看護必要度とは?評価基準や評価方法、評価精度を高めるポイントを解説
「看護必要度の評価が正しくできているか不安」「評価漏れがないか確認したい」「診療報酬改定への対応が追いつかない」と悩む医療機関は少なくありません。
看護必要度は、急性期病床にふさわしい患者を受け入れているのか、入院患者に必要な看護量を客観的に数値化する指標です。
また、看護必要度は適切な看護師の人員配置と入院基本料の算定根拠並びに病棟機能の適切性を支える仕組みでもあります。
評価精度が入院基本料の区分に直結するため、正確な評価体制の整備は収益の安定に欠かせない経営課題として位置づけられます。
本記事では、看護必要度の基礎知識から、A・B・C項目の評価基準やⅠとⅡの違い、評価基準や評価精度を高めるための多職種連携のポイントまで具体的に見ていきましょう。
看護必要度とは
まずは、看護必要度の定義と目的、導入後の改定による変化を解説します。
看護必要度の定義と目的
看護必要度は、患者の重症度や実施した医療・看護行為、日常生活動作などを点数化して看護リソースを可視化します。
正式には「重症度、医療・看護必要度」と呼ばれ、人員配置や病床機能維持や診療報酬算定の根拠として重要な指標です。
患者ごとに異なる看護量を正確に評価すると、限られた人員を重症度の高い患者へ重点的に配置しやすくなり、ケアの質を維持しながら業務効率の向上も期待できます。
一方、評価精度が低いと、重症患者の割合が実態より少なく算出され、適正な入院基本料を確保できない可能性があります。
看護必要度は、急性期病床にふさわしい患者を受け入れているかを判断する要素であり、国が進める病床機能の分化とも深く関わる指標です。
なお、評価は患者の観察と診療記録に基づいておこなう必要があり、推測を避けて正確な観察・記録を継続できる体制が評価精度を左右します。
導入の経緯と改定による変化
看護必要度は診療報酬改定のたびに評価項目や判定基準、基準を満たす患者割合などが見直されるため、対応が遅れると算定ミスや収益低下につながる可能性があります。
これまでの改定では、手術などを評価するC項目が追加されたほか、B項目にも新たな評価軸が設けられるなど、評価の枠組みが段階的に整理・拡充されてきました。
また、従来の看護師による評価をおこなう「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」に加え、A項目・C項目をデータから評価する「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」が導入されました。B評価を看護師が評価するのは同じです。
令和2年度以降は「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」の要件化も段階的に拡大し、評価の客観性向上や入力負担の軽減が進められています。
一方、正確な評価にはシステム設定や職種間の情報共有が欠かせず、最新の評価基準に合わせた院内ルールやシステムの見直しも求められます。
令和8年度改定では、B項目の測定に係る負担軽減の観点から、現行どおり毎日測定するか、入院5日目以降の測定頻度を7日ごとに1回(患者の状態に明らかな変化が生じた場合を除く)とし、それ以外の日は直近の評価をもって代替することも可能とされました。しかし、正しく患者の状態を知るためには毎日測定したほうが良いでしょう。
なお、令和8年度の改定では、救急車の受入れ台数を指数に変換して、重症度医療・看護必要度の基準を判定することになりました。
参考:株式会社健康保険医療情報総合研究所「重症度、医療・看護必要度は何のため?(第2回/全8回)」
看護必要度の評価基準
ここでは、A項目・B項目・C項目それぞれの評価内容と運用時の注意点を解説します。
A項目|実施した処置・医療行為を評価する
A項目は創傷処置や呼吸ケア、注射薬剤・シリンジポンプ・輸血の管理、専門的な治療・処置、救急搬送後の入院などの医療行為を評価し、急性期医療の実施状況を示す指標です。
「注射薬剤3種類以上の管理」には対象外となる薬剤や評価日数の上限といった規定があり、担当者全員が最新の基準を理解し、日々確認する取り組みが必須です。
2026年度診療報酬改定では、「専門的な治療・処置」の評価対象が見直され、「抗悪性腫瘍剤の使用」をはじめとする対象治療や薬剤が追加・拡充されました。
評価漏れを防ぐには、改定内容に合わせた院内ルールやシステム設定の更新に加え、他職種が評価の情報を収集する体制が重要です。
参考:厚生労働省「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票 評価の手引き」
B項目|患者の日常生活動作の状態を評価する
