SPD業務とは?導入のメリット・デメリットと運用方法を解説
SPD業務とは、医療機関で使用されるあらゆる物品の発注から管理、供給やデータを一元的に管理する業務です。膨大な数の医薬品や医療消耗品などを管理する手間は、見えないコストとして医療機関の経営課題となります。この記事では、SPD業務の具体的な業務内容や導入のメリット・デメリット、運用成功のポイントについて解説します。
SPD業務とは
SPD(Supply Processing and Distribution)業務とは、病院で使用する医薬品、医療材料から日用品などの物品の仕入れから在庫管理、そして各部署への供給に至るまで、一連の物流プロセス全体を対象とした業務のことです。医療現場において、適切なタイミングで必要な物資が供給されることが患者さんの安全に直結します。
SPD業務を適切に行うことで、医療材料の在庫過多や欠品といったリスクを減らし、無駄なコストの削減も可能です。そのため、安全で質の高い医療提供体制の維持や、病院全体の運営効率の向上が期待できます。
なお、SPD業務は院内で自ら運用する方法だけでなく、外部の業者へ委託するケースも見られます。
【SPD業務での管理の対象】・医薬品
・医療機器
・リネン類
・滅菌や再利用される器具
・文具や日用雑貨、印刷物などの事務用品
SPD業務に含まれる具体的な業務内容
SPD業務には、物品の発注や在庫・品質管理、各部署への供給、さらにデータ分析や安全管理などが含まれます。ここでは、主要な業務内容をそれぞれ解説します。
医療材料の発注・在庫と品質の管理
SPD業務の中心を担うのは、医療材料を適切なタイミングで発注し、在庫量を適切にコントロールする業務です。たとえば、取引先と価格・納期の交渉を行いながら物品を購入したり、実際の消費量をもとに発注タイミングを決定したりします。さらに、使用期限や適切な保管条件を管理することで、品質を維持したまま医療提供を支える体制を整えます。
このような在庫管理・品質管理の仕組みによって、医療機関は安全かつ高品質な医療を提供するための基盤を築くことが可能です。
各部署への供給・院内物流の管理
医療材料などを必要とする部署に、「必要な量を、必要なタイミングで、必要な場所へ」届ける仕組みを構築するのもSPDの業務です。具体的には、入荷時の検品や仕分け、ピッキングや病棟への配送、定数補充などが含まれます。
このように、院内物流が効率化されると、看護師や医師らの物品管理に費やしていた時間や労力を削減でき、医療行為に専念できる環境が作れます。結果として、病院全体の運営効率と生産性の向上が期待できるでしょう。
データ分析・改善策の実施
発注・在庫・消費に関する詳細なデータを収集・活用し、現状の課題を抽出して改善策を立案・実施することもSPDの重要な業務です。たとえば、使用実績を可視化して発注ロジックを見直す、院内の物流動線を再検討するといった活動があげられます。
データ分析と改善策では、PDCAサイクルを回しながら実施することで、コスト削減や業務効率化が期待できます。
リスク・安全管理
医療材料や医療機器は患者さんの生命・治療に直結するため、リスク・安全管理もSPDに不可欠な業務です。具体的には、誤った物品の使用防止、使用期限切れの排除、リコール発生時の迅速な対応、さらに薬機法・ガイドラインへの準拠などが含まれます。
こうした管理体制の構築によって、医療事故を未然に防ぐとともに、医療機関の信頼性の向上にもつながります。
SPD業務を導入するメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・業務効率化を目指せる ・コスト削減につながる ・医療の安全性・質の向上を目指せる |
・運用・維持のコストがかかる ・トラブル発生時のリスク管理 ・対策が不可欠 |
SPD業務を導入することで業務効率化や医療の安全性・質の向上といったメリットが期待できます。一方で、運用コストやトラブル発生時のリスク管理・対策が必要といった点がデメリットです。ここでは、SPD業務を導入する上で知っておきたい、メリット・デメリットをそれぞれ解説します。
SPD業務を導入するメリット
・コスト削減につながる
・医療の安全性・質の向上を目指せる
SPD業務を導入するメリットは、物流・物品管理プロセスの一元化によって病院内の業務を効率化し、医療やサービスの質を向上させられる点です。たとえば、物品の発注や在庫管理が整理されると、看護師や事務職員の業務負担を軽減でき、本来の医療行為に集中しやすくなります。
また、SPDシステムで正確な消費データを収集し、在庫量や仕入れ価格を適正化することで、不動在庫やコストの削減が可能です。さらに、使用期限や保管条件などの管理体制を強化すると、医療事故のリスク低減と医療の安全性確保にも貢献できるでしょう。
SPD業務を導入するデメリット
・トラブル発生時のリスク管理・対策が不可欠
SPD業務を導入するデメリットには、運用・維持のコストとリスク管理の必要性があります。システムを導入するには、初期投資コスト、人員教育といった運用・維持コストが無視できません。そのため、多くは外部委託を採用しています。医療機関の規模によっては、費用対効果を考慮した慎重な導入の検討が必要です。
また、在庫管理や物品供給を一元管理する体制となるため、システム障害や人為的なミスなどトラブルが発生した際に、病院運営や患者さんの安全に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、システムの不具合や委託業者の人手不足・教育不足に加えて、院内職員の理解不足などによる供給ストップといったリスクです。そのため、あらかじめリスク管理体制や代替の供給手段、迅速な対応手順などを整えておく必要があります。
【運用方法別】SPD業務を導入するメリット・デメリット
SPD業務を運用する際には、自院・一部の外部委託・すべての外部委託といった方法があります。ここでは3つの運用方法ごとに、それぞれのメリット・デメリットを整理します。
