係を構築するためのコミュニケーション能力向上に関するもの」などです。

また、実際の事例を踏まえた対策に関する研修や、職員が参加して取り組める実践的な演習も取り入れる必要があります。研修後は理解度や行動変化を評価し、内容を改善しながら技能向上と安全な医療環境の確保につなげることが重要です。

医療事故防止のための取り組み

具体的な業務 詳細
医療安全に関する情報収集 以下の手法を踏まえて施設内外の情報収集をし、リスクの兆候を把握する
【施設内の情報収集の手法】
・医療事故やヒヤリ・ハット事例の報告
・患者さんやご家族からの苦情・相談
・院内巡回の実施結果 など
【施設外の情報収集の手法】
・各専門機関が発表する情報
・テレビや新聞など各メディアの情報
・専門機関の研究結果 など
医療事故等の事例分析 発生要因を人・組織・環境の視点で分析し、個人責任に終わらせず構造的課題を明確化する
安全確保に関する対策の立案 事例の分析結果と医療安全に関する情報・知識を踏まえて安全確保に向けた対策を立案する
フィードバック・評価 対策を現場に共有し、実施状況や効果を検証して継続的に改善する

まずは、実際の医療事故やヒヤリ・ハット事例、院内巡回の実施結果や行政通知、専門メディアの情報といった施設内外の情報を収集し、潜在的なリスクを把握します。収集した情報は、職員や患者さんの属性、発生状況、業務環境などを踏まえて多角的に分析します。

その後、分析結果をもとに具体的な再発防止策を立案・実施します。対策の内容は、現場で実際に実行でき、実施の根拠があって成果が見込める、といった条件を満たすことが重要です。対策については、現場へフィードバックと評価を行うことで、事故防止の実効性を高めます。

医療事故への対応

・医療事故に備えた対応体制の整備と、発生時の中核対応を行う
・対応マニュアルを作成し、職員へ周知・訓練を行う
・事故発生時には、迅速な事実確認やマニュアルに沿った対応を行う
・患者さんやご家族への適切な説明・対応、関係職員の精神的ケアを含む即時対応を行う
・原因分析を踏まえ、再発防止策の立案・実施を行う

医療事故への対応として、まずはあらかじめ対応マニュアルを作成し、職員へ周知・訓練を行うことが重要です。万が一医療事故が発生した際には、マニュアルに沿って迅速な事実確認や関連する処置内容・器材等の保全を行います。

同時に、患者さんやご家族への適切な説明・対応、関係職員の精神的ケアを含む即時対応が求められます。その後は、原因分析を踏まえ、再発防止策の立案・実施まで一貫して対応します。

院内における安全文化の醸成

・制度やマニュアルの整備だけでなく、院内に安全文化を根づかせる対応を行う
・ヒヤリ・ハット事例を責任追及ではなく学習の機会として共有する
・日常的な声かけや啓発活動を通じ、組織全体で安全を守る文化を醸成する

医療安全管理者は、単に制度やマニュアルを作るだけでなく、院内に安全文化を根づかせる役割も担います。安全な医療環境を確立するには、職員一人ひとりが安全管理を「自分のこと」として捉える意識が不可欠です。

そのため、ヒヤリ・ハット事例を責任追及ではなく学習の機会として共有し、意見を出しやすい風土づくりを進めます。日常的な声かけや啓発活動を通じ、組織全体で安全を守る文化を醸成します。

厚生労働省「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針 ―医療安全管理者の質の向上のために―」

医療安全管理者を選任するには?必要な資格要件・研修

医療安全管理者を選任する際は、いくつかのポイントが重要です。必要な資格要件・研修について確認しておきましょう。

医療安全管理者の選任に必要な資格要件

項目 義務化される
医療安全管理者の要件
診療報酬上の
医療安全管理者の要件
特定機能病院の
医療安全管理責任者の要件
資格・要件 ・資格・職種の限定はなく、医師・看護師・薬剤師など、医療安全に関する知識と実務経験を有し、院長等から安全対策の権限を付与された者
※専従・兼任は施設規模や機能に応じて判断される
・ 医療安全に関する十分な知識を有する常勤職員
・ 医療関連資格の有無は問わない
・診療報酬算定では、専任配置や一定の経験年数が求められる場合があり、医療安全管理体制の中核を担うことが前提
※診療報酬上では専従と専任がある
・看護師、薬剤師その他の医療有資格者
・医療安全、医薬品安全、医療機器安全に関する必要な知識を有する常勤職員
・副院長のうち管理者が指名する人物
・医師または歯科医師
研修 医療安全に関する基礎的知識、事故対応、再発防止策立案などを学ぶ体系的研修の受講が望ましい 厚労省が示す医療安全管理研修(外部研修含む)の受講が必要
受講実績が算定要件に影響する
定期的に、医療に係る安全管理のための研修受講が必要
その他注意点 ・病院の場合、管理者との兼任不可
・医薬品安全管理責任者など他の役職との兼任不可
・医療安全対策加算1の取得には「専従配置」、医療安全対策加算2の取得には「専任配置」が必要 副院長のため、管理者(院長)との兼任不可

