なぜ医療事務は辞めてしまう?離職率を下げる対策と長く働いてもらう方法を解説


医療事務はやりがいのある仕事ですが、さまざまな理由で辞めてしまう人も多く、離職率が高い傾向にある職種です。長く働いてもらうためには、経営者として職場環境の改善に取り組むことが求められます。今回は、医療事務が離職する主な理由や職場定着のための具体的な対策をご紹介します。
医療事務の離職率の実際
産業別 | 高卒の離職率 | 大卒の離職率 |
---|---|---|
宿泊業・飲食サービス業 | 65.1% | 56.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 61.0% | 53.7% |
教育・学習支援業 | 53.1% | 46.6% |
小売業 | 48.6% | 41.9% |
医療、福祉 | 49.3% | 41.5% |
参考:厚生労働省 新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち離職率の高い上位5産業
医療事務の離職率を示す正確なデータは存在しませんが、医療・福祉業界全体の傾向を参考にすると、高い離職率が課題となっています。厚生労働省の調査によると、高卒で医療・福祉系の仕事に就いた人の3年以内の離職率は49.3%、大卒では41.5%です。
これは、高卒者・大卒者ともに2~3人に1人が入職後3年以内に離職している計算になります。また、医療・福祉業界は、新卒者の入職後3年以内の離職率が高い業界の上位5つのうちに数えられています。
医療事務も同様に、労働環境や業務負担の大きさが離職の一因となっているようです。
医療事務を志す人の特徴
・ライフステージに合わせて柔軟に働ける環境を求めている
・医療機関という安定した職場を求めている
・未経験で無資格でも働ける職場を求めている
・クリニックの場合、自宅から近く通勤しやすさを求めている
医療事務は、とくに女性から人気の高い職種です。理由として、雇用形態の選択肢が幅広く、勤務時間もさまざまで自分に合う時間を選べることから、結婚や出産などのライフイベントに対応しやすい職種であることが挙げられます。また、医療機関という安定した基盤のある職場で働きたいと考える人も多い傾向にあります。
さらに、医療事務は未経験や無資格の人も挑戦しやすい職種です。異業種から転職したい人や、働きながら専門性を高めたい人などにも魅力的といえます。
なお、クリニックは地域密着型の医療機関であり、自宅から近い職場を選びやすい傾向があります。通勤の負担が少ないことも医療事務が人気の理由のひとつです。
医療事務が離職する5つの主な理由

