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医療事務

開業医と勤務医どちらを選ぶ?年収・働き方の違いと成功のポイントを解説

公開日/2025.07.17 更新日/2025.10.17

医師の働き方には、「開業医」と「勤務医」の大きく2種類があります。今回は、開業医と勤務医を比較し、年収や働き方、仕事内容の違いから、メリット・デメリット、向いている人の特徴まで詳しく解説します。開業医として成功するためのポイントも紹介するので、開業をお考えの方はぜひ最後までご覧ください。

開業医とは?

開業医とは、診療所や病院を自分で経営している医師を指します。主な標榜科目は内科や小児科、消化器内科などであり、かかりつけ医として継続的に来院者を確保しやすい診療科が一般的です。

開業医の形態には、自分で一から開業する「新規開業」と親族や第三者から経営を引き継ぐ「継承開業」の形態があります。

なお、2022年の厚生労働省の調査によると、病院と診療所の開業医の合計人数は75,611人(※)でした。医師の総数に対する開業医の割合は約22%に上っています。

参考:厚生労働省「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

※開業医の合計人数=「病院(医育機関附属の病院を除く)の開設者又は法人の代表者」+「診療所の開設者又は法人の代表者」にて算出

開業医と勤務医の違いは?

項目 開業医 勤務医
立場と責任 医院経営者として経営判断や最終責任を負う 雇用される医師として診療に専念できる
平均年収 約2,600万円台(経営状況による変動あり) 約1,300万円台(安定した給与収入)
業務範囲 診療+経営業務(集患・人事・経理など) 主に診療業務と医療技術の向上に集中
自由度と裁量 診療方針や設備、勤務時間を自分で決定できる 勤務先の方針や規則に従う必要がある

開業医と勤務医の主な違いは、立場や責任、業務範囲などにあります。以下で詳しい内容を見てみましょう。

働き方・業務の違い

病院の常勤勤務医の週労働時間は、週50時間未満の割合が55.2%、週50時間以上の割合が44.9%でした。これに対して、開業医の1週間の労働時間を見てみると、週50時間未満の割合は64%、週50時間以上の割合は36%です。

この結果から、開業医の方が1週間の合計労働時間が少ないことがわかります。勤務医の労働時間は年々改善傾向にあるものの、4割以上の勤務医は週50時間以上の労働を行っています。

開業医は自ら経営者として診療方針を決定でき、手術を行うことが少なく時間外労働も比較的少なめです。一方、勤務医は患者さんの診察よりも手術などの技術的な仕事が多く、緊急時には勤務時間外でも対応することもあります。

ただし開業医の場合、1週間の合計労働時間は勤務医よりも少ない傾向ですが、診療以外に経営や人材管理など、多岐にわたる業務を行う必要があります。

厚生労働省「医師の勤務実態について」

東京保険医協会「開業医の働き方実態調査」

年収の違い

開業医の平均年収は約2,600万円であるのに対して、病院勤務医の平均年収は約1,300万円、診療所勤務医の平均年収は約1,000万円です。平均年収を比べると、開業医は病院勤務医の約2倍、診療所勤務医の約2.6倍の収入を得ています。

ただし、開業医には、経営に関わる諸経費等がかかります。この場合、個人事業か、法人かによって計上可能な範囲が異なるため注意しましょう。一般的に医療法人の方が、個人事業主よりも、経費として認められる範囲は広いです。

また、開業医の医業収益を診療科ごとに比べた場合、産婦人科や外科、整形外科などは比較的収益が高い傾向にあります。

中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」

厚生労働省「医療経済実態調査」

開業医になる5つのメリット

開業医という働き方には、上記のようなメリットがあります。収入面や働き方などはもちろん、医師として感じられるやりがいなど、勤務医との違いを踏まえて見ていきましょう。

収入が大幅に上がる可能性がある

開業医になるメリットの一つは収入です。前述した通り、開業医の平均年収は約2,600万円で、病院勤務医の約2倍、診療所勤務医の2.6倍の収入を得られる可能性があります。診療科目や開業する地域によっては、さらに収入が多くなることも考えられるでしょう。

経営が軌道に乗れば勤務医の約2~3倍の収入も可能であり、努力が直接収益に反映されるといえます。加えて、自由診療の導入など保険診療外のサービスを提供することで、さらなる収入増加を図れます。

業務の自由度が高まる

開業することで、さまざまな面で自由に仕事できるようになる点も魅力です。診療方針や治療法、使用する医療機器や薬剤を自分の裁量で決定できるようになります。

さらに、診療時間や休診日についても、患者層に合わせて経営者である開業医本人が柔軟に設定可能です。勤務医時代のように病院の方針に縛られず、自分が理想とする医療サービスを追求し、提供できるようになるでしょう。

