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ソラストオンライン

医療・介護従事者のための
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医療や介護現場の課題や業界の動向、最新情報を多角的にお届けする「ソラストオンライン」。従事者のみまさまに役立つ話題をさまざまな切り口で提供しているNewsコラムです。

2021.7.29
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ニュース解説
「HACCP」を実行して介護現場の
食の安全性向上と利用者のQOL(生活の質)向上を目指す

食品衛生法の改正に伴い、今年6月から「HACCPに沿った衛生管理」が介護現場でも義務付けられるようになりました。義務化とはどういうことで、現場は何をすればいいのかを説明します。

国際基準に沿った手法のもとで日常の食事作りを行う

HACCP(ハサップ:Hazard Analysis and Critical Control Pointの略)とは、食品衛生管理の手法の国際基準です。最終製品のみを検査し、安全性を確認するという従来の衛生管理と異なり、食材の搬入時や調理中、配膳のタイミングなどで食中毒菌に汚染されたり、異物などの混入リスクがないかを確認し、リスクを軽減・除去することで、食品の安全性を確保していく手法です。

今年6月から1回につき20食以上食事を提供している介護施設でも、「HACCPに沿った衛生管理」が義務付けられることになりました。HACCPに沿った衛生管理を行っているかどうかの認可や調査などを受ける必要はありませんが、守らなかったときの罰則等は都道府県ごとに定められています。不明な点については施設を管轄する保健所に確認しましょう。

衛生管理計画を策定、計画を実施しきちんとできているかを確認・記録する

すべての介護現場に義務付けられた主なことは、衛生管理をいつ・どのように行い、問題があったときにどのような対処をするのかを「衛生管理計画」として策定し、計画に沿って実施すること、計画に沿っているかどうかを確認・記録することです。つまり、衛生管理を「見える化」していくのです。

ここで言う衛生管理は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)や2S(洗浄・殺菌)の実施と、検食を実施するといった一般衛生管理※1 など、従来行っていた内容が基本になりますので、特別な機器を使って行う必要はありません。

なお、「HACCPに沿った衛生管理」は、施設の規模によって実施する内容が異なります。従業員数が50人以上は「HACCPに基づく衛生管理」、それ以下は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」となります。都道府県などによって従業員数などの適用が異なることもありますので、確認してください。

2つのパターンでは、以下のものを求められます。
・HACCPに基づく衛生管理:HACCP7原則※2 に基づき、使用する原材料や製造方法等に応じて衛生管理計画を作成する。
・HACCPの考え方を取り入れた衛生管理:各業界団体が作成する手引書を参考に、衛生管理計画を作成する。

介護施設の場合参考になる手引書は「HACCP導入のための手引書」のなかの「大量調理施設編※3」です。また、「大量調理施設衛生管理マニュアル※4」に沿って衛生管理を実施している場合、このマニュアル自体がHACCPに基づいて策定されているので、新たな対応をとる必要はありません。

食事にかかわる衛生管理を意識することは利用者の満足度や介護の質の向上にもつながる

もう少し詳しく、衛生管理のやり方を見ていきます。HACCPでは食中毒菌や石、金属片といった異物など健康に悪影響をもたらすものを「危害要因」と呼び、危害要因を取り除くための重要なポイントを「重要管理点」としています。この危害要因に何があるのか、重要管理点はどこかを衛生管理計画に盛り込んでいきます。

つまり、食事を作り、利用者に提供するまでの工程のどこに危害要因があるのかを分析し、危害要因が発生しないようにするためには何を注意すればいいのかを予測し、重要管理点を連続的・継続的に監視・記録します(図表)。

衛生管理計画の中では、食材の加熱の時間や温度を監視・記録するなど、工程ごとにさまざまな対応をとっていきます。たとえば、前述の「大量調理施設編」では、調理時の注意点として、以下のような内容を示しています。

・まな板、包丁、使い捨て手袋などは食材ごとに使い分け、作業ごとに手洗いをする
(例:危害要因はまな板などに付着した食材に付着した細菌類。重要管理点は食材を処理し終わったタイミング)

また、食品を扱う際に汚染源となる可能性がある従業員への注意としては
・責任者は体調不良の概要、指示内容を記録するほか、体調不良者には調理作業などに従事させないようにするなど、体調不良者がいた場合の対策をあらかじめ用意する
(例:危害要因は従業員の体調不良。重要管理点は出勤時の体調チェック)

大切なのは、調理担当者のみならず介護施設の職員全員がHACCPについて理解しておくこと。なぜならば、汚染された手で施設内の手すりに触れて食中毒菌が増殖し、食事に混入する恐れなどがあるからです。食事作りを外部の業者に委託している場合は、委託先がHACCPに沿った衛生管理を実施しているかどうかを確認することも必要です。

HACCPでは衛生管理の方法が明文化されるので、職員の勘や経験に頼ることなく、清潔な環境を築けるようになります。また、安心・安全な食事を提供できることは、利用者のQOL向上にもなり、そうした利用者の様子を見ることで職員のモチベーションアップにつながり、ひいては介護の質向上につながります。HACCPは、衛生管理にとどまらない、介護環境を良くすることになると意識し、取り組んでいきましょう。

※1
一般衛生管理の項目
食品衛生責任者の選任、施設の衛生管理、設備等の衛生管理、使用水等の衛生管理、ねずみ及び昆虫対策、廃棄物及び排水の取り扱い、食品または添加物を取り扱う者の衛生管理、検食の実施、情報の提供、回収・廃棄、運搬、販売、教育訓練、その他

※2
HACCPの7原則
危害要因の分析 (原則1)、重要管理点(CCP)の設定 (原則2)、管理基準の設定 (原則3)、モニタリング⽅法の設定 (原則4)、改善措置の設定 (原則5)、検証⽅法の設定 (原則6)、⽂書化及び記録の保持 (原則7)

※3
「HACCP導入のための手引書『大量調理施設編』」

※4
大量調理施設衛生管理マニュアル

図表出典:
厚生労働省ホームページならびに「HACCP導入のための手引書『大量調理施設編』」等をもとに、編集部作図

取材協力:HACCP認証協会 中山博友理事長