B項目は、患者の日常生活動作(ADL)の状態と介助の実施状況を評価する項目です。
寝返りや移乗、口腔清潔、食事摂取、衣服の着脱、診療・療養上の指示が通じるかどうかの患者状況、危険行動の有無などが評価対象です。
介助が必要でも評価日に実際の介助がなければ0点となる項目があるため、「患者の状態」と「介助を実施した事実」の両方を正確に記録する必要があります。
特に、「危険行動」のように判断が難しい項目は、評価者によるばらつきが生じやすい傾向です。
また、医師の指示による動作制限は評価のばらつきを防ぐため、「評価の手引き」に沿って判定するように院内で基準を統一しましょう。
さらに、急性期一般入院料1など一部の病棟区分ではB項目が評価対象外となるため、自院の施設基準に応じた運用が求められます。
C項目|手術や急性期特有の医療行為を評価する
C項目は、開頭・開胸・開腹手術や全身麻酔手術、救命に係る内科的治療など急性期特有の医療行為を評価し、手術ごとに評価対象期間が定められています。
評価はレセプト電算処理システム用コードを用いるため、コード設定や入力ミスは評価漏れに直結します。
また、手術ごとに評価期間が異なるため、担当者の記憶だけで管理すると対応漏れが発生しやすい点にも注意が必要です。
外科系診療科・看護師・医療事務が情報共有できる体制を整え、診療報酬改定時にはシステム設定や院内ルールを更新し、自動管理も活用して評価精度を維持しましょう。
看護必要度の種類
看護必要度には「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」と「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」「救急医療指数」の評価方式があります。
ここでは、それぞれの特徴や違い、運用上のポイントについて解説します。
重症度、医療・看護必要度Ⅰ
重症度、医療・看護必要度Ⅰは、院内研修を受けた看護師が患者の状態や実施した看護行為を直接確認し、評価・入力する方式です。
A項目の一部はレセプト電算処理システム用コードを用いて評価し、C項目はⅠ・Ⅱともにレセプト電算処理システム用コードで評価します。
現場の状況をリアルタイムで反映しやすい一方で、評価者ごとの判断にばらつきが生じやすいため、研修の実施や評価基準のマニュアル化が欠かせません。
また、評価・記録の業務が看護師の日常業務に加わるため、担当者が変わっても評価精度を維持できるよう、運用を標準化しておく必要があります。
Ⅰを継続して採用する場合も、定期的な院内研修や評価基準の見直しによって、評価精度を維持しやすくなります。
令和8年度診療報酬改定から急性期一般病棟等では、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合 に 救急搬送応需係数を加え、基準患者割合に係る指数(割合指数)を算出することになりました。
重症度、医療・看護必要度Ⅱ
重症度、医療・看護必要度Ⅱは、看護師の測定負担軽減と、手集計と診療実績データとの乖離を少なくするために、B項目を除くA項目・C項目をレセプト電算処理システム用コードで評価する方式です。
診療実績データをもとに評価がおこなわれるため、評価者による判断のばらつきを抑えやすい特徴があります。
看護師による評価・入力の工数を削減できる一方で、レセプトデータの入力ミスや記録漏れが評価結果へ直接影響するため、Ⅰとは異なるリスク管理が求められます。
評価精度を維持するには、医師・看護師・医療事務の情報連携体制を整え、「誰が・いつ・どの情報を共有するか」というフローを明確にしておきましょう。
また、入院料区分のうち、200床以上の急性期病院(急性期一般入院料1)では看護必要度Ⅱが原則義務化されています。
今後も義務化が進む方向にあるため、Ⅰを採用している医療機関も移行を見据えた体制整備を進めておくとよいでしょう。
移行時はシステム設定の確認、多職種連携フローの整備、移行前後の評価精度の段階的な検証が重要です。
救急医療指数
令和8年度診療報酬改定により、救急車搬送台数も急性期病院の看護必要度に反映させると設定されました。計算式は、1病床あたりの救急搬送受入件数/年 ×0.005 です。上限は10%です。算定可能な病床は、次のとおりです。
急性期一般入院基本料(1~5)
看護・多職種協働加算
7対1入院基本料(特定)
急性期総合体制加算
地域包括医療病棟入院料
看護必要度の評価方法
ここでは、評価対象期間・評価対象場所・評価者の要件について解説します。
評価の対象期間
A項目・B項目・C項目は毎日評価し、評価対象時間は原則として0時から24時までの24時間です。
外出・外泊や検査、手術などで24時間の観察ができない患者でも、病棟に在棟していた時間があれば評価対象となるため、在棟時間を正確に管理・記録する必要があります。