参考:厚生労働省 第5回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会報告書(案)補足資料」

2026年4月から配置が義務化される医療安全管理者には、医療安全に関する十分な知識と実務理解を有する人材を選任する必要があります。しかし制度上は、特別な国家資格は求められておらず、研修受講も必須ではなく「受講推奨」にとどまっているのが実情です。

対して、診療報酬の入院基本料等加算では、「医療安全対策加算」において、医療安全管理者の配置が算定要件とされています。その際、同様の役割であっても、看護師や薬剤師などの有資格者で、所定の医療安全研修を受講していることが求められます。

なお、似た名称の役職として特定機能病院に配置する「医療安全管理責任者」があります。これは、医療安全管理部門や医療安全管理委員会などを統括する役職です。2026年4月から配置が義務化される医療安全管理者、診療報酬上の医療安全管理者とは、資格・要件や配置の基準が異なります。

専従と専任の違いについて

医療安全管理者には「専従」と「専任」があり、違いは医療安全管理業務への専念度と担当範囲にあります。専従は医療安全管理業務のみに従事し、他の業務を兼務しない配置形態です。

一方、専任は複数業務を担う中で、主要な役割として医療安全管理を担当します。診療報酬の入院基本料等加算では、医療安全対策加算1の算定には専従の医療安全管理者、医療安全対策加算2では専任の配置が要件とされています。

2026年診療報酬改定において、どちらの加算も約2倍の点数評価に変更が決定しています。また、医療安全対策加算1に関する専従要件の基準が見直され、「月16時間までであれば他業務への従事が可能」となりました。

これらを踏まえ、収益性を重視する場合や人員にゆとりがある場合には「専従」を、比較的小規模で人員が限られる場合などには「専任」を配置するなど、自院の規模や人員の状況により判断するとよいでしょう。

医療安全管理者の養成研修の概要

・医療安全の基礎知識をはじめ、院内での役割・業務に直結する内容が扱われる
・実際の医療事故やヒヤリ・ハット事例を用いた演習も多い

医療安全管理者の養成研修では、医療安全の基礎知識をはじめ、院内の安全管理体制の構築、医療事故発生時の対応、再発防止策の考え方など、役割・業務に直結する内容が含まれています。

実際の医療事故やヒヤリ・ハット事例を用いた演習も多く、現場での実践を意識したカリキュラムが特徴です。体系的に学ぶことで、より効率的かつ実効性の高い医療安全管理を習得できます。

【経営層必見】医療安全管理者の選任・育成の重要性

【医療安全管理者の選任・育成は…】
・リスク防止・有事の際の迅速な対応に欠かせない
・職員の保護・自院の信頼性の獲得にもつながる
・配置により診療報酬上のメリットがある

適切な医療安全管理者を選任し、計画的に育成を進めることは、医療機関経営において極めて重要です。専門性を備えた人材が中核となって活動することで、医療事故防止に向けた体制整備や環境構築を迅速に進められます。

また、万が一の有事においても、的確な判断と迅速な対応ができ、患者さんやご家族への影響を最小限に抑えられます。さらに職員の精神的負担を軽減し、自院の信頼性維持にも直結するでしょう。入院基本料等加算の施設基準に沿った配置は、診療報酬の安定的な確保にもつながります。

医療安全管理者の配置義務化に向けて医療機関がとるべき対応

【医療安全管理者の配置に向けて行うべきこと】
・最新情報を踏まえ、制度の詳細を把握する
・管理者が医療安全管理者の選任を行い、配置する
【医療安全管理者の配置後に期待されること】
・多職種による委員会を設置し、定期的に開催する
・医療安全管理指針を定める
・院内の定期的巡視を行う(概ね週1回程度)
・医療安全研修を実施する(年1回以上)
・医療事故発生時の報告体制を整備する
・医療事故調査制度への対応を進める
・院内安全管理体制加算取得病院との情報交換を行う(管理加算1取得の病院が中心)

医療安全管理者の全病院と入院・入所施設を有する診療所・助産所への配置義務化は、2026年1月19日の議論で方向性が示された段階であり、今後も詳細が順次示される可能性があります。4月1日から施行が確定している内容と、方向性が示されている段階の内容は以下の通りです。

2026年4月1日から施行が確定している内容 ・全病院、入院・入所施設がある診療所・助産所での医療安全管理者の配置義務化
・全病院・診療所・助産所の管理者に、医療安全の取り組みに関する記録の整備を求める
方向性が示された段階の内容 全病院、一定件数の手術・分娩を行う入院・入所施設がある診療所・助産所の管理者が、「医療事故調査制度に携わる者」に対して研修を受講させること

