1. トップページ
  2. コラム
  3. 医療事務コラム
  4. 医療機関におけるBCP対策とは?災害時などの緊急事態に備える対応方法を解説!
医療事務

医療機関におけるBCP対策とは?災害時などの緊急事態に備える対応方法を解説!

公開日/2024.09.17 更新日/2024.09.18

BCP(事業継続計画)は、病院や診療所など医療機関でも策定が推進されています。地震やパンデミックなど医療機関の経営は外的要因に左右されることも多く、日頃から緊急事態に備える姿勢が重要です。本記事では、医療機関におけるBCP対策の重要性や策定手順を解説。万が一の際に計画に沿った行動ができるよう、BCPの重要性を知っておきましょう。

BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称。緊急時でも事業を中断せず、早期の復旧・継続を目指すために必要な行動等を記載したものです。

BCP(事業継続計画)とは、企業や組織が自然災害や事故、システム障害などの緊急事態に直面した際に、業務を中断することなく継続させるための計画を指します。「Business Continuity Plan」の頭文字から来た言葉です。

BCPの中には被害を最小限に抑えて、重要な業務やサービスを継続しながら、迅速な復旧を目指すための具体的な手順や対策、事前訓練や災害リスクの評価なども含まれます。

医療機関におけるBCPとは?

病院やクリニックなどの医療機関に対して、国からBCPの策定が推進されており、診療録管理体制加算1の届出医療機関にはBCPの策定を義務付けるなど、国から策定が義務付けられる場合もあります。医療機関のBCPには、災害などで緊急事態が発生した際に診療機能の低下を軽減して早期回復を目指すための方策や、継続的に医療を提供できる体制を維持するための対策・方法などがまとめられます。

たとえ緊急事態が発生して通常業務が中断される状況に陥っても、患者さんや負傷した人々の命を守ることが優先されます。災害発生時には医療機関は先頭に立って復興支援を行うため、平常時から緊急時を想定した対策の準備が欠かせません。

BCPと災害拠点病院

災害拠点病院は、地域において災害が起きた際にいち早く医療提供にあたる役割を担う医療機関です。災害拠点病院では、厚生労働省が発表した厚生労働省「災害拠点病院指定要件の一部改正について」にもとづき、平成29年3月よりBCPの作成が義務化されました。

BCPの策定を行うことで、大規模災害が発生して医療設備への被害やライフラインの途絶した場合においても、被災した方や入院中の患者さんに継続して医療を提供し続ける体制の整備を目指しています。

BCPと防災マニュアルの違い

防災マニュアルは、災害発生時の避難手順や安全・資源の確保など具体的な初動をまとめたものです。対してBCPは、災害発生時の事業継続を目指すための長期的な視点を踏まえた対応計画をまとめており、記されている行動の目的が異なります。

災害発生時にはどちらも必要な要素であり、両者を適切に組み合わせることで、迅速かつ確実な対応が可能です。医療サービスを継続するためにも、医療機関経営者にはBCPと防災マニュアルの両方を用意しておくことが求められます。

医療機関におけるBCPの現状

医療機関では、災害や非常事態に備えたBCPの策定が急務です。とくに近年の自然災害や感染症流行などの影響で、医療現場でのBCPの重要性が再認識されています。平成30年に行った病院のBCP策定状況等調査(※)によると、災害拠点病院ではBCPの整備が義務化されていることもあり、71.2%が策定ありと回答。

一方、全病院で見た場合、BCP策定ありと回答したのはわずか25%でした。「BCP整備のためのノウハウがない」「BCPの内容に関する情報が不足している」などを理由に、BCPの策定や更新が遅れているのが現状です。

この事態に対処するため、厚生労働省では平成29年度よりBCP策定研修事業を開始しBCPの認知度の向上、知識の普及に努めています。

日本各地やオンラインで研修等が開催されていますので、医療機関の経営者の方はまずは話を聞いてみるところからスタートしていきましょう。

※参照:厚生労働省「病院の業務継続計画(BCP)の策定状況について」

医療機関におけるBCP策定のポイント6選

BCPを実際に策定する際は、6つのポイントを押さえることが大切です。万が一の状況でも適切な対応が取れるよう、BCPを策定における重要事項を確認しておきましょう。

災害時の医療需要への対応

災害時には医療需要が急増し、医療機関はその対応に追われることが予想されます。災害発生直後に必要とされる医療サービスを予測し、必要な医薬品や医療機器を事前に備蓄しておくことが重要です。

備蓄品に関しては、定期的に使用期限が切れていないかなどのメンテナンスも行いましょう。また、地域の他の医療機関や救急サービスとの連携を強化し、迅速な患者搬送や治療が行える体制を整備すること忘れてはいけません。

インフラ対策

医療機関が災害時に機能を維持するためには、電力や水道、通信設備などのインフラ環境の確保が重要です。非常用発電機や水の備蓄、衛星電話などの通信手段を準備し、定期的に点検・整備を行うことで、災害時にも安定した医療サービスの提供が実現します。あわせて、停電時に備え、日頃から医用コンセントの赤色コンセント、緑色コンセントの位置を確認しておくことも重要です。

