患者さんが少ないクリニックは儲からない?原因や必要な集患対策を紹介
待合室に患者さんがいない状況が続くと、「このまま経営を続けられるのか」と将来への不安が募るものです。しかし、現状を正しく分析し対策を打てば、状況は好転できる可能性があります。本記事では根本原因を整理し、今すぐ取り組むべき集患の具体策を解説します。安定経営への一歩を、ここから始めましょう。
患者さんが少ないクリニックは儲からないのか?
患者数が少ないと得られる診療報酬もその分少ないため、「患者数を増やすことが大事」と思う医療機関の経営者もいるでしょう。しかし、今後の診療報酬改定や政府の取り組みを踏まえると、安易に患者数を増やす対応だけでは危険を伴う可能性があります。ここでは、患者数とクリニックの収益の関係性について紹介します。
制度改定で変わるクリニックの機能・役割
2026年度の診療報酬改定により、医療機関の機能分化が加速しています。外来機能の見直しでは、頻回受診の抑制や患者負担の増加、OTC類似薬の自己負担化の議論が進められており、2030年に向けた地域医療構想でも役割分担が重要視されています。
こうした背景から、今後は「再診率を上げ、頻回受診を増やす」という従来モデルだけでは経営が厳しくなると予測されます。制度の転換期には「質の高い医療の提供」と「新規患者を安定的に確保する効率的な集患対策」の両立が、安定したクリニック経営の鍵となるでしょう。
今後クリニックに求められる対応
今後クリニックに求められる役割は、「慢性疾患の継続的な管理」と「かかりつけ医機能の強化」です。外来患者数が減少傾向にある現在、在宅医療の充実を図り、地域に根ざした医療を提供することが不可欠といえます。
また、専門病院からの「逆紹介」をスムーズに受け入れる連携体制や、患者さんが必要なときに相談できる環境を整備することも大切です。一方で、紹介に伴う医療機関間の調整など事務作業の負担増が懸念されるため、医療事務派遣やレセプト業務のリモート代行など、外部サービスの活用も検討するとよいでしょう。
重ねて、安定経営を実現するためには、オンライン診療や予約システムなどの導入でDX化を推進し、患者さんの利便性と満足度を高めることが重要といえるでしょう。
極端に患者さんが少ないのは集患対策が不十分な可能性も
今後の診療報酬改定の動向を踏まえると、単に患者数を追ったり、頻回受診を促したりするだけの対応は、賢明ではありません。しかし、現状で極端に患者数が少ない場合は、集患対策そのものが不十分である可能性が高いです。
まずは、地域住民にクリニックの存在を認知してもらうことを心がけましょう。そのうえで、かかりつけ医として安心して通える信頼関係と、Web予約など利便性の高い受診環境を整える「選ばれる努力」が不可欠です。
クリニックの患者さんが少ない原因
クリニックの患者さんが少ない原因はさまざまです。ここでは、よくある事例をご紹介します。心当たりがないか確認してみましょう。
立地条件や競合との差別化ができていない
・車移動がメインの地域なのに、駐車場がない・極端に少ない
・周囲に同じ診療科目のクリニックがあり、患者さんに来てもらえない など
競合がひしめく地域では、駅や主要道路からのアクセスの良さが受診の決定打となりやすいです。立地が悪ければ、通院のハードルは自ずと高まってしまうでしょう。
また、診療内容や接遇面に独自性がなければ、患者さんはより魅力的な他施設へと流れてしまいます。ただ、今後は「外来医師多数区域」での新規開業制限や在宅医療の義務化といった都市部の開業規制が検討・推進されているため、既存施設にとって、むやみな競合増加の懸念が減る可能性がある点は安心材料といえます。
オンライン・オフラインのマーケティングができていない
・Webサイトの更新が止まっていると、「本当に今も診療しているのか」という不信感や不安を患者さんに与えてしまう
