2026年診療報酬改定で何が変わる?基本方針や医療機関経営者がやるべきことを解説
医療機関経営者は、2026年度の診療報酬改定に関する最新情報や必要な対応の把握が重要です。この記事では、診療報酬改定の基本方針とそれに伴う変更ポイントの予想を解説します。医療機関経営者が今からやるべき3つの対策も紹介するので、今後の安定経営に向けた準備を進めましょう。
2026年度診療報酬改定の施行スケジュール
厚生労働省:「第198回社会保障審議会医療保険部会 診療報酬改定の基本方針 参考資料」
2026年度(令和8年度)の診療報酬改定に関しては、主に厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で2025年(令和7年)10月時点、基本方針や方向性、具体的な改定率などの協議が進められています。
例年、政府の予算編成と合わせて12月中旬〜下旬ごろに基本方針や改定率が決定されます。そして、翌年の2〜3月ごろに個別改定項目の決定や、具体的な点数・算定要件が告示される流れです。
施行は原則4月1日ですが、改定点数の施行は2024年(令和6年)の診療報酬改定と同様に、「6月1日」にすべきだとの意見もあります。診療報酬改定のスケジュールは今後の議論を経て正式に決定される見込みです。どちらの施行日となっても対応できるよう、早期の準備が不可欠といえます。
2026年度診療報酬改定の基本方針
2026年度診療報酬改定は、「物価高・人手不足対応」「2040年を見据えた医療体制」「質の高い医療の実現」「制度の持続可能性向上」といった4つの柱に基づいて議論が進められています。ここでは、基本方針についてそれぞれの方向性を解説します。
物価高・賃金上昇・人手不足などへの対応
| 基本認識の例 | 物価高騰や他業界における賃金アップの動き、人口減少の中で人材確保が困難な状況など、医療機関の周りを多くの課題が取り巻いている |
|---|---|
| 基本的視点の例 | 物価や賃金の変動、深刻な人手不足など、医療機関を取り巻く環境の変化に柔軟に対応することが求められる |
| 具体的方向性の例 | ・物価高騰などを見据えた診療報酬改定 ・医療従事者の処遇改善、賃金アップなどを通じた人材確保 ・医療DXなどを活用した業務効率アップや負担軽減策 |
2026年度診療報酬改定の基本方針の一つは、物価高・賃金上昇・人手不足などへの対応です。現在、医療現場は物価高や他業界の賃上げ、深刻な人手不足という大きな課題に直面しています。この状況を乗り越えるため、診療報酬改定では医療従事者の処遇改善が重要なテーマです。そのため、診療報酬改定を通じて人材を確保し、誰もが安心して医療を受けられる体制を持続させることが重要です。
具体的な対策として、職員の賃上げや業務の効率化に役立つAIやIoTなどの活用による医療従事者の負担軽減が求められます。さらに、各医療機関でも給与の見直しや業務の効率化を進め、働きやすい環境を整える努力が大切です。
2040年頃を見据えた医療提供体制の構築
| 基本認識の例 | 2040年に向け、生産年齢人口が減少する一方、医療・介護ニーズが複雑な85歳以上人口の増加が見込まれる |
|---|---|
| 基本的視点の例 | ・医療機関の機能分化・連携 ・医療資源の少ない地域における医療確保 ・地域包括ケアシステムの推進 |
| 具体的方向性の例 | ・「治し、支える医療」の実現 ・かかりつけ医と専門病院が連携する外来機能分化の推進 ・医療資源の少ない地域への支援 ・タスクシフト/シェアやチーム医療の強化 |
2026年度診療報酬改定の基本方針には、2040年頃(令和22年)を見据えた医療提供体制の構築があります。2040年ごろには、働く世代(生産年齢人口)が減る一方で、医療と介護の複合的なニーズを持つ85歳以上の高齢者が急増する見込みです。そのため、将来的な社会変化を見据えた医療提供体制の構築が求められています。
たとえば、病気を「治し、支える医療」の実現や、かかりつけ医と専門病院が連携する「外来医療の機能分化と連携」が必要となります。さらに、医療資源の少ない地域への支援も欠かせません。また、医療従事者の負担軽減のために、タスクのシフト・シェアやチーム医療を推進し、さまざまな職種と連携して医療現場を支える取り組みが重要です。
安心・安全かつ質の高い医療の実現
| 基本認識の例 | 医療の高度化や医療DXの推進などにより、安心・安全で質の高い医療の実現が必要 |
|---|---|
| 基本的視点の例 | 安心・安全で質の高い医療の実現 |
| 具体的方向性の例 | ・ICT連携を活用する医療機関・薬局の体制を評価する ・イノベーションの適切な評価 ・医薬品の安定供給 |
安心・安全かつ質の高い医療の実現は、2026年度診療報酬改定の基本方針を支える重要な柱です。近年の医療の高度化や医療DXの推進を踏まえて、第三者による客観的な評価を進め、患者の安心・安全を確保した質の高い医療の実現が求められます。
具体的な例として、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制や、イノベーションを推進するための取り組みの評価があげられます。また、国民が安心して治療を受けられるための医薬品の安定供給を確保するといった取り組みも重要です。
効率化・適正化による社会保障制度の安定性・持続可能性の向上