医療事務が離職する理由には、医療事務職ならではの業務内容や職場環境が関係しています。主に考えられる離職理由を5つみていきましょう。
業務が想像以上に多く忙しい
医療事務の業務は想像以上に多岐にわたります。診療報酬の請求業務をはじめ、患者さんの情報の管理や各種書類の作成など、複雑で膨大な業務をこなさなければなりません。
さらに、医療機関の収益に関わる診療報酬の点数は、2年に一度改正されます。常に最新の情報を把握しながら頻繁に変わるルールに対応し、正確に処理する必要があります。こうした業務量の多さや変化の速さが負担となり、離職の一因となるケースも少なくありません。
クレーム対応がつらい
医療事務は医療機関の窓口で受付業務を担うため、患者さんからのクレーム対応も避けられません。待ち時間の長さや診療費に関する不満など、さまざまなクレームに対して迅速かつ適切に対応することが求められます。
しかし、医療行為に直接関わらない立場でありながら、説明や対応を求められる場面も多く、精神的な負担が大きくなりがちです。このようなストレスが積み重なることで、離職につながるケースもあります。
職場の人間関係の風通しがよくない
医療事務は患者さんの対応だけでなく、医師や看護師など他の医療スタッフとの連携も欠かせません。良好な関係性を築けていればよいですが、職場の人間関係が悪化すると、業務がスムーズに進まず働きにくさを感じることがあります。
とくに、職種間で上下関係が厳しかったり、コミュニケーションが不足していたりすると、ストレスの原因になりがちです。また、病院に比べてクリニックは少人数の職場であり、関係性の悪化が逃げ場のない状況を生み出してしまうケースがあります。
給料が低いなど待遇への不満を持ちやすい
医療事務の離職理由として、待遇に対する不満も挙げられます。業務が複雑で責任が重いにもかかわらず、給与が低いと感じることが少なくありません。また、長時間の立ち仕事や残業が発生することもあり、労力に見合わない報酬だと感じる傾向もあります。
さらに、病院やクリニックの施設が古く、スタッフルームの設備が不十分な場合、休憩時にもリフレッシュできません。このような要素から、働き続けることに対して不安を感じる要因となることもあります。
家庭の事情で家庭と仕事の両立が難しい
医療事務は女性に人気のある職種ですが、家庭の事情によって仕事との両立が難しくなることがあります。結婚や出産、育児、介護といったライフイベントに加え、配偶者の転勤など家庭の変化によっては、退職を選ぶしかないケースも少なくありません。
また、医療事務はシフト制で働くことが多い傾向にあります。とくに少人数体制のクリニックだと、急な欠勤や時短勤務が難しい場合もあり、柔軟な働き方を望めないことが負担に感じるケースもあるでしょう。
医療事務の離職を防ぐための対策5選
医療事務の離職を防ぐためには、以下で解説する対策を取り入れてみましょう。スタッフの離職が多く悩んでいる経営者さまは、ぜひ参考にしてください。
スキルに応じた評価制度で頑張りを反映させる
医療事務の離職を防ぐためには、スキルを正当に評価する制度の整備が必要不可欠です。業務の幅が広く、専門知識が求められる仕事だからこそ、努力や成長が適切に評価される仕組みがあれば、スタッフのモチベーション向上につながります。
たとえば、医療事務関連の資格を取得したときや、業務の習熟度が一定水準を満たしたときなどに、昇進や昇給の機会を設ける方法があります。適切な評価を受けられれば職場への信頼感が増し、長く働き続けたいと感じる環境を作れるでしょう。
業務量に応じた適切な人員配置を整える
医療事務の業務量と給与が見合わないという不満を解消するためには、適切な人員配置が不可欠です。1人のスタッフに過度な業務負担がかかると、疲弊しやすく、離職につながる可能性が高まります。
たとえば、業務のピークとなる時間帯や曜日ごとに必要な人員を確保し、負担を分散させることで、職場環境の改善が期待できるでしょう。余裕を持った配置を行うことで、スタッフの働きやすさが向上し、離職率の低下につながります。
教育体制や相談できる環境を整える
医療事務は未経験や無資格から挑戦する人も多いため、教育体制の充実が欠かせません。マニュアルの整備だけでなく、実務を通じて学べる研修制度や先輩スタッフによるサポート体制を整えることで、新人の不安を軽減できます。
また、業務の疑問や悩みを気軽に相談できる雰囲気を作ることも重要です。相談しやすい環境があれば、スタッフのストレスが軽減され、安心して長く働ける職場作りにつながります。
ワークライフバランスをサポートする
医療事務の職場において、ワークライフバランスの改善は離職防止に直結します。長時間労働や不規則なシフト勤務が負担にならないように、柔軟な勤務時間の設定や休暇制度の充実を図ることが重要です。
有給休暇の取得を促進し、仕事と家庭やプライベートを両立しやすい環境を整えることで、職場への満足度が向上します。メリハリを持って働ける職場環境を整備すれば、より長く働き続けたいと感じるスタッフが増えるでしょう。
医療DXを導入する
医療DXの導入は、医療事務の業務効率の向上に大きく貢献します。電子カルテやオンライン受付システムの活用により、事務作業の自動化が進み、スタッフの負担の軽減に効果的です。診療報酬請求のミスを減らし、業務の正確性を向上させる効果も期待できます。
また、医療DXの導入を進めて煩雑な手作業を減らすことで、患者さん対応や窓口業務などに集中できる働きやすい環境が整い、離職率の低下にもつながるでしょう。
医療DXを進めたいと考えていても、日々の業務に追われる病院経営者さまや開業医さまにとって、導入のハードルは高いものです。ソラストの「医療機関経営支援サービス」は、医療機関のDX導入やICT活用をサポートし、業務の効率化を実現します。電子カルテの導入支援や業務フローの改善提案など、医療現場の負担を軽減する多様なサポートを提供しているので、経営の安定化を目指したい経営者さまにもおすすめです。
【経営者向け】医療事務スタッフを定着させるためにできること

医療事務スタッフの離職率を低下し、定着させるためには、経営者さま自身の取り組みも必要です。以下で詳しく解説するため、日々の経営に取り入れられるかどうか検討してみてください。
資格取得の促進
医療事務スタッフの資格取得を促進することは、業務の質の向上だけでなく、スタッフのモチベーション維持にもつながります。資格取得支援制度を導入し、学習の機会を提供することで、スキルアップを後押しできるでしょう。
また、資格取得後のキャリアパスを明確にすることで、スタッフ自身が将来の見通しを立てやすくなり、長く働き続ける意欲の向上にも寄与します。
人員計画・配置の見直し
職場内の人員を増やしたり、スタッフの配置を変更したりすることも、医療機関の経営者としてできる対策のひとつです。とくに、現在医療事務スタッフの数が不足している場合や、未経験者が多く実務経験のある特定のスタッフに負担が集中している場合などでは、採用活動を進めることが求められます。
なお、病院の場合、職種間で上下関係が発生しがちです。しかし、医療事務スタッフは近所に住んでいる場合が多いので、医師も看護師も「離職した場合は将来の患者さまになる」ことを前提に、丁寧に接する必要があります。経営者として、人員配置の見直しに加えて、風通しのよい職場環境の構築を目指すことが大切です。
職場の設備への投資
職場の設備に投資し、充実させることは、スタッフの働きやすさを向上させる重要な施策です。事務業務に関わるシステムや機器を導入することで業務効率が向上し、スタッフの負担の軽減につながります。
また、休憩スペースの環境を整え、リラックスできる空間を提供することで、スタッフのストレスを和らげることができるでしょう。快適な職場環境は、離職率の低下にも寄与する大切な要素です。
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こんな病院経営者さま・開業医さまにおすすめ! |
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とくに、医療事務の診療報酬請求業務の精度を上げたい方、医療事務スタッフの採用がなかなか進まずコストを抑えたい方などにおすすめです。
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