よって、まずは最新情報を継続的に確認し、制度内容への理解を深めることが欠かせません。

そのうえでスムーズに対応できるように、施設の管理者は早期に候補者を絞り込む必要があります。

なお、実際に医療安全管理者を選任した後は、多職種による委員会の設置や医療安全管理指針の策定、週1回程度の定期的な院内巡視などの実施が必要です。選任をする段階から必要な対応も明確にしておくことで、義務化への備えを着実に進められるでしょう。

優秀な医療安全管理者を選任・育成するには

優秀な医療安全管理者を選任・育成するために、医師・看護師・薬剤師など多職種と円滑に連携できる人物を選びましょう。医療安全管理者には、医療安全に関する知識や実務経験に加え、現場の意見を調整し合意形成を図るコミュニケーション力も必要です。

また、研修は必須ではなく「望ましい」にとどまっていますが、日本医療機能評価機構の審査では研修開催の有無が評価につながるとされています。知識や対応力を高めるため積極的に活用するとよいでしょう。院内リソースが不足する場合は、外部研修や支援サービスの利用も有効です。

医療安全管理者に関するQ&A

ここでは、医療安全管理者に関する疑問をQ&A形式で解説します。お悩みの医療機関経営者さまはぜひ参考にしてください。

Q.医療安全管理者の配置義務化が対象外の施設もある?

A.入院機能を持たない無床診療所については、現時点では義務化の対象外です。

医療安全管理者の配置義務化は、すべての病院と入院・入所施設を有する診療所、助産所が対象です。一方、入院機能を持たない無床診療所については、現時点では義務化の対象外とされています。

ただし、医療安全対策そのものは求められており、今後の制度改正で対象範囲が見直される可能性もあるため、引き続き動向を注視する必要があります。

Q.医療安全管理者と医療安全管理責任者の違いは?

A.医療安全管理者は「実務を担う現場の中核的存在」であり、医療安全管理責任者は「各責任者を統括する立場にある職種」です。

医療安全管理者は、管理者から指示を受けて施設の安全管理に関する実務全般を担う、現場の中核的な存在です。

一方医療安全管理責任者は、医療安全管理部門や医療安全管理委員会など各責任者を統括する立場にあります。主に組織全体の方針決定や体制整備を担い、特定機能病院では配置が義務づけられています。

Q.医療安全管理者と医療安全推進者の違いは?

A.医療安全管理者は制度上位置づけられた役割であり、医療安全推進者は資格や職名ではなく養成講座の名称です。

医療安全管理者は、施設内の安全管理を進めるための人物として制度上位置づけられた役割です。施設内の医療安全対策を組織横断的に推進する実務者が該当します。

一方、医療安全推進者は日本医師会が実施する養成講座の名称であり、資格や職名ではありません。いずれも医療機関の安全管理を担う点では共通しますが、制度上の位置づけや役割の明確さに違いがあります。

Q.医療安全管理者を選任する際、研修を受けさせるべき?

A.研修は義務ではないですが、企業や団体による養成研修が実施されています。

2026年4月1日から配置が義務化される医療安全管理者について、現時点で研修の実施は「望ましい」という判断にとどまっています。しかし、組織全体でより実効的な医療安全対策を進めていくために、専門性や知識を深められる研修の実施は有効的です。

すでに、医療安全管理者養成研修の募集を始めている民間企業や団体も多くあります。自院での医療安全対策をより効果的に進めるためにも、これらの研修の利用を検討しましょう。

医療安全管理者の理解を深め、適切な配置を行いましょう

医療安全管理者は、医療事故防止と安全文化の定着を担う中核的存在です。2026年4月から配置が義務化されることで、体制整備や有事対応の実効性が一層求められます。医療機関等の管理者は、制度の趣旨を理解し、適切な人材の選任と育成を早期に進めることが重要です。診療報酬への影響も踏まえ、計画的な対応が医療機関の信頼性向上につながります。

医療安全管理者の配置義務化により、医療機関にはこれまで以上に計画的な体制整備と人材育成が求められます。ソラストでは医療機関経営支援サービスを中心に、医療安全体制の構築や業務改善、人材育成まで幅広く支援しています。病院経営者さま、クリニック開業医さまそれぞれの状況や課題に応じ、実情に即した最適なサポートをご提供します。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。
監修者:櫻井 寛司
医療法人の理事・理事長補佐として経営管理、財務、人事・労務、医師採用まで幅広く統括。 介護保険制度の開始当初から訪問介護・看護・リハ、デイケア、介護医療院など多様な医療・介護サービスの運営に携わる。 地域包括支援センター管理者や有料老人ホームの経営顧問も務め、地域医療・介護の体制づくりに貢献。 日本医療機能評価機構のサーベイヤーとして医療の質向上に取り組むほか、三次救急での臨床経験とMBAを背景に、実務と学術の両面から医療経営や介護制度に関する専門的な提言を行う。 2025年有限会社ラピモルト設立 代表に就任 医療福祉経営支援・研修支援会社 顧問先5社 2025年財団法人 IGP協会 理事

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