| 基本認識の例 | 社会保障制度を安定的に継続させることと経済・財政とのバランスをとることの両立が課題 |
|---|---|
| 基本的視点の例 | 効率化・適正化を通じた医療保険制度の 安定性・持続可能性の向上 |
| 具体的方向性の例 | OTC類似薬の薬剤給付のあり方を見直す |
効率化・適正化による社会保障制度の安定性・持続可能性の向上も、2026年度診療報酬改定の基本方針の柱です。少子高齢化が進み財源が限られる中、社会保障制度を安定的に継続させ、経済・財政状況とのバランスをとる両立が課題となっています。そのため、診療報酬改定において、制度の安定性と持続性を高める取り組みが不可欠です。
具体的な方向性としては、医療費の伸びを適正化する方針を定めた政府の「経済財政運営と改革の基本方針 2025」に沿って検討されています。たとえば、市販薬で代替可能なOTC類似薬の保険給付の見直しによって、医療サービスを持続するための効率化・適正化を図ります。
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針について(基本認識、基本的視点、具体的方向性①)」
【予測】2026年度診療報酬改定の主なポイント
2026年度診療報酬改定では、医療DXのさらなる推進や在宅医療の充実、働き方改革や賃金改善への対応が予測されます。ここでは、基本方針を踏まえた今後のポイントについてそれぞれ解説します。
医療DXのさらなる推進
2026年度診療報酬改定では、医療DXのさらなる推進が予測されます。医療現場が抱える職員の働き方改革や業務効率化などの課題を解決し、安心・安全で質の高い医療を目指すため、医療DXを推進する動きがより強まるでしょう。
国は補助金や診療報酬に「医療DX推進体制整備加算」を新設するなど、財政面からの後押しも強化しています。さらに、オンライン資格確認を基盤とした電子カルテ情報の標準化も進み、データに基づく最適医療の提供が期待されます。
在宅医療の充実に向けた対応
2026年度診療報酬改定では、在宅医療の充実に向けた対応が予測されます。2040年頃に高齢者の人口が増加し、とくに85歳以上の在宅医療の需要は62%増加する見通しです。
病床確保が困難になる中、病院や診療所、介護施設などが一体化した「地域包括ケアシステム」の構築や地域医療の見直しが求められます。将来的に在宅医療の充実は不可欠のため、診療報酬の改定やオンライン診療の活用といった制度の見直しがさらに進むでしょう。
参考:厚生労働省「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」
働き方改革や賃金改善に対応するための診療報酬の見直し
2026年度診療報酬改定では、働き方改革や賃金改善に対応するための診療報酬の見直しが予測されます。他業界で賃上げが進む中、医療従事者の働き方改革や賃金改善も重要な課題です。そのため、次回の診療報酬改定でもプラス改定が行われる可能性があります。
ただし、診療報酬の引き上げは患者の窓口負担の増加に繋がるため、物価高騰下での国民からの十分な理解が必要不可欠との意見も出ています。そのため、医療機関の経営基盤を支えつつ、患者負担にも配慮した、双方にとってバランスの取れた改定となる見通しです。
2026年度診療報酬改定に向けて医療機関経営者がやるべきこと
2026年度の診療報酬改定に向け、情報収集や自院の現状把握、収益改善などが必要です。ここでは、経営者が押さえるべき3つの対策をそれぞれ解説します。施行スケジュールや最新情報を常に把握する
2026年度の診療報酬改定は、現在まさに議論の最中です。医療機関の経営者は、最新の協議結果や決定後の施行スケジュールを常にチェックし、正確に把握しておく必要があります。
診療報酬改定に関する最新情報をいち早く押さえておくと、院内体制の整備といった改定内容に対応するための準備を、前もって進めやすいです。
自院の経営状況や現場の実態を正確に把握する
2026年度診療報酬改定では、さらなる医療DXの推進や賃金改善への対応、関連施設との連携強化などが求められる可能性があります。これらに対応するため、まず自院の現在の経営状況や、導入済みICT機器の運用状態、職員の働き方の実態などを正確に把握するのが重要です。
現状を正しく把握することで、今後行うべき具体的な対応や課題が明確になり、診療報酬改定に向けた的確な準備を進めやすくなるでしょう。
収益改善や業務効率化に向けた対応を進める
改善すべきと明確にわかっている課題については、早めに対応を始めておきましょう。たとえば、医療事務業務の効率化によるコスト削減や、レセプト分析を通じた収益改善に向けた外部サポートの導入などがあげられます。
2026年度の診療報酬改定に向けて事前に着手することで、改定後の混乱を避け、スムーズな移行が可能です。
2026年診療報酬改定に向け早期に対策しよう
2026年度診療報酬改定では、医療DXの推進や在宅医療の充実、賃金改善への対応などが主なポイントとなる見通しです。医療機関経営者は、施行スケジュールや最新情報を常に把握し、自院の経営状況や現場の実態を正確に分析することが求められます。その上で、収益改善や業務効率化に早期に着手すると、改定後に経営の安定化の実現につながるでしょう。
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