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【医療機関経営者必見】宿日直許可とは?取得の利点や条件・申請の流れを解説

公開日/2025.07.23 更新日/2025.07.23

2024年に医師の働き方改革として勤務時間に上限が設けられました。人材確保がより難しくなる中で、「宿日直許可」という制度があります。今回は制度の概要とメリット、条件や申請のための必要書類について詳しく紹介します。宿日直許可申請をご検討中の医療機関の方はぜひ参考にしてみてください。

宿日直許可とは

宿日直許可とは、労働基準監督署長から医療機関などに対して出される宿日直に関する許可のことを指します。宿日直許可が出ている医療機関では、宿直や日直業務において、常態としてほとんど労働をする必要がない場合、労働時間や休憩に関する規定は適用されません。

まずは宿日直許可の定義について確認しましょう。おおまかに説明すると上記のような許可のことです。

宿日直許可の定義と法律的な位置づけ

宿日直許可は、労働基準監督署長から医療機関などに対して出される宿直に関する許可のことです。宿日直許可を受けている医療機関などでは、宿日直勤務時に常態的に労働をほとんどしていない場合、労働時間としてカウントされません。

そもそも医療法では、第16条において「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と医師の宿直義務が明記されています。宿日直許可があることで、柔軟な人員配置が確保できます。

参照:e-GOV法令検索「医療法(昭和二十三年法律第二百五号)」

参照:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」

参照:東京労働基準局監督課「2022 医療機関における宿日直の許可について」

宿日直許可制度が注目されている理由

2024年4月から、医師の働き方改革により、これまで上限がなかった勤務医の労働時間に上限が設けられました。労働時間の制限は、宿日直の勤務時間も対象です。

医療機関経営者には、医師の働き方改革によるルール改変に伴い、新たに医師の労働時間の管理が求められました。医師の時間外・休日労働時間の上限とその理由は下記の通りです。

【医師の時間外・休日労働時間の上限】

水準 年の上限時間 理由
A水準 960時間 臨時的に長時間労働が必要な場合の原則的な水準
連携B水準 1860時間
(各院では960時間)
地域医療の確保のため、派遣先の労働時間を通算すると長時間労働となるため
B水準 1860時間 地域医療の確保のため
C-1水準 1860時間 臨床研修・専攻医の研修のため
C-2水準 1860時間 高度な技能の修得のため

参照:厚生労働省「医師の働き方改革〜患者さんと医師の未来のために〜」

宿日直許可を取得する利点【医療機関経営者向け】

・宿日直業務時間を労働時間にカウントせずに済む
・非常勤の働き方を求める医師を確保しやすくなる

宿日直許可を取得することで、医療法で義務付けられている宿日直の業務時間が労働時間にカウントされなくなるメリットがあります。宿日直の勤務時間は休息時間として扱うことができます。そのため、宿日直許可を取得している施設では宿日直を行う人材を確保しやすくなることでしょう。

たとえば、常勤のかたわら宿日直のアルバイトを希望している医師を確保できるなど、柔軟な人員位置を見込めます。

宿日直許可を取得するために満たすべき条件

宿日直許可を取得するためには上記のような条件を満たしている必要があります。以下で具体例について説明します。

ほとんど業務がなくしっかり睡眠がとれる

宿日直許可は、宿日直中にほとんど労働する必要がなく、しっかり睡眠時間を確保できる状態であることが大前提です。宿日直の目的は、労働者を事務所に待機させ、電話対応や定期巡回、緊急時の対応を行わせることであるため、緊急時以外は業務を行わない状態が望ましいといえます。

宿日直勤務で行う業務としては下記のようなものがあげられます。

【宿日直業務の例】
・緊急時の電話対応
・定時巡回
・少数の急変者対応

通常業務が完全に終了した状態から開始される

宿日直許可の前提条件として、宿日直開始前に通常業務が終了している必要があります。これは、宿日直が通常業務の延長として扱われないようにするためです。そのためには、通常勤務と宿日直の間に空き時間を作り、通常の勤務時間と同じような業務を継続して行わないような体制にするのが望ましいでしょう。

【通常業務の例】
・救急病院で患者への治療がほぼ毎回、複数回発生するようなケース
・始業または終業時刻に密着して行う監視または断続的な労働

宿日直業務の範囲を著しく超える状態がほぼ発生しない

宿日直は本来、稀にある緊急時の対応や定期的な巡視を目的にしているものです。

ただし、突発的に宿日直業務の範囲を超える業務を行う必要がある日もあります。このような日が稀にあってもただちに宿日直許可が取り消されるわけではありませんが、日常的にある場合は本来の制度の目的から逸脱してしまうため、宿日直許可が下りなくなることもあります。

【宿日直業務を超えない業務の例】 ・少数の要注意患者の状態変動に対応するため診察、指示をすること ・非輪番日などの休日・夜間において少数の外来患者の状態変動に対応するため診察・指示をすること

宿日直手当の支給や宿日直の上限回数が守られている

宿日直勤務には、宿日直手当として1日の平均賃金の1/3を下回らない金額を支給すること、宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を上限にすることが定められています。管理者は宿日直許可のためだけではなく、労働者に過度な負担がかからないようにするためにも、宿日直手当の支給額と宿日直日数のルールを遵守しなくてはいけません。

