電子カルテ情報共有サービスとは?活用で何が変わる?現状と今後を徹底解説
全国の医療機関で患者情報を共有できる「電子カルテ情報共有サービス」が、いま注目されています。今回は電子カルテ情報共有サービス導入のメリット・デメリット、今後病院経営者がやるべきことまで徹底解説します。導入を検討している病院経営者・開業医の方はぜひ参考にしてください。
電子カルテ情報共有サービスとは
電子カルテ情報共有サービスとは、全国の異なる医療機関や介護施設間で、患者さんの医療情報を安全かつ効率的に共有するためのシステムです。このサービスは、国が推進する「全国医療情報プラットフォーム」の重要な構成要素の一つに位置付けられています。
患者さん本人の同意のもと、診療情報提供書などの3文書と、傷病名・処方などの6情報をオンラインで共有します。これにより、かかりつけ医以外でも患者の正確な情報を迅速に把握でき、重複投薬や不要な検査の抑制が可能になります。
さらに、災害時や救急時にも過去の情報を参照できるため、より安全で質の高い医療提供につながります。
【参考】全国医療情報プラットフォームとは電子カルテ情報共有サービスでできること
電子カルテ情報共有サービスでは、具体的にどのような医療情報が共有できるのでしょうか。ここでは、患者さんの同意のもと全国の医療機関等で共有・閲覧できるよう医療法に定められる「3文書」と「6情報」について紹介します。
「3文書」の共有・閲覧
| 文書の種類 | 概要 |
|---|---|
| 健康診断結果報告書 | 特定検診、事業主検診、学校職員検診、人間ドッグなど |
| 診療情報提供書 | 対保険医療機関向けの診療情報提供書 |
| 退院時サマリー | 退院時サマリー ※診療情報提供書の添付(任意)としての取り扱い |
3文書とは、健康診断結果報告書・診療情報提供書・退院時サマリーの3種類の文書です。紹介状である診療情報提供書は、医療機関の間で電子的に共有されます。健康診断の結果報告書は、全国の医療機関や保険者、患者さん本人も閲覧可能です。
入院治療の要約である退院時サマリーも共有されるため、転院先などでの継続的な治療に役立ちます。これらの共有により、患者さんの詳細な情報を正確に把握できます。
「6情報」の共有・閲覧
| 情報の種類 | 概要 |
|---|---|
| 傷病名 | 診断した傷病名 |
| 感染症 | 梅毒STS、梅毒TP、B型肝炎(HBs)、C型肝炎(HCV)、HIVの分析物に関する検査結果 |
| 薬剤アレルギー等 | 医薬品や生物学的製剤などの薬剤禁忌アレルギーの情報 |
| その他アレルギー等 | 食品・飲料・環境など薬剤以外のアレルギーの情報 |
| 検査 | 臨床検査項目基本コードセット(生活習慣病関連の項目、救急時に有用な項目)で指定された43項目の検体検査結果 |
| 処方 | 処方した薬(処方箋)の情報 |
6情報とは、①傷病名 ②感染症③薬剤アレルギー④その他アレルギー ⑤検査 ⑥処方の6種類の情報です。オンライン資格確認等システムや電子処方箋管理サービスを導入することで、医療機関の間で電子的に共有されます。
これらの情報は、患者さん本人や全国の医療機関等が閲覧できます。かかりつけ医以外の医師でも、患者さんの最新の健康状態を正確に把握できるため、重複投薬の防止や不要な検査の抑制がはかれ、より迅速で適切な診断・治療の実現に貢献するでしょう。情報の種類によって保管期限が異なることに留意が必要です。
【医療機関向け】電子カルテ情報共有サービスを活用する3つのメリット
電子カルテ情報共有サービスを導入することで、医療機関にとっていくつかメリットもあります。ここでは、医療の質の向上、情報共有の効率化、そして業務コストの削減につながる3つのメリットを紹介します。
医療サービスの安全性と質の向上
電子カルテ情報共有サービスを活用すると、患者さんのアレルギーや処方薬などの情報が正確かつ迅速に伝達され、重複投薬や不要な検査を防ぎ、診療の安全性が向上します。情報がリアルタイムで共有されることで、災害時や救急搬送といった緊急時も、迅速かつ安全な対応が可能です。
このサービスは医療機関だけでなく、患者さんにとってもより質の高い医療を受けられるという大きなメリットがあります。
医療現場での情報共有の効率化
電子カルテ情報共有サービスは、異なる医療機関や診療科間での情報伝達がスムーズになり、患者さんの診療履歴や検査結果を迅速に確認できます。これにより、他施設や地域間での連携が強化され、柔軟に働ける職場環境の実現や医療人材の確保にもつながるでしょう。
また、情報収集や転記作業などの事務的業務が削減されることで、スタッフの生産性向上にも寄与します。医師や看護師、医療事務スタッフは本来の業務に集中できるようになり、業務効率化と医療の質の両立が実現します。
またこの情報共有の効率化は、患者さんにとっても切れ目のない医療を受けられるというメリットがあります。
事務業務のコスト削減
医療情報の電子的な共有で、紙の書類の作成や郵送、保管といった手間が省かれ、事務作業が大幅に削減されます。また、患者さんの基本情報である傷病名やアレルギーなどの6情報をスムーズに共有できるため、効率的な初診時の問診が可能です。
