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診療予約システムの普及率は高い?導入のメリット・デメリットを解説

公開日/2025.09.16 更新日/2025.09.16

近年、患者さんの利便性向上や業務効率化を目的に、「診療予約システム」を導入する医療機関が増えています。しかし、導入に踏み切れずにいる経営者さまも多いのではないでしょうか。本記事では、診療予約システムの普及率や導入によるメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

【最新】診療予約システムの普及率

診療予約システムは、実際にはどれほど普及しているのか気になりますよね。ここでは普及率についてご紹介します。

診療予約システムの普及率

診療予約システムの普及率について、公的機関による明確な統計はないものの、民間企業が行ったアンケート調査(※1)では診療所の約34%が導入しているとされています。また、別の調査(※2)によれば、新規開業したクリニックの普及率が62%に上るという結果もあります。

参考として、令和5年の厚生労働省の調査(※3)によると、電子カルテの導入率は一般診療所で55%、一般病院で65.6%にのぼっています。これと比較すると、診療予約システムの導入はやや遅れていることがわかります。背景には、導入コストや運用面での課題が影響していると考えられます。

※1参考:m3.com開業・経営「電子カルテ 増患に有効な診療予約システムとは」

※2参考:株式会社矢野経済研究所「新規開業クリニックに関する法人アンケート調査を実施(2019年)」

※3参考:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について(電子カルテシステム等の普及状況の推移)」

診療予約システムの普及率が伸び悩む理由

・導入コストや運用負担の大きさ
・現行の運用で不便を感じていない
・高齢患者層への対応への不安

診療予約システムの普及が伸び悩む背景には、いくつかの要因があります。システム導入には初期費用や月額利用料が発生し、とくに小規模な診療所では負担が重く感じられがちです。また、スタッフへの操作教育やトラブル対応など、運用面での手間も導入の障壁となっています。

また、医療機関によっては、現行の電話や窓口対応で十分と感じている場合もあり、導入の必要性が低くなりがちです。さらに、高齢の患者さんが多い地域では、インターネット予約への対応に不安があり、活用が進まないことも一因と考えられます。

【患者さん側】診療予約システムのメリット・デメリット

患者さんにとってのメリット 患者さんにとってのデメリット
・利便性が向上する
・待ち時間を短縮できる
・感染リスクを減らせる
・使い方や操作を覚えるまで時間がかかることもある
・患者さんの層によってはシステムを使ってもらえないケースもある

診療予約システムは、患者さんにとっても利便性の高いツールです。一方で、すべての人にとって使いやすいとは限らないため、メリット・デメリットの両面からみていきましょう。

患者さんにとっての3つのメリット

・利便性が向上する
・待ち時間を短縮できる
・感染リスクを減らせる

診療予約システムを導入することで、患者さんは24時間いつでも自分の都合に合わせて予約ができるようになります。予約時間に合わせて来院すれば、待ち時間が大幅に短縮され、ストレス軽減にもつながるでしょう。

また、待合室での滞在時間が短くなることで、インフルエンザや新型コロナウイルスなど感染症のリスクも抑えられます。そのほか、電話がつながりにくい時間帯を避けられる点や、家族の予約も代行しやすくなる点もメリットといえるでしょう。

患者さんにとっての2つのデメリット

・使い方や操作に慣れるまで時間がかかることもある
・患者さんの層によってはシステムを使ってもらえないケースもある

診療予約システムには多くのメリットがありますが、患者さん側のデメリットにも留意することが大切です。とくに、高齢の方やデジタル機器に不慣れな年代では、システムの操作に戸惑い、使いこなすまでに時間がかかることがあります。

長年通院している医療機関に対しては、従来の電話や窓口での予約方法に慣れており、新たなシステムに抵抗を感じるケースも少なくありません。システムを導入しても、周知がうまくいかないと、患者さんに使ってもらえないケースもあるため注意が必要です。

【医療機関側】診療予約システムのメリット・デメリット

医療機関にとってのメリット 医療機関にとってのデメリット
・再診率の向上につながる
・受付・予約業務の効率が上がる
・患者さん情報の管理・共有がしやすくなる
・院内の混雑緩和につながる
・システムの導入・運用に費用がかかる
・運用に慣れるまで時間がかかることもある
・患者さんへの周知・案内に時間がかかることもある

続いて医療機関側からみた、診療予約システムのメリット・デメリットについて解説します。メリット・デメリットの両面を踏まえて、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

医療機関にとっての4つのメリット

・再診率の向上につながる
・受付・予約業務の効率が上がる
・患者さん情報の管理・共有がしやすくなる
・院内の混雑緩和につながる

診療予約システムを導入することで、電話や対面での予約対応が減少します。受付スタッフは他業務に集中できるため、業務全体の効率が向上するでしょう。予約状況をリアルタイムで把握できることで、ダブルブッキングのリスクも軽減します。患者さんの診療履歴や予約履歴を簡単に確認でき、再診時の対応もスムーズです。

また、来院時間の分散により待合室や駐車場の混雑も防げるほか、患者さんに利便性を感じてもらうことで次回受診の促進にもつながります。

医療機関にとっての3つのデメリット

・システムの導入・運用に費用がかかる
・運用に慣れるまで時間がかかることもある
・患者さんへの周知・案内に時間がかかることもある

診療予約システムを導入する際は、初期費用だけでなく継続的なランニングコストも発生します。導入による業務効率化の効果が、投資に見合うかどうかは慎重な見極めが必要です。