組織運営の裁量を持てる

開業医はスタッフの採用や配置、評価など人事面での決定権も持つため、理想のチーム構築が可能です。勤務医の立場ではコントロールが難しい、医局などでの人間関係の不満・ストレスから解放されるメリットがあります。

また、クリニック内の設備や内装、雰囲気づくりなど環境面も自分の考えに合わせて設計できます。この点も開業のひとつの醍醐味でしょう。

地域医療に貢献できる

開業医ならではの特徴として、地域の特性やニーズに合わせた医療サービスを提供し、地域住民の健康維持に貢献できる点も挙げられます。他の医療機関や介護施設と、患者さんの紹介・逆紹介をする連携体制を構築することで、地域の医療ネットワークの一翼を担えます。

また、健康セミナーの開催などを通じて地域の健康意識向上に寄与することも可能です。勤務医に比べて地域により近い位置で接することができ、地域医療への貢献や地域住民からの信頼にもつながるでしょう。

強いやりがいを感じられる

開業医は自分で決めた独自の医療理念に基づいて診療でき、それが患者さんの健康改善に貢献しているのを実感することで、強いやりがいを感じられます。

勤務医と比べて患者さんとの距離が近く、直接感謝される機会も増えるため、自分の医療活動の意義を実感しやすくなるでしょう。

自分の努力が診療の質向上や患者満足度、収益にダイレクトに反映されるので、努力の成果が目に見えて達成感を味わいやすくなります。

勤務医にはない開業医の苦労・デメリット

・自ら集客(集患)する必要がある
・休業により収入が減ってしまうリスクがある
・診療以外の業務が多い
・責任が大きくなる
・人事面の問題が難しい

開業すると、診療以外に経営者としての業務が増え、集患や広告宣伝、労務管理など多岐にわたる業務を担当しなければいけません。開業医自ら集客のための活動を進め、地域住民からの信頼獲得や集患を行うことが求められます。

また、クリニックを休診した場合はその分診療を行えず、収入が減ってしまうケースもあります。給与収入で安定した収入を得られる勤務医に比べて、クリニックの診療日数に応じて収入が不安定になることもあるでしょう。

さらに、医療ミスや患者さんとのトラブル、クレーム対応などの責任があるだけでなく、クリニック経営の安定化や借入金返済などの経済的な責任とプレッシャーを感じることもあります。スタッフとの人間関係構築や採用の問題、人材マネジメントなど人事面での課題に直面することもありえます。

ただ、これらの課題はいずれも医療以外で経営の新たなスキルや知識を習得するチャンスになり、人としての成長につながるでしょう。

開業医に向いている人の特徴

・経営に興味がある
・診療以外の雑務もこなせる人
・地域に密着した医師を目指している
・自己管理能力が高い人
・コミュニケーション能力が高い人

医業だけでなく経営にも興味がある人は、開業医として活躍できる可能性が高いです。経営に伴って発生する雑務も難なくこなせるでしょう。

また、地域に密着し患者さんから信頼される医師を目標としている人は、開業医を目指すことで実現に近づきます。開業医は基本的に代診を誰かに頼めるわけではないため、常に体調を整える必要があります。さらに、新しい医療を学び続けるという点でも自己管理能力が高い人が向いているといえます。

開業医になるための2つの方法

特徴 新規開業 承継開業
開業方法 ゼロから新しく医院を開業する 既存の医院を受け継ぐ
初期投資 多額の開業資金を準備する必要がある 新規開業より少ない資金で開業できる
自由度 立地や設備、診療方針をすべて自分で決定できる 既存の設備や診療スタイルを引き継ぐため自由度は低い
患者基盤 開業当初は患者ゼロからのスタート 既存の患者基盤があり、最初から安定した経営がしやすい
人間関係 一からスタッフを採用できる 既存スタッフとの関係構築が課題となる

開業医には、完全に一から開業する「新規開業」と既存の医院を受け継ぐ「継承開業」の2種類があります。その違いについて以下で詳しく解説します。

新規開業

新規開業は、ゼロから新しく医院を開業する方法です。クリニックの立地選定から内装工事、設備導入まで、すべてを自分で決定できるメリットがあります。

自分が理想とする医院づくりができる一方で、開業当初は軌道に乗らず経営的に苦しい時期を経験することが多いのも特徴です。立地選定や集患対策など準備段階での戦略が成功を左右するため、十分な準備期間を確保することが欠かせません。

開業する立地、医院で使用する医療機器の選定によっては、1億円以上など非常に高額の開業資金を準備する必要があります。借入と返済計画も含めて、慎重な資金計画が重要です。

