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SOAPとは?電子カルテの書き方・例文と経営者が押さえたいポイントをわかりやすく!

公開日/2025.08.21 更新日/2025.08.21

SOAPとは、医療や看護の現場で採用されている電子カルテの書き方の一つです。患者さん情報の整理や的確な情報伝達に役立つメリットがあります。今回は、SOAPの形式を用いる利点や注意点、具体的な例文のOK例・NG例を解説。医療従事者・経営者向けに、記録の質を高めチーム医療を円滑にするポイントも紹介しています。

SOAPとは?医療における基礎知識

SOAPとは、医療や看護の現場で使われる記録方法のことです。

SOAPとは、主に医療現場で患者さんの情報を整理し、電子カルテにわかりやすく記録するための方法の一つです。「Subject(主観的情報)」「Object(客観的情報)」「Assessment(評価)」「Plan(計画)」の頭文字をとって、「SOAP」と呼ばれています。

4つの項目に沿って記録することで、患者さんの情報をわかりやすく整理でき、問題点の抽出や治療計画を立てるのに役立ちます。

【SOAPの要素と意味】

Subject(主観的情報)

Subject(主観的情報)は、患者さん自身の言葉や感覚に基づく情報です。たとえば、「お腹が痛い」といった主訴や痛みの度合い、不快感などが含まれます。

患者さんが主観的に感じていることを、そのまま記録することが重要です。医療従事者には、患者さんとのコミュニケーションを通じて、情報を正確に聞き取ることが求められます。

Object(客観的情報)

Object(客観的情報)は、患者さんの観察や検査を通じて得る、医療従事者視点の客観的なデータです。具体的には、血圧や体温、臨床検査結果といった数値や測定可能な情報が該当します。

それぞれのデータは患者さんの主訴(Subject)を裏付け、状態を客観的に評価するための基盤となる重要な情報です。誰が見ても同じ解釈ができるように「事実」を正確に記録します。

Assessment(評価)

Assessment(評価)は、主観的情報と客観的情報をもとに、患者さんの状態を医学的に評価するプロセスです。医療従事者は得られた情報を総合的に分析・考察して、考えられる診断名や健康状態、問題点を明確にします。

患者さんの状態を正確に把握し、次に適切な治療を立てるための重要な基礎です。

チーム医療の必要性

Plan(計画)は、評価に基づいて具体的な経過観察や治療計画を立てるステップです。薬物療法やリハビリテーション、生活指導など、患者さんの状態に応じた治療法やケアプランを策定し、実行に移します。

この治療の方針や計画は、他の医療従事者も共有するため、わかりやすく具体的に記載することが重要です。

SOAPの書き方を用いる4つのメリット・効果

SOAP形式で情報を整理・記録することは、医療現場に多くの利点をもたらします。医療の質の向上や業務の効率化につながる、主な4つのメリット・効果を紹介します。

情報が混在しない

SOAP形式で記録するメリットの一つは、情報が混在せず整理してまとめられる点です。患者さんの訴えである「主観的情報」と、検査データ等の根拠に基づく「客観的情報」を明確に分けて記載できます。

主観的情報と客観的情報が混在しないことで、情報が曖昧になることを防ぎ、根拠に基づいた正確な評価と、適切な計画の立案へとスムーズにつなげられます。

誰が読んでもわかりやすい

SOAPは決まった形式で情報をわかりやすく整理できるため、記録者以外の人が読んでも患者さんの状態を理解しやすい点がメリットです。医療従事者の経験年数に関わらず情報が伝わりやすく、スムーズなコミュニケーションにつながります。

結果、医師や看護師など多職種間の連携が強化され、一貫した質の高いチーム医療の提供に役立つでしょう。

状況や課題をスムーズに把握できる

SOAPの流れに則って記載すると、患者さんの個別の状況や課題を円滑に把握しやすくなります。問題点が明確になるため、医療従事者は迅速に対応策を考え、実行することが可能です。

結果として、チーム全体の業務効率が向上し、ケアの質を高めることにも大きく貢献します。

正確な保険請求に役立つ

電子カルテに記載された内容は、保険請求をする際の重要な根拠です。SOAP形式の記録は、情報の整理・診療内容の正確な記載に役立ちます。医療行為の記録が明確であるため、スムーズな請求業務を行うことができ、誤請求のリスクも減るでしょう。