宿日直の手当 宿日直の上限回数
事業場において同種の労働者の
1日の平均賃金1/3を下回らない金額
宿直勤務…週1回
日直勤務…月1回

睡眠がしっかりとれる設備がある

宿日直許可は、宿日直中は休息できることを大前提としています。

そのためには、しっかり睡眠がとれる環境を備えていることが許可の重要なポイントです。

緊急時に適切に対応できるだけでなく、労働者の健康を守ることも宿日直許可の取得において重視されています。

参照:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」

宿日直許可の申請手続きと必要書類

宿日直許可の申請をするにあたって必要なことは、以下のようなものです。必要書類についても一例をあげて説明します。

宿日直許可を申請する前の確認事項

宿日直許可を申請する前には、確認するべき事項がいくつかあります。

たとえば、宿日直中に対応する業務が法律の定めている業務の範囲におさまっているか、夜間に十分な睡眠が取れる業務か、睡眠可能な設備があるか、などです。

以下のチェックリストを活用し、申請できる状況なのか確認してみましょう。

宿日直許可を申請する前の確認事項一覧
・申請を考えている宿日直中に従事する業務は、通常業務とは異なる、軽度または短時間の業務である
・申請を考えている宿直業務は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである
・ベッド・寝具など睡眠が可能な設備がある
・申請を考えている宿日直業務は、通常業務の延長ではなく、通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものである
・始業・終業時刻に密着して行う短時間の業務態様ではない(4時間未満ではない)
・救急患者の診療等、通常業務と同態様の業務が発生することがあっても、稀である
・実際の宿日直勤務の状況が上記の通りであると医療機関内で認識が共有され、そのように運用されている(宿日直の従事者の認識も同様である)

参照:厚生労働省「医療機関における宿日直許可~申請の前に~」

宿日直許可の申請から取得までの流れ

宿日直許可の申請から取得までの流れ
1.労働基準監督署に申請書を提出する
2.労働基準監督署の実地調査を受ける
3.許可証が交付される

宿日直許可を取得するには、大きく分けて上記の3ステップです。

まずは労働基準監督署に申請書を提出し、書類審査を受けましょう。書類上問題がなければ、後日労働基準監督署が訪問し、実地調査を受けます。許可基準を満たしていると判断されれば、「断続的宿直又は日直勤務許可証」が交付されます。

宿日直許可の申請に必要な書類一覧

宿日直許可の申請には、宿日直勤務の実態を把握できる詳しい資料を提出する必要があります。宿日直の勤務状況をはじめ、宿日直当番表や日誌、仮眠室や待機室の図面や写真、宿日直勤務者の賃金一覧など、用意しておきましょう。

必要となる資料は施設の状況によって異なるため、事前に所轄の労働基準監督署に相談してください。

宿日直許可の申請に必要な書類の一例
・宿日直当番表
・宿日直日誌や急患日誌等
・宿日直中に従事する業務内容
・業務内容ごとの対応時間が分かる資料(電子カルテのログや急患日誌等を基に作成)
・仮眠室等の待機場所が分かる図面および写真
・宿日直勤務者の賃金一覧表
・宿日直手当の算出根拠が分かる就業規則等
・対象労働者の労働条件通知書、雇用契約書の写し
・巡回業務がある場合は巡回場所全体とその順路を示す図面等

【注意】宿日直許可の申請が通らないケース

宿日直許可は、通常業務と同じような業務内容ではなく、特殊の措置を必要としない軽度な業務で、しっかりと休息が取れることが前提となっています。

対応が発生する回数が多く、通常業務を行わなければいけない場合は、夜勤と同じ扱いになってしまいます。

また、勤務中に休息をとることが前提とされているため、宿泊設備が不十分だと申請が通らない場合もあります。

・宿日直で対応する業務内容が、法律で定められた範囲を超えている
・宿泊設備に不備がある

宿日直許可取得後に基準を守れなかった場合のペナルティ

宿日直許可取得後に業務や施設の面で基準を遵守できなかった場合には、法律に基づいて罰則や行政指導、許可の取り消しが行われる可能性があります。とくに宿当直中に通常業務と同等の業務を行った場合には、労働基準法の労働時間としてカウントし、通常の賃金を支払う必要がある点には注意が必要です。業務に関しては、緊急時対応が常態化していなければ問題ないこともあります。

経営者が知っておきたい!宿日直許可と他の労働時間制度の違い

宿日直許可を受けている宿日直業務の特徴について、他の労働時間制度と比較してみましょう。似ている労働制度として、時間外労働や深夜勤務制度があげられます。

宿日直許可と時間外労働の違い

宿日直許可を受けている宿日直業務と時間外労働の違いは、労働時間に該当するかしないかという点です。時間外労働は、通常の労働時間を超えて働くことを指します。そのため、労働時間として取り扱われます。

一方、宿日直許可を受けている宿日直業務は、医療機関での夜間や休日の待機業務であり、休息が取れることが前提とされているため、労働時間にカウントされません。

宿日直許可と深夜勤務制度の違い

宿日直許可を受けている宿日直業務と深夜勤務制度は、同じ夜間に勤務する勤務でありながら、業務内容も大きく違います。

宿日直許可で定められている業務は、緊急時に備えた待機業務である一方、深夜勤務は通常業務を行うため、法定労働時間内勤務としてカウントされます。また、深夜勤務では睡眠を前提としていないため、睡眠設備も不要です。

宿日直許可を取得して人材確保をスムーズに

ご紹介したように、宿日直許可は宿日直中の短時間の対応を前提として労働時間としてカウントしない制度です。正しく運用すれば医師の勤務時間管理と人材確保をしやすくなります。申請には睡眠設備の整備や、各種書類を揃えなくてはいけません。

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著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

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