特定疾患療養管理料とは?算定要件や対象疾患、注意点や運用ポイントを解説
「特定疾患療養管理料の要件を正しく満たせているか不安」「算定漏れがないか確認したい」「診療報酬改定への対応が追いつかない」と悩む医療機関は少なくありません。
特定疾患療養管理料は慢性疾患患者への継続的な療養管理を評価する診療報酬であり、対象疾患や算定頻度、カルテ記載を確認し、適切に運用する必要があります。
本記事では、特定疾患療養管理料の概要や対象疾患、医療機関にとってのメリットや課題、算定漏れや査定リスクを防ぐための運用ポイントまで体系的に解説します。
特定疾患療養管理料とは
特定疾患療養管理料は、厚生労働省が定める対象疾患を主病とする患者に対し、医師が計画的な療養管理や生活指導をおこなった場合に算定できる診療報酬です。
近年は診療報酬改定によって対象疾患や算定要件の見直しが進み、2026年度改定でも実務に関わる変更が加えられました。
ここでは、制度の概要や改定の方向性、診療報酬点数、算定対象疾患について解説します。
概要|対象疾患を持つ患者に対して算定できる診療報酬
特定疾患療養管理料とは、厚生労働省が定める対象疾患を主病とする患者に対し、計画的な療養管理に基づく生活指導などをおこなった場合に算定できる診療報酬です。
慢性疾患は長期的な通院と健康管理を必要とするため、診察や処方だけでなく、療養上の管理そのものを評価する目的で設けられました。
重症化の予防や患者自身による健康管理の促進に加え、医療機関が継続的な診療を提供するための収益確保にもつながります。
生活習慣病管理料とは対象疾患や算定要件、管理内容が異なるため、主病や療養管理、カルテ記録を確認して適切に運用しましょう。
制度の方向性|2026年度診療報酬改定から読み解く国の狙い
特定疾患療養管理料の見直しがおこなわれた2026年度診療報酬改定では、制度改正が目指す方向性も読み取れます。
たとえば、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を主病とする患者でも、禁忌であるNSAIDsが投与されている場合は算定対象外となり、エビデンスに基づく療養管理を重視する内容です。
また、長期処方やリフィル処方箋を活用し、病状が安定している患者の受診回数を減らすなど、外来診療の効率化と医療費の適正化を進める方向性が示されています。
診療報酬点数|診療形態や施設区分によって点数が異なる
特定疾患療養管理料の点数は、施設区分や対面・オンライン診療などの診療形態によって異なるため、自院の運用形態に応じた算定ルールの確認が重要です。
診療所では1回225点、許可病床数100床未満の病院では1回147点、許可病床数100床以上200床未満の病院では1回87点を算定できます。
いずれも所定の要件を満たす場合は、月2回まで算定可能です。
近年はオンライン診療の普及に伴い、情報通信機器を用いた診療の算定ルールも整備されています。
施設基準の届出など一定の要件を満たした場合は算定できますが、算定点数は対面診療とは異なり、診療所では196点、許可病床数100床未満の病院では128点です。
また、許可病床数100床以上200床未満の病院については、76点です。
査定を防ぐため、自院の運用形態に適用される最新の点数や算定要件を確認し、医師・医療事務間で共有しましょう。
算定対象疾患|厚生労働省が定める対象病名のみ算定可能
特定疾患療養管理料は、厚生労働省が定める対象疾患を主病とする患者にのみ算定できます。
2026年度時点の主な算定対象疾患は、以下のとおりです。
| 分類 | 対象病名 |
|---|---|
| 循環器系 | 虚血性心疾患 不整脈 心不全 脳血管疾患 一過性脳虚血発作および関連症候群 |
| 呼吸器系 | 慢性気管支炎 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 肺気腫 喘息 喘息発作重積状態 気管支拡張症 |
| 消化器系 | 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃炎・十二指腸炎 慢性肝疾患 慢性ウイルス肝炎 アルコール性慢性膵炎 その他慢性膵炎 |
| 内分泌・代謝・遺伝性疾患 | 甲状腺障害 処置後甲状腺機能低下症 スフィンゴリピド代謝障害 ムコ脂質症 遺伝性脂質代謝異常 リポジストロフィー ローノア・ベンソード腺脂肪腫症 思春期早発症 性染色体異常 |
| 感染症・腫瘍 | 結核 悪性新生物 |