また、監査や査定の際にも、診療の正当性を客観的に証明する資料となり、安定した病院経営に貢献します。

SOAPの書き方を用いる4つのデメリット・課題

多くのメリットがあるSOAPですが、一方でいくつかのデメリットや課題も存在します。導入や運用にあたっては、以下の4つの点を理解し、状況に応じて適切に活用することが重要です。

医療従事者に浸透させるための教育が求められる

SOAPの書き方を効果的に活用するには、実際にカルテ作成にあたるすべての医療従事者に、書き方のルールを浸透させる必要があります。職場内で、SOAPの目的や具体的な記載方法に関する教育が不可欠です。

職員全員が同じレベルで実践できるようになるまでは、継続的な指導が求められるでしょう。

複数の症状・疾患がある場合は活用が難しい

SOAP形式は、1つの問題に対する患者さんの情報を記録するのに向いています。そのため、複数の症状や疾患を同時に持つ患者さんの場合、SOAP形式での記録は複雑になりがちです。

たとえば、「糖尿病」「高血圧」「腰痛」といった各問題に対して個別にSOAP形式を適用しようとすると、情報が重複したり、記録が冗長になったりしかねません。かえってわかりにくく、記録者以外の人が見て理解しにくいケースもあります。

救急医療など緊急を要する現場には向かない

SOAPは詳細な情報を整理して記載するのに適していますが、その分、記載に時間がかかるデメリットがあります。緊急を要する救急医療の現場や、突発的な対応が求められる現場では活用が難しいでしょう。

とくに、患者さんの状態が急変する可能性がある場合、記録に時間をかけることは現実的ではありません。

長期のプラン作成には適さない

SOAPは、現在起きている問題に焦点を当てて、短期的な解決を目指す場合に役立つ記録方法です。現状の評価(A)とそれに基づく短期の計画(P)の記載が中心と言えます。

そのため、慢性疾患の経過や退院後の生活を見据えた長期的なケアプランを立てるのには不向きです。情報が断片的になってしまい、継続的な視点での全体像を捉えにくいという課題があります。

SOAPに則った電子カルテの記入例【OK例・NG例】

では、実際にSOAP形式でどのように記録するのでしょうか。ここでは具体的な記入例を、よい例(OK例)と悪い例(NG例)で比較しながら解説します。ポイントを押さえることで、より質の高い記録が作成できます。

【OK例】インフルエンザで入院中の患者さんのカルテ
【Subject】
「昨日よりは息苦しさが少し楽になった気がする」
「咳と黄色い痰はまだ続いている」
「体の節々の痛みはだいぶ和らいだが、まだ起き上がるのがだるい」
「食欲はあまりなく、水分もあまりとれない」

【Object】
体温 37.8℃、血圧 130/75 mmHg、心拍数 95回/分、呼吸数 22回/分、SpO2 95%
咽頭扁桃に発赤あり
頸部リンパ節腫脹なし
胸部X線:異常陰影なし
脱水所見:口内乾燥あり

【Assessment】
高熱、倦怠感、関節痛の持続
抗ウイルス薬を開始しているが、まだ解熱には至っていない
現時点で、肺炎などの合併症を疑う所見はない
高熱および経口摂取不良により脱水状態

【Plan】
抗インフルエンザ薬(タミフル)の内服を継続
高熱に対し、解熱鎮痛剤を使用
安静指示
1日1,200mlの経口水分摂取を促す

A(評価)で挙げた問題点とP (計画)を必ず対応させることが重要です。どの問題にどう対処するかを明確にでき、論理的な思考整理とチームでの情報共有がスムーズになります。

【NG例】インフルエンザで入院中の患者さんのカルテ
【Subject】
熱がありだるそう
あまり食べられていない様子

【Object】
バイタルサインは安定している
点滴施行中

【Assessment】
インフルエンザ
脱水

【Plan】
治療を継続する
水分を摂るよう指導する
引き続き注意深く様子を見る

Subjectでは記載者の推測ではなく、患者さん自身の訴えである「主観的情報」を記載しましょう。Objectは、検査結果や観察した内容を具体的に記載します。

また、Assessmentでは、単なる病名や状態ではなく、SubjectとObjectを分析した記述にしましょう。Planにおいても、具体的な治療や水分量などが記載されていないと次の担当者が困ってしまいます。