また、震災発生時の被害を最小限に抑えるため、建物の耐震補強や防火対策も大切です。歴史ある建物を使っている病院の場合は、とくに意識をしておきましょう。

ライフライン復旧の予測

災害発生後のライフラインの復旧予測は、医療機関のBCPにおいて重要な要素です。自治体やライフラインの供給業者と事前に話し合いなどを行い、震災の際にどの程度で復旧ができるのか予想を行い、それに沿ったBCPを策定します。

また、実際に災害に直面した際には、ライフラインの復旧状況をリアルタイムで把握するための情報収集手段を確立し、迅速に対応策を講じることができるようにしておきましょう。

スタッフの緊急招集

災害発生時には病院の運営を支えるため、医療スタッフの迅速な招集が求められます。事前に緊急連絡網を整備し、スタッフ全員が連絡手段を把握していることが重要です。特定のライフラインの寸断に備え、電話、メール、SNSといった複数の連絡手段を用意しておきましょう。

また、災害発生時の集合場所や役割分担を明確にしておくことで、スムーズな対応も可能です。

非常時の指揮系統の確立

災害時の混乱を最小限に抑えるためには、明確な指揮系統を確立することが不可欠です。事前に誰が指示を出すのか、指揮官が不在の場合はどうするか、各部門の責任者は誰かなどを明確にすることで、迅速かつ的確な対応が実現します。

また、トランシーバーやホワイトボードなどの情報共有手段を整備し、全スタッフが最新の情報を共有できるようにすることも重要です。計画した指揮系統が機能するかは、定期的な訓練やシミュレーションを通して確認しておきましょう。

非常時の行動優先順位の選定

災害時には、限られた資源を効率的に活用するために、行動の優先順位を明確にすることが重要です。

医療はチームとして行動しなければならないため、誰か一人が理解するのではなく、全スタッフが正しく理解していることが重要です。日頃からチーム内で、災害時を想定した業務分担なども計画しておきましょう。

医療機関におけるBCPの策定手順

実際にBCPの策定を始める際には、以下の手順に沿って計画を行うと効率的です。ここでは、BCPの策定手順について解説します。

1.非常時を想定した人員体制を構築する

非常時を想定した人員体制の構築は、医療BCP策定の最初のステップです。指揮系統を明確にするため、各部門の責任者を決定しましょう。次に、各スタッフの特性を考慮し、どのスタッフがどの役割を担うのかを決定します。

また、スタッフの緊急連絡先や招集方法を事前に確認し、訓練を行うことで、万が一の際に計画に沿った行動が可能です。

2.現状の体制や災害対策を把握する

次に、現状の建物・医療設備などがどの程度災害対策を考慮した準備ができているかを確認し、脆弱な部分がないかを洗い出します。個別に判断するのではなく、施設の耐震性や火災対策、電力供給の安定性などを含めた総合的な評価が必要です。

過去の災害対応の記録や教訓を活用するだけでなく、外部機関の力を借りて現状を把握しましょう。

3.予測される被害を想定する

医療BCP策定のステップとして、想定される被害を具体的に見積もることが必要です。地震、洪水、火災など地域特有の災害リスクを考慮し、被害の規模や影響範囲をシミュレーションしておきましょう。

地域の人口規模や、若者が多い・高齢者が多いといった要素を組み込むのも効果的です。他にも、患者数の急増や設備の損壊、物資の不足などあらゆる角度から被害の内容や規模を想定しましょう。

4.有事の際に優先すべき業務を決める

最後に、有事の際に優先すべき業務の決定を行います。非常時の限られた人員や設備を有効活用するために、BCPでは患者さんの救命処置や緊急手術、感染症対策を優先業務としている病院が一般的です。

優先すべき事項を決めた後は、対応できるスタッフを明確にして体制の構築、必要な資源の確保を行います。実際にBCPに沿った訓練を実施し、改善点や不足点がある場合は定期的に見直しをしましょう。

医療機関を経営するなら、有事に備えたBCPの策定が大切

医療機関には、自然災害やコロナウイルスなどから人々の命を守る重要な使命があります。一度有事が発生すると多くの人が病院に押し寄せるため、適切な行動をするためにもBCP(事業継続計画)の策定が必要です。また、BCPは策定して終わりではありません。実際にBCPに沿った対応ができるよう、病院で働くスタッフへの周知や訓練なども行い、継続・改善をしていきましょう。

ソラストの医療機関経営支援サービスでは、病院経営者様や開業医様をサポートするサービスを展開しています。医事業務受託で蓄積した業務運営の経験をもとに、病院経営に関する改善機会の抽出と課題解決を支援。詳しくは以下をご覧ください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
サイト管理人
お役に立つ情報を提供しています。

関連コラム

人気のキーワード

他カテゴリーのコラムはこちら