・看板が目立たなかったり、チラシ配布や内覧会などの広報活動が一切なかったりすると、すぐ近くに住むターゲット層にさえ存在を知られない など
オンラインマーケティングとは、WebサイトやSNSを用いたデジタル戦略、オフラインマーケティングはチラシや地域活動など実社会での広報を指します。現代ではホームページが未整備、あるいは情報が更新されていないと、患者さんは不便や不安を感じ、受診を控えてしまいます。
また、地域イベントやチラシといったオフラインの活動が不足すると、近隣住民にさえ認知されません。広告規制を過度に恐れ情報発信が希薄になることも、機会損失を招く大きな原因です。
患者さんにとっての利便性が低い
・順番待ちシステムがなく、あとどのくらいで呼ばれるか分からないため、院内での「拘束感」や「感染リスク」への強い不満に繋がっている
・キャッシュレス決済が普及する中で、わざわざ現金を用意する手間がかかることが、患者にとって大きな心理的・物理的負担となっている など
患者数が伸び悩む背景には、受診の「手間」が大きな壁となっているケースがあります。たとえば、予約が電話のみでWEB予約に対応していないケースです。また、待ち時間が極端に長いといった運営上の不備も、患者さんの不満に直結します。
さらに、キャッシュレス決済への非対応や、多忙な現役世代が通いづらい診療時間設定など、現代のニーズとの乖離も深刻です。利便性の低さは、他院への流出を招く決定的な要因となります。
患者さんとのコミュニケーションが不足している
・専門用語ばかりで一方的に診療を終えてしまったり、患者さんの疑問や不安に寄り添わない姿勢を取ったりすると、「親身になって診てもらえていない」という不満に直結する
・接遇への不満が口コミサイトに書き込まれ、それに対して改善の姿勢や誠実な返信が見られないことで、新規患者に「評判の悪いクリニック」と認識されてしまう など
診療技術が良くても、スタッフの接遇や医師の説明不足は患者さんの離脱を招く大きな要因です。受付の対応が冷たかったり、案内が不親切だったりすると、患者さんは「大切にされていない」と感じてしまう可能性もあります。
また、現代では不満がSNSやネットの口コミで瞬時に拡散されやすく、一度ついた悪評は新規患者の足を遠のかせます。信頼関係を築けない環境は、再診率を著しく低下させる深刻な原因となり得るでしょう。
【広報編】患者さんが少ないクリニックが行うべき対策3選
患者さんが少ないクリニックでは、対策が欠かせません。ここでは、広報に関する対策をご紹介します。
ホームページ改善やSEO・MEO対策を行う
ホームページはクリニックの顔です。情報を充実させ常に最新に保つことは、患者さんの安心感に直結します。
また、検索や地図上で上位表示を狙うSEO・MEO対策(マップエンジン最適化)も重要です。「地域名+診療科目」での露出を増やすことで、新規獲得の可能性が大きく広がります。近年のスマートフォン需要にあわせて、スマートフォンでも見やすいサイト設計もセットで検討しましょう。
・ホームページを作成し、常に最新の情報に保つ
・SEO対策を行い、検索エンジン上で上位表示を目指す
・MEO対策を行い、地図検索での上位表示を目指す
SNSを活用して認知拡大を図る
SNSでクリニックの日常や医療情報を発信することは、親しみやすさを伝え、認知を広げる有効な手段です。とくに、若年層がターゲットの場合に高い効果を発揮します。
もし、自院での運用が負担であれば、外部委託を活用するのも一つの手です。有益な情報を継続的に投稿し、地域住民の「いざというときの選択肢」に入ることを目指しましょう。
・流行中の病気の予防法や季節ごとの健康管理術など、専門家ならではの有益な情報を届ける
・診察室の様子やスタッフの紹介を通じて、クリニックの雰囲気を見せる
・予約の空き状況やワクチンの在庫、急な休診案内などをリアルタイムに発信する
地域でのオフラインの広報活動を行う