SOAPの書き方を有効活用するポイント【医療従事者向け】

SOAP形式による記録は、患者さんの状態を把握し、チームで情報を共有する重要な手段です。情報共有の質を高めるには、日々の情報収集と的確な分析、そして簡潔な記録が不可欠です。ここではSOAPを形骸化させず、有効活用するためのポイントを解説します。

SOAP形式の書き方をテンプレート化する

SOAP形式による記録方法を有効活用するために、テンプレート化を進めましょう。医療機関全体で周知を行い、標準的な記録方法として浸透させれば、業務効率の向上が期待できます。職員全員が基本の記録方法として認識することで、記載漏れの防止にもつながります。

基礎データの収集・分析と問題点の抽出を徹底する

質の高いSOAP形式の記録は、患者さんの基礎データの把握から始まります。年齢や既往歴、生活背景などの情報を収集・分析し、現在の状態における看護・医学的な問題点を洗い出しておくことが不可欠です。

このプロセスを徹底することで的確な評価が行われ、適切な治療・ケア計画の立案につながります。

主観的情報はこまめにメモをしておく

患者さんの主訴(S)は、客観的情報を得るための検査やその後の評価・計画に活かすための極めて重要な情報です。記載漏れを防ぐため、患者さんの言葉はこまめにメモしましょう。

「いつもと違う」「昨日より痛い」などの訴えは、状態変化を捉えて適切な検査や治療方針を決定するための大切な根拠となります。

冗長な表現は避けて簡潔に記載する

SOAPによる記録は、多忙な多職種間で情報を共有する重要なツールです。表現が冗長だと要点がぼやけてしまい、情報の伝達効率を著しく低下させます。チーム内のスムーズな連携を阻害し、誤解を生む原因にもなりかねません。

誰が読んでもわかるように、無駄を省いて要点を押さえた簡潔な記述を心がけましょう。

SOAPの活用のために医療機関経営者ができること

SOAP形式の記録は、医療の質と業務効率化に直結します。現場で活用し定着させるためには、経営層による戦略的なサポートが不可欠です。ここでは、活用ルールの明確化、研修体制の強化、外部リソースの活用など、経営者が主導できる具体的な施策を解説します。

SOAPの書き方を活用するケースを明確に決めておく

SOAPを効果的に活用するため、どのケースで使用するかをあらかじめ決めておきましょう。たとえば、複数の医療スタッフが関わるケースなど、とくに情報共有と問題解決が重要な場面で用いると効果を発揮します。

使用場面を統一することで、スタッフは迷わず記録でき、チーム全体でスムーズな情報共有と一貫したケアの実践ができるでしょう。

医師事務作業補助者等への研修体制を強化する

医師の負担軽減と質の高い記録のため、電子カルテの代行入力を行う医師事務作業補助者の役割は重要です。医師事務作業補助者に対する、SOAPの構造や目的を学ぶ研修を充実させましょう。

医師や看護師と共通認識を持つことで、代行入力の精度が向上し、チーム連携が円滑になります。結果として、医師の負担軽減と現場の業務効率化にもつながるでしょう。

外部受託や人材派遣・紹介サービスを活用する

院内で医師事務作業補助者の育成や研修体制を整えるのが難しい場合、アウトソーシングも有効な選択肢です。専門スキルを持つ人材を外部から確保することで、教育コストを抑えつつ即戦力を導入できます。

ソラストでは、専門教育を受けたスタッフによる「医事関連受託サービス」や「人材派遣・紹介サービス」を提供しています。質の高い医療事務体制の構築を支援します。

SOAPの書き方のポイントを把握し業務効率化を図ろう

SOAPとは、医療現場で患者さんの情報を整理して、わかりやすく電子カルテに記録するための記載方法です。S・O・A・Pの各項目を明確に分け、簡潔に書く基本を押さえることで、正確かつ円滑な連携に役立ちます。個人のスキル向上だけでなく、経営者が主導して活用ルールを定め、研修強化やアウトソーシングを進めることで、組織全体の医療レベル向上と業務効率化が実現できるでしょう。

ソラストでは、「医事関連受託サービス」や「人材派遣・紹介サービス」などを展開しています。病院経営者さま、クリニック開業医さまの状況に合わせて適切な支援をご提供しますので、まずはお気軽にご相談ください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

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