また、退院日は0時から退院時までが評価対象となるため、退院日の評価漏れには注意が必要です。
退院日や外出・外泊日など通常と異なるケースは見落としやすいため、対応手順をマニュアル化して院内で共有しておくと評価漏れを防ぎやすくなります。
担当者が変わっても一定の評価精度を維持できるよう、運用ルールを院内研修へ組み込んでおきましょう。
評価の対象場所
評価対象となる場所は、原則として当該病棟内であり、当該病棟以外で実施された治療・処置・看護・観察は、基本的に評価対象にはなりません。
ただし、A項目・C項目の一部には、病棟外を含む医療機関内での処置や手術を評価対象とする例外があるため、対象となるケースを明文化し、判断基準を統一しておきましょう。
特に病棟外で実施した処置は担当者によって判断が分かれやすいため、医師・看護師・医療事務が共通認識を持てる判断フローの整備が重要です。
例外規定は見落としやすいため、疑義が生じた場合の確認ルートをあらかじめ決めておくと、評価漏れや過剰評価、レセプト査定のリスクを抑えやすくなります。
評価者の要件
看護必要度は、院内研修を受けた職員が評価をおこなう必要があります。
看護師だけでなく、医師・薬剤師・理学療法士などが一部項目の評価に関わる場合も、院内研修の受講が必須です。
評価者の要件管理が属人化すると、要件を満たさない職員による評価が発生する恐れがあるため、研修受講者の記録管理と未受講者への対応フローを整備しておきましょう。
また、スタッフの入職や異動に合わせて受講状況を定期的に確認・更新しておくと、評価体制を継続的に維持しやすくなります。
A項目では、医師が単独で処置をおこなった後に当該病棟の看護職員が処置内容を確認し、実施記録を残した場合も評価対象となるため、運用ルールの共有が必須です。
評価者の要件を仕組みとして管理しておくと、適時調査や監査の際にも要件を満たしている根拠を示しやすくなり、医療機関のリスク管理にも役立ちます。
評価精度を高めるためのポイント3つ
ここでは看護必要度の評価精度を高めるための3つのポイントを解説します。
①職種間の情報連携体制の整備をおこなう
看護必要度の評価は看護師だけで完結せず、医師・薬剤師・理学療法士・医療事務など多職種が関わる情報をもとに評価します。
各職種が「自分の業務が看護必要度の評価につながる」という共通認識を持てるよう、評価項目と役割を院内研修やカンファレンスで定期的に共有しましょう。
また、「誰が・どの情報を・いつ・誰へ伝えるか」という連携フローを明文化し、電子カルテや院内システムで実施記録をリアルタイムに共有できる環境の整備も重要です。
情報共有の漏れを防ぐと評価ミスを減らせるだけでなく、患者の状態変化にも迅速に対応しやすくなり、医療の質と病院経営の安定を両立しやすくなります。
医療事務におすすめの研修については下記の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。

②評価漏れ・反映漏れが起きやすい状況を確認しておく
処置や検査においては、運用ルールの整備や確認が重要です。
たとえば、医師が単独でおこなった処置や検査、理学療法士による体位ドレナージやスクウィージングなどの呼吸ケアが共有されず、評価漏れにつながるケースがあります。
そのため、処置や検査を実施した際は、看護師や医療事務へ確実に情報共有する運用ルールの整備が重要です。
また、急な処置や患者状態の変化があった日は評価内容の修正・追加が発生しやすいため、特殊なケースの対応手順を院内で標準化しておく必要があります。
勤務終了前に当日の評価内容を見直す習慣を定着させ、リーダー看護師などによるダブルチェックを組み合わせて、個人の見落としを防ぎましょう。
評価漏れや算定誤りが気になる場合は、全件システムチェックとカルテ突合調査を組み合わせたソラストの「診療報酬請求精度調査」の利用も検討してみてください。
③診療報酬改定への継続的な対応体制を整える
看護必要度は診療報酬改定のたびに評価項目や判定基準、患者割合の基準が見直されるため、院内ルールやシステム設定、スタッフへの周知を迅速に更新できる体制が重要です。
改定情報の収集を特定の担当者だけに任せるのではなく、情報共有や院内研修の実施時期まで含めた運用フローをあらかじめ決めておくと、改定後の混乱を防ぎやすくなります。
また、改定後は電子カルテやシステム設定を必ず見直し、評価ミスや算定誤りの防止も欠かせません。
看護必要度は、国が「急性期病床にふさわしい患者を受け入れているか」を評価する指標であり、基準の厳格化には病床機能の分化と医療費の適正化を進める目的があります。
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