オンラインのみならず、地域住民に直接届く広報も重要です。地元の健康イベントへの参加やチラシ配布は、クリニックを身近に感じてもらう絶好の機会となります。地域密着の姿勢を多角的なチャネルで示し、自院の魅力を丁寧に伝えることで、デジタル層以外からの信頼も獲得でき、より盤石な集患基盤を築けるでしょう。
・ネット検索をあまり利用しない高齢者層が多い地域へのポスティングや、人通りの多い場所への野立て看板設置により、生活圏内での視認性と認知度を高める
・地域の医療・介護関係者と連携し、パンフレットを置かせてもらうなど、相互に紹介し合えるネットワークを構築して、口コミ以外の流入経路を作る
【接遇・DX編】患者さんが少ないクリニックが行うべき対策4選
患者さんが少ないクリニックでは、接遇・DXに関する対策も重要です。今一度、自院の環境を見直してみましょう。
患者さんが通いやすい院内環境に整える
待合室の座席配置を工夫し、患者さんがリラックスできる空間を整えましょう。バリアフリー化や親子専用スペースの設置といった配慮は、患者さんの通院のハードルを下げます。
また、スマートフォンで待ち時間を知らせるシステム等の導入で、院内の滞在ストレスを減らす工夫も重要です。感染症対策も意識し、清潔で快適な環境づくりが再診を促す大きな要因となります。
・スマートフォンでリアルタイムに待ち時間を確認できるようにする「順番待ちシステム」を導入することで、院内での「拘束感」や「感染リスク」への不安を解消する
・キッズコーナーや授乳室の設置、バリアフリー化による車椅子・ベビーカー動線の確保など、通院に負担を感じやすい層が気兼ねなく受診できる環境を整える
・患者同士の視線が合わない座席配置や、テレビ、情報提供モニターなどを設置して待ち時間を苦に感じさせないとともに、落ち着いた空間を作る
スタッフの対応力・コミュニケーション能力の向上を図る
接遇力は、クリニックの印象を左右する大きな鍵です。院外の講座や研修の利用を基本とした継続的な研修で対応力を磨き、患者さんの不安に寄り添う姿勢を徹底しましょう。
また、スタッフ間の連携を強化し、円滑な業務遂行を実現することも不可欠です。スタッフ間の不和は患者対応に直接影響するため、スタッフ個人に原因を求めるのではなく、「仕組みのどこに問題があったか」を院内で考える風土を築きましょう。プロセスや仕組みに着目し「どのように起きたのか」を分析する視点が、組織内の心理的安全性を高め、結果として患者さんの信頼向上に繋がります。
・挨拶や電話対応、クレーム発生時のフローなどを明確に言語化したマニュアルを作成し、定期的な勉強会を通じてスタッフ全員が同じ基準で質の高い対応ができる体制を整える
・受付や会計、問診時など、実際の現場で起こりうるシーンを想定した演習を行い、スタッフ間で客観的にフィードバックし合うことで、患者さんの不安に寄り添う「言葉選び」や「表情」を磨く
・一日の中で数分間の朝礼等を、情報共有のための「クーリングタイム」として取り入れる。スタッフ同士の感謝を伝える仕組みや、患者さんからのお褒めの言葉を共有する場を設けることで、良好なチームワークを醸成し、それが自然と患者さんへの誠実な対応へと繋がる好循環を作る
口コミやアンケートの意見を業務に反映する
口コミは経営への影響力が大きいため、寄せられた意見を真摯に受け止め改善に繋げることが重要です。問診票等でのアンケートも、有効な改善材料となります。
ただし、これらは書き手の感情に左右されやすいため、単なる言いがかりか改善すべき意見かを見極める精査が必要です。患者さんの声に耳を傾けつつ、客観的に運営の質を高めましょう。
・ネット上の口コミに対し、感謝や改善の意思を込めて一件ずつ丁寧に返信し、実際に改善した事項は「患者さまの声を受けて実施しました」と院内に掲示することで、真摯な姿勢を可視化する