これらの業務効率化は、受付や情報入力にかかる時間と手間を削減し、人件費などの事務業務コスト削減に直接つながります。
電子カルテ情報共有サービスの活用におけるデメリット・課題
・標準型電子カルテの導入が必要
・運用・システム整備にコストがかかる
・万全なセキュリティ対策が求められる
サービスの利用には、国が定める「標準規格」に準拠した電子カルテの導入が前提です。そのため、まだ電子カルテを導入していない場合は、導入と運用開始の準備が必要となります。
また、導入済みであっても電子カルテが標準規格に対応していない場合は、システムの改修や更新が求められます。これらの対応にはコストがかかりますが、場合によって「医療DX推進体制整備加算」などの支援策が利用可能です。
システム対応に加え、情報セキュリティの強化や院内ルールの整備など、さまざまな課題への対応も必要です。
電子カルテ情報共有サービス導入の現状と今後
医療DXの要となる電子カルテ情報共有サービスは、全国でどこまで導入が進んでいるのでしょうか。ここでは、現在の普及状況における課題と、国が推進する今後の展望を解説します。
電子カルテ情報共有サービスの現状
・電子カルテ情報共有サービスの有用性や課題について検証中
本格運用に先立ち、令和7年2月から全国10地域の医療機関群で先行モデル事業がスタートしました。この事業では、電子カルテ情報共有サービスを実際に運用した際の効果や現場での課題が検証されています。
全国的な情報共有の基盤を整えるための関連法も整備され、本格運用の開始は目前です。モデル事業で得られた知見を基に、すべての患者さんと医療機関が安心して利用できるサービス開始に向け、最終準備が進められています。
【モデル事業参加医療機関の例】・北海道 函館医療センターを中心とした地域
・石川県 金沢大学付属病院を中心とした地域
電子カルテ情報共有サービスの今後
・詳細の普及計画を2026年夏までにまとめることを目標にしている
電子カルテ情報共有サービスは、2025年度中の本格稼働を目指して、モデル事業などの準備が進められています。本格稼働後は、2026年夏までに今後の運用計画等などを策定する方針です。
さらに国は、医療DX推進の大きな目標として、遅くとも2030年までにほとんどの医療機関で本サービスを活用できるよう対応を進めています。これにより、国民一人ひとりがどこでも質の高い医療を受けられる社会の実現に向け、基盤整備を着実に推進しています。
電子カルテ情報共有サービスを導入する流れ
2.補助金の必要書類を受け取り、申請する
3.電子カルテ情報共有サービスの利用を申請する
4.操作確認など現場での運用準備をする
5.運用を開始する
出典:社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会 医療機関等向けポータルサイト「電子カルテ情報共有サービスの導入・運用方法」
まず、電子カルテ情報共有サービスに対応するシステム事業者に見積もりを依頼します。次に、補助金申請に必要な書類をシステム事業者から受け取り、ポータルサイトで申請しましょう。
補助金の交付が決定したら、電子カルテ情報共有サービスの利用申請をポータルサイトで行います。運用開始日が決まり次第、ポータルサイトに運用開始日の入力をしましょう。業務上の操作や業務フローの確認、患者向け掲示物の準備など現場での準備を進め、全ての準備が整い次第、サービスの運用を開始します。
電子カルテ情報共有サービス運用に向けて病院経営者・開業医がやるべきこと
電子カルテ情報共有サービスの運用をスムーズに進めるために、病院経営者や開業医は何を準備すべきでしょうか。ここでは、システム対応や院内体制の整備、補助金の活用など、押さえておきたい5つの重要項目を紹介します。
システムベンダーに対して、システムの導入や改修の依頼が著しく増加中です。システム導入に速やかに取り掛かることが必要です。
標準型電子カルテの導入またはシステム改修を進める
| 医療機関の状況 | やるべき対応 |
|---|---|
| 電子カルテ未導入 | 標準型電子カルテの導入を進める |
| 電子カルテ導入済み | 標準型電子カルテへのシステム改修を進める |
電子カルテ情報共有サービスを利用するには、国が定める「標準規格」への対応が必須です。電子カルテをまだ導入していない医療機関では、まず標準型電子カルテまたは標準型準拠電子カルテの導入から始める必要があります。
すでに電子カルテを導入している医療機関では、標準型または標準型準拠の電子カルテに対応できるよう、システム改修を計画的に進めることが求められます。自院の状況を早めに確認し、着実に対応を進めることが重要です。
万全なセキュリティ対策を行う
電子カルテ情報共有サービスでは、非常に機微な患者さんの個人情報を扱うため、万全なセキュリティ対策が必須です。
個人情報の漏洩やサイバー攻撃などの不正アクセスを防ぐために、まずはシステムのセキュリティ機能を整備する必要があります。さらに、アクセス権限の管理や職員のセキュリティ意識向上といった運用面の対策も進めなければいけません。患者さんの情報と信頼を守るために、安全に情報を活用できる体制の基盤を整えましょう。