【自院で運用】メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・運用体制や調達先の調整などをすべて自院に適した形で決められる ・外部委託費用を削減できる |
・SPD業務に精通した人材の確保や教育が必要 ・安定した運用までに時間がかかりやすい |
自院でSPD業務を運用する最大のメリットは、業務の透明性と柔軟性を確保できる点です。たとえば、運用体制や調達先の調整などをすべて自院の状況に合わせてきめ細かに決定できます。また、自院スタッフが直接関与することで、物資の管理状況をリアルタイムで把握しやすく、問題が発生した際にも迅速な対応が可能です。
一方、SPD業務に精通した専任スタッフの確保や教育・運用体制が不可欠であり、人的リソースの負担が増える点がデメリットです。とくに、物流や在庫管理といった専門知識や運用ノウハウがない組織では、初期の構築から立ち上げに時間がかかる可能性があります。
【一部を外部委託で運用】メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・人員確保や教育の手間を抑えられる ・自院で運用するよりも業務効率化を目指しやすい ・自院で必要としている部分・強化したい部分のみ委託できる |
・一定の外部委託費用が発生する ・委託先と自院の部署との円滑な連携が不可欠 |
SPD業務の一部を外部に委託する方法は、自院の負担を軽減しつつ、業務効率化を目指せるバランスの取れた選択肢です。たとえば、物品の調達や在庫管理といった比較的非医療行為に近い業務を外部に任せ、自院は医療や患者産のケアに注力できる形です。自院で強化したい部分やノウハウがない部分のみを委託できるため、人員や費用の最適化が期待できます。
ただし、委託先と自院の部署間での連携が不十分だと、期待通りの成果が出ないだけでなく、かえって運用が複雑になり現場が混乱するリスクもあります。委託費用が見合うかどうかの委託先の選定や、情報共有体制の整備が重要です。
【すべて外部委託で運用】メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・人材確保や教育の手間を最小限に抑えられる ・SPD業務に精通したスタッフに業務を一貫して依頼できる |
・一定の外部委託費用が発生する ・自院に適した外部委託先の見極めが不可欠 |
SPD業務のすべてを専門業者に外部委託することで、院内の物流・物品管理に関する業務負担を最小限に抑え、院内スタッフは本来の医療業務に集中できます。また、委託先が最新技術や豊富なノウハウを持っている場合、一貫性のある効率的な運用が可能です。
一方で、一定の外部委託費用が継続的に発生するため、予算管理が重要です。委託内容や契約条件の検討を怠ったり、不適切な業者を選定したりすると、材料費が高止まりやサービスレベルが期待に満たないリスクがあります。そのため、委託先の選定が極めて重要であり、自院に適した専門性や実績を持つ業者の慎重な見極めが必要です。
【医療機関経営者向け】SPD業務の運用を成功させるポイント
・必要コストや院内のリソースなどを考慮し、運用方法を決める
・必要な人材の確保や教育・運用マニュアルの整備を進める(自院で運用する場合)
・複数の企業を比較し、自院に適したサービスがある業者を選ぶ(外部委託で運用する場合)
SPD業務の運用を成功させるには、まず自院の現状を正確に把握し、導入の必要性と導入範囲を判断するのが大切です。具体的には、現在の在庫管理の課題や物品管理に費やしている時間などを客観的に分析し、SPD導入によって課題が解決できるか、メリットがコストに見合うかを検討します。
SPD業務を進めるにあたっては、初期導入に必要なコストや院内の人的リソースを考慮し、最適な運用方法を見極めるのがポイントです。自院で運用する場合は、専任スタッフの確保や教育、そして詳細な運用マニュアルを整備する必要があります。外部委託を選ぶ際は、複数のSPD業者を比較検討し、自院の診療科や規模、求めるサービスレベルに合った専門性の高いパートナー企業を選びましょう。
SPD業務の導入や運用に関するQ&A
ここでは、SPD業務導入や運用についてよくある質問に回答します。Q.SPD業務を導入した方がいい基準は?
看護師や医師が物品探しに時間を取られている、過剰在庫や期限切れの材料が多い、特定の物品で頻繁に欠品が起こるといった状況が常態化している場合にはSPD業務の導入がおすすめです。このような課題は、医療の安全性と経営効率の低下につながる可能性があり、SPDによる一元管理とデータ活用によって業務改善が期待できます。
Q.自院でSPD業務を運用する場合、どのような人材を確保するべき?
自院運用では、在庫管理や病院内物流に関する専門知識を持つ人材が求められます。加えて、SPDシステムから得られるデータを分析し、改善策を立案する能力が必要です。また、物品供給の円滑化には、医師や看護師などの各部署と協力関係を築く高いコミュニケーション能力も必須となります。
Q.SPD業務を外部委託する場合、委託先はどう選ぶ?
委託先は、医療業界におけるSPD業務の豊富な経験と実績があるかが重要です。提供されるサービス内容や、トラブル時のサポート体制を詳細に確認し、自院のニーズに合うか、自院が抱える具体的な課題を解決できるかをチェックしてみてください。
SPD業務を導入して業務効率化と質向上を目指そう!
SPD業務は物流・物品の一元管理によって、医療の質向上と病院経営の効率化を両立させるための戦略的な取り組みです。医療機関経営者はコスト削減や業務効率化といったメリットと、運用・維持コストやリスク管理の必要性というデメリットを理解しておく必要があります。導入の際は、自院の現状に最適な運用形態の見極めが重要です。
ソラストでは、医事関連受託サービスのみならず、医療機関経営支援サービスや医事関連の人材派遣・紹介サービスなど、病院経営者さま、クリニック開業医さまの多様な状況に合わせた適切な支援を提供しています。SPD業務の導入をはじめ、医療機関経営に関する課題がある場合には、ソラストにご相談ください。