・満足度を5段階評価などで点数化して集計し、毎月のスタッフ会議で共有・分析することで、主観に頼らない客観的な課題抽出と、優先順位に基づいた具体的な改善アクションを決定する
・寄せられた意見を冷静に精査するための内部基準を設け、悪意のある誹謗中傷には毅然と対応しつつ、業務上の不備への正当な指摘については即座にオペレーションの見直しやマニュアルの修正に反映させる
予約システムやオンライン診療を導入し、利便性向上を目指す
オンライン予約システムの導入は24時間予約を可能にし、患者さんの受診のハードルを大幅に下げます。スムーズに次回予約が取れる環境は再来院率の向上に直結し、安定した経営にもつながるでしょう。
また、電話対応が減ることでスタッフの業務負荷も軽減されます。デジタル化による利便性向上が患者さんだけでなく、従業員満足度も高める重要な一手となるでしょう。
・スマートフォンから夜間や休日でも即座に予約が取れる体制を整え、電話予約の手間を省くことで、日中忙しい現役世代の受診ハードルを大幅に下げる
・予約日の前日にメールやSNSでリマインドを自動送付し、患者さんの「うっかり忘れ」によるキャンセルを防ぐとともに、定期的な受診が必要な層の継続的な通院をサポートする
・症状が安定している再診患者さんや、仕事・育児で通院が困難な層に対し、ビデオ通話での診察・決済を導入することで、利便性を飛躍的に高め、他院への流出を防止する
患者さんが少ないクリニックのよくあるQ&A
ここでは、患者さんが少ないクリニックに関する疑問をQ&A形式で解説していきます。お悩みのクリニック経営者さまや開業医さまは、ぜひ参考にしてください。
Q.クリニックの1日の平均患者数はどれくらい?
厚生労働省の調査によると、クリニックの1日あたり患者数は約34〜41人が目安とされています。ただし、この数値は全体の平均であり、内科や耳鼻咽喉科など、診療科によって大きな差がある点に注意が必要です。
自院の状況を把握する際は、平均値を一つの指標としつつ、科目ごとの特性も加味して客観的に判断するのがよいでしょう。
参考:e-Stat「医療施設調査 令和5年医療施設(静態・動態)調査 全国編 第147表 一般診療所の患者数,診療科目(単科)・病床の有無別」
参考:e-Stat「医療施設調査 令和5年医療施設(静態・動態)調査 全国編 第142表 一般診療所数(重複計上),開設者・診療科目・病床の有無別」
Q.1日にどのくらいの患者さんが来れば経営が安定する?
患者数のみで経営の安定を判断するのは危険です。クリニックにより賃料や人件費、医療機器のコスト構造が大きく異なるため、一概に「〇人なら安心」とはいえません。
まずは自院の損益分岐点を正しく把握し、収支の最適化を図ることが不可欠です。具体的な経営分析や改善には、専門家への相談も非常に有効な手段となります。
Q.患者さんが1日に50人・100人来るクリニックは必ず儲かる?
患者数が多いほど診療報酬は増えますが、単に数を追うのはNGです。今後は過度な再診が「頻回受診」とみなされ、査定減を招くおそれがあるためです。
また、数に頼る経営はスタッフの疲弊や質の低下を招くリスクもあります。大切なのは、質の高い医療の提供と効率的な運営の両立です。
患者さんが少ないクリニックでは、さまざまな観点からの対策が不可欠
制度改定を見据え、今後のクリニックには「医療の質」と「選ばれる努力」の両立が欠かせません。単に患者数を追うのではなく、Web活用や利便性向上、接遇改善など、多角的な視点で患者満足度を高めることが重要です。地域に寄り添い信頼を築く実直な積み重ねこそが、将来にわたる安定経営を実現するための鍵となります。
ソラストでは、医療機関経営支援サービスを中心に、経営者さまを支える多彩なサービスを展開しています。医療機関の経営者さまの状況に合わせ、集患対策や運営の適正化など、最適な支援をご提供します。経営に関するお悩みがある方は、ぜひ一度ソラストへご相談ください。