スタッフへの教育・マニュアル整備を行う
電子カルテ情報共有サービスを導入しても、現場のスタッフが使いこなせなければ、その効果は発揮されません。自院で適切にサービスを運用できるよう、院内全体で教育を行い、操作マニュアルや運用ルールを整備することが重要です。
操作方法だけでなく、情報共有の目的や個人情報保護のルールについても理解を深める研修やトレーニングを行いましょう。これにより、スタッフが安心してシステムを利用できる環境を整えられます。
患者さんへの周知・案内を徹底する
電子カルテ情報共有サービスの利用には、患者さん本人の同意取得が前提となります。患者さんが疑問をもつ場合もあるため、サービスのメリットだけでなく、自分の情報がどの程度共有されるのかを丁寧に説明することが重要です。
院内ポスターや説明資料を活用し、サービスの有用性や情報の取り扱いについて、患者さんへの周知・案内を徹底しましょう。患者さんが安心して同意できるよう、分かりやすい情報提供が求められます。
導入時に補助金を活用する
電子カルテ情報共有サービスに対応するシステムの導入や改修には費用がかかりますが、国による補助金制度を活用することで、その負担を軽減できます。
すでにシステムの環境整備が完了している医療機関は、要件を満たすことで「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」が申請可能です。ただし、補助金を申請するにはいくつかの要件を満たす必要があるため、厚生労働省のウェブサイトで詳細を確認し、計画的に活用しましょう。
電子カルテ情報共有サービスに関するQ&A
・Q.電子カルテ情報共有サービスの活用による保険者側のメリットは?
・Q.電子カルテ情報共有サービスの導入に使える補助金制度はある?
・Q.電子カルテ情報共有サービスの導入は今後義務化される?
電子カルテ情報共有サービスについて、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。ここでは、患者さんや保険者側のメリット、補助金制度、今後の対応方針などに関するよくある質問をQ& A形式で紹介します。
Q.電子カルテ情報共有サービスの活用による患者さん側のメリットは?
患者さんは、かかりつけ医以外の医療機関や旅先、救急時でも、自身の正確な医療情報を共有できるため、重複投薬や不要な検査を防ぐことができます。これにより、より迅速で質の高い医療の受診が可能です。
さらに、マイナポータルを通じて自身の診療情報をいつでも確認できるため、日常的な健康管理への意識向上にもつながります。
Q.電子カルテ情報共有サービスの活用による保険者側のメリットは?
医療機関の間で情報を共有することで、診療や検査の重複を防ぎ、医療提供体制の効率化が図られます。保険者は健診結果を迅速に取得できるようになり、加入者への保健指導や受診勧奨を速やかに実施可能です。これにより、生活習慣病などの早期発見や疾病予防にもつながります。
また、収集したカルテ情報を二次利用することで、医療・介護サービスの費用対効果や質の分析が可能です。結果として、より効果的な保健事業の展開が期待されます。
Q.電子カルテ情報共有サービスの導入に使える補助金制度はある?
「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」を利用できます。この制度は、電子カルテ情報共有サービスの導入費用の一部を補助するものです。申請には、オンライン資格確認や電子処方箋の導入、標準型電子カルテ等の環境整備が完了しているなど、要件を満たす必要があります。詳しくは、厚生労働省のポータルサイトで確認しましょう。
Q.電子カルテ情報共有サービスの導入は今後義務化される?
2025年11月時点では、導入は義務化されていません。ただし、政府は2030年までの電子カルテ導入を目指しており、「3文書6情報」の共有体制整備を努力義務とする規定も検討中です。このため、救急を担う急性期病院から義務化される可能性があると考えられます。未対応の医療機関は早めにシステムを導入し、標準化を進めておくとよいでしょう。
電子カルテ情報共有サービスの導入を早めに進めよう
電子カルテ情報共有サービスは、医療機関の間で患者情報を安全に共有し、診療の質向上や業務効率化、経営の安定化にもつながる仕組みです。緊急時にも安全な医療の提供が可能で、重複検査・投薬の防止にも役立ちます。令和7年度中に本格稼働が予定されており、将来的に電子カルテ導入が義務化される可能性もあるため、早めの導入や標準化を進めておくとよいでしょう。
ソラストでは、医療機関経営支援や医事関連受託、人材派遣・紹介など、多数のサービスを展開しています。病院経営者さまやクリニック開業医さまの状況に応じて、最適な支援をご提供し、安定した経営の実現をサポートします。電子カルテ情報共有サービスの導入や経営効率化でお悩みの方は、ぜひお気軽にソラストまでご相談ください。