承継開業

継承開業は既存の医院を受け継ぐ開業方法です。親子間での承継だけでなく、第三者からの承継も増加傾向にあります。

新規開業より少ない資金で開業でき、既存の患者基盤もあるため、最初から安定した経営がしやすいのが特徴です。

ただし、設備や患者さんをそのまま引き継ぐため、新規開業より自由度は下がり、既存の診療スタイルを一定程度維持する必要があります。スタッフも引き継ぐ場合は、既存スタッフとの関係構築が重要な課題で、良好な関係づくりが成功の鍵です。

開業医として成功するための5つのポイント

開業医として成功するためには、上記のようなポイントを押さえることが必要です。具体的な方法については以下で紹介します。

開業前に念入りに準備をする

開業初期の失敗を防ぎ、安定した経営基盤を構築するためには綿密な事前準備が不可欠です。とくに、集客が見込めそうな立地の選定や、事前に地域住民へのPRをするなどの宣伝活動は、収益に大きく関わります。

開業に伴う多額の投資を効果的に活用し、早期の収益化を目指しましょう。具体的には下記のような項目について事前の準備を進めます。

具体例:
・立地調査と競合分析を行い、患者さんのニーズの高いエリアを選定する
・資金計画を立て、開業コストと運転資金を明確にした融資を受ける
・診療科目に適した医療機器を選定し、効率的な設備投資を行う
・開業前から地域住民へのPRと医療機関との関係構築を進める
・優秀なスタッフを事前に確保しておく

患者さんとの信頼関係を構築する

患者さんとの信頼関係構築によってリピート率を高めることで、安定した収益基盤の確立と長期的な経営安定につながります。また、患者さんからの紹介や口コミによる新規患者獲得は、広告よりも効果的かつ、費用対効果が高い集患方法です。

日頃から丁寧な対応や質の高い医療の提供を徹底し、受診しやすいシステムの構築などを進めましょう。このほか、問診票にアンケート欄を加えるなどして患者さんの意見を聞き、今後の経営に活かすことも大切です。

具体例:
・丁寧な問診と分かりやすい説明で患者さんの不安に寄り添う
・オンライン予約システムで待ち時間を短縮する
・定期的な健康情報発信で継続的な関係性を構築する
・患者さん向けのアンケートを実施しサービス改善に活かす
・スタッフ全員の統一した接遇マナーを徹底する

スタッフマネジメントを欠かさない

スタッフの定着率向上とモチベーションの維持は、診療の質とサービスレベルを保つために重要です。定期的にスタッフと面談を行い、スタッフにとって働きやすい環境を整え、院内の良好な人間関係を維持できるようにしましょう。

また、院長一人ですべての業務をこなすことは不可能です。任せられることは優秀なスタッフに任せ、協力体制を築くことが経営の安定につながります。

具体例:
・定期的な面談でスタッフの成長を支援する
・適切な業務分担と権限委譲でスタッフの能力を活かす
・スタッフの意見を取り入れた職場環境づくりを行う
・継続的な研修で専門知識とスキル向上を支援する
・成果に対する適切な評価と報酬制度を設ける

集患・マーケティング戦略を実行する

患者数の確保は収益の基盤であり、継続的な集患活動なしでは経営の安定が図れません。とくに、ホームページやチラシのポスティング、Web広告や看板の設置などは効果的な方法です。

また、セミナーの開催や季節に合わせた情報発信も、クリニックや医師について知ってもらう機会となります。地域で選ばれるクリニックになるために、自院の魅力を発信して地域での認知度を高めるマーケティング活動は必須です。

具体例:
・SEO対策したホームページとSNSで認知度を高める
・地域住民向け健康セミナーで潜在患者との接点を作る
・近隣医療機関との連携で紹介患者を増やす
・季節性疾患に合わせたタイムリーな情報発信を行う
・クリニックの特色を明確にしたチラシでターゲット層にアプローチする

他院しつつ差別化をする

他の医療機関との良好な関係構築や連携は、医療の質向上のためだけでなく、新たな患者さんを獲得する点においても重要です。他院で患者さんを紹介する際、自院を紹介してもらえる可能性があります。医師会への参加も横のつながりを作るきっかけとなるでしょう。

一方で、競合の多い医療市場で選ばれるためには、自院ならではの強みを見出すことが不可欠です。

具体例:
・最新医療機器導入や専門診療特化で独自ポジションを確立する
・患者ニーズに応える診療時間設定で利便性を高める
・オンライン診療など新しい診療スタイルを取り入れる
・地域の医療機関との連携会議で信頼関係を構築する
・自由診療メニューで収益源の多様化を図る

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著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

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