さらに、職員には一定のITリテラシーが求められ、操作や運用に慣れるまで時間を要することもあります。スムーズな運用のためにはスタッフへの研修が欠かせません。また、患者さんに利用を促すには、わかりやすい案内や周知活動が不可欠です。例えば、診察室にて患者さんの了解のもと、次回の診察予約日時を医師若しくは医師事務作業補助者が入力する方法も検討してみてはいかがでしょうか。

診療予約システムを効果的に活用する方法

・スタッフへの研修・教育を徹底する
・患者さんへの周知や説明を徹底する
・マニュアルを整備する
・従来の予約受付方法も残しておく

診療予約システムを導入しても、スタッフが使いこなせず、患者さんにも活用されなければ十分な効果は得られません。まずは職員向けの教育や研修を行い、早期の習熟を目指すことが大切です。

とくに、使い慣れていない方へのサポートやシステム維持管理の負担などへの考慮が求められます。患者さんには院内掲示やWebサイトなどを活用し、丁寧に案内する工夫も必要です。あわせて、マニュアルを整備しておくと、トラブル時にも落ち着いて対応できるでしょう。

診療予約システムの種類を選ぶポイント

診療予約システムには、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を踏まえて、病院に合ったものを選びましょう。

導入費用・ランニングコスト

診療予約システムの導入には、購入・インストール・設定などの初期費用がかかります。加えて、保守やアップデートといったランニングコストも発生します。導入前に、これらの費用を事前に把握し、自院の予算や規模に合ったシステムを選定することが重要です。

システムの種類

システムの種類 特徴
時間予約タイプ 「◯時◯分」など特定の時間枠を選んで予約する方式
◯混雑状況に関係なく、時間通りに診察が進みやすい
◯予約管理がしやすく、待ち時間を最小限に抑えられる
△診察の進行が遅れると、次の患者さんに影響が出やすい
順番予約タイプ 「○番目」など順番のみを予約する方式
◯患者さんは自分の順番が近づいたタイミングで来院できる
◯診療時間のバラつきに柔軟に対応しやすい
△来院時間が読みにくく、集中すると待合室が混雑する可能性もある
複合タイプ 「時間予約」と「順番予約」の両方を組み合わせた方式
◯診療科や曜日、混雑状況に応じて柔軟に運用できる
◯患者さんにも選択肢が増えるため、満足度の向上が期待できる
△導入・運用がやや複雑で、スタッフの理解と調整が必要

診療予約システムには、主に「時間予約タイプ」「順番予約タイプ」「複合タイプ」があります。時間予約タイプは患者さんが希望する日時を指定でき、待ち時間を最小限にできるのが魅力です。

順番予約タイプは柔軟な診療対応がしやすく、急な来院にも対応できます。最近ではメッセージアプリと連携し、予約確認や呼び出しができるタイプも登場しているので、多くの患者さんが操作しやすく、使いやすいシステムを選ぶことが重要です。

操作性・使いやすさ

直感的な操作性やわかりやすいインターフェースは、システム導入後のスムーズな運用に不可欠です。とくに、高齢者やITに不慣れな方でも戸惑わずに利用できるように、シンプルな画面構成やナビゲーション設計が求められます。誰にとっても使いやすいシステムが、定着と活用の鍵となるでしょう。

セキュリティ対策

診療予約システムでは患者さんの個人情報を扱うため、万全なセキュリティ対策が必須です。データの暗号化やアクセス制限、定期的なアップデートなどの機能が備わっているかどうか確認しましょう。

クラウド型システムの場合は、データセンターのセキュリティ水準も重要です。さらに、万が一の情報漏えいに備えた対応策があるかどうかも、導入前に確認しましょう。

他のICT機器との連動性

診療予約システムは、電子カルテや会計システム、院内のデジタルサイネージなどと連携することで、さらなる業務全体の効率化が図れます。とくに、予約情報が電子カルテに自動反映されるものは、受付から診療までの流れがスムーズです。

院内で使用しているICT機器と連動できるシステムを選ぶことで、医療現場のデジタル化を一層推進してくれます。

診療予約システム以外で業務効率化を図るには?

診療予約システムの導入以外にも、院内の業務効率化を図る方法は多くあります。たとえば、窓口業務や医師の事務作業補助などを外部に委託することで、スタッフの負担を軽減できます。

ソラストでは、「医事関連受託サービス」や「医事関連 人材派遣・紹介サービス」を提供しており、必要な人材を柔軟に確保できます。さらに、「医療機関経営支援サービス」も展開しており、業務と経営の両面から効率化をサポートしているのが特徴です。

業務効率化に向けて、診療予約システムの導入を検討しよう

診療予約システムは、患者さんと医療機関双方に多くの利点をもたらす一方で、導入・運用にはコストや習熟の課題も伴います。自院の状況に合ったシステムを選び、他のICT機器との連携やスタッフの教育、患者さんへの周知を徹底することが重要です。業務効率化には外部サービスの活用を検討するのもよいでしょう。

ソラストでは、医事関連受託サービスや人材派遣・紹介サービスなど、多彩な支援をご用意しています。病院経営者さまやクリニック開業医さまの状況に合わせ、業務効率化や経営支援など最適なサービスをご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

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