| その他 | アナフィラキシー ギラン・バレー症候群 |
2024年度診療報酬改定では、糖尿病・高血圧症・脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料へ移行する大きな見直しがおこなわれました。
さらに2026年度診療報酬改定では、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を主病とする患者であっても、禁忌であるNSAIDsを投与している場合は新たに算定対象外となっています。
対象疾患や最新の算定要件を誤って判断すると、算定誤りやレセプト返戻につながる可能性があります。
医師と医療事務は対象疾患リストを共有し、院内で共通認識を持って運用しましょう。
医療機関が特定疾患療養管理料を算定するメリット
ここでは特定疾患療養管理料の算定によって、医療機関が得られるメリットを解説します。
診療報酬収入の安定につながる
慢性疾患患者は長期的な通院が前提となるため、適切な算定体制を整えると継続的な診療報酬収入を確保しやすくなり、経営基盤や外来診療の安定につながります。
一方で、対象疾患の確認漏れや算定要件の理解不足、カルテ記録の不備などがあると、本来算定できる診療報酬を逃してしまう可能性があります。
そのため、院内における算定ルールの標準化や適切な運用の意識が重要です。
さらに、診療報酬改定では点数や算定要件が変更される場合もあるため、改定内容が収益へ与える影響を把握し、経営計画へ反映していく姿勢も安定した収益管理につながります。
継続的な患者管理で診療の質が高まる
療養管理を継続しておこなうと、患者ごとの診療記録が蓄積され、病状や治療経過を把握しやすくなります。
継続的な患者管理によって病状の変化や合併症の兆候も早期に把握しやすくなり、適切な治療介入や診察の効率化につながる点がメリットです。
また、定期的な診察や生活指導で患者の治療への理解や自己管理への意識が高まり、生活習慣の改善や重症化予防、受診継続率の向上、信頼関係の構築につながります。
さらに、継続的な患者管理は患者の健康維持だけでなく、医療機関の安定した患者基盤の確保にもつながります。
なお、療養計画書を活用して療養管理をおこなうケースもあるものの、特定疾患療養管理料では療養計画書の作成は必須要件ではありません。
診療の計画性を高めやすい
療養管理や生活指導を定期的に見直すと、病状や治療経過に応じた診療方針を立てやすくなり、適切なタイミングで治療内容を調整できます。
診療内容や療養上の管理を継続して記録すると、診療経過を医療スタッフ間で共有しやすくなり、算定要件に沿った運用にも役立ちます。
さらに、診療の流れや管理内容を院内で標準化しやすくなる点もメリットです。
担当医や医療スタッフが変更になった場合でも診療の継続性を維持しやすくなり、安定した外来診療の提供につながります。
医療機関が特定疾患療養管理料を算定する際の注意点
特定疾患療養管理料は、患者への説明や事務負担、診療報酬改定への対応など、運用面で注意すべき点もあります。
ここでは、特に押さえておきたい3つの注意点を解説します。
患者からの問い合わせやクレームにつながる可能性がある
特定疾患療養管理料は、「いつもと同じ診察なのに自己負担額が増えた」と患者に受け止められる場合があり、算定内容と診療内容を適切に説明する必要があります。
そのため、初回算定時には療養管理の目的や請求内容を患者が理解しやすい言葉で説明できるようにしておきましょう。
また、受付・窓口スタッフも基本的な算定の考え方を共有しておくと、問い合わせへの対応がスムーズになり、説明のばらつきや二次クレームを防ぎやすくなります。
療養管理の内容を患者と共有する取り組みは、「自分の治療のために継続的な管理がおこなわれている」という納得感にもつながります。
事務負担が増加する
特定疾患療養管理料の算定では、診療記録の整備や算定要件の確認など、通常の診療に加えて継続的な事務作業が発生するため、スタッフの業務負担が増えやすくなります。
また、対象疾患の判断や算定要件の解釈が複雑なため、医師と医療事務の認識が一致していないと、算定誤りや記録不備による査定・返戻につながる可能性があります。
そのため、算定可否の判断フローを整備し、医師と医療事務で共通認識を持てる体制を構築しておきましょう。
さらに、電子カルテのテンプレートやチェック機能を活用して記録方法を標準化すると、入力負担を抑えながら算定精度を維持しやすくなります。
医療事務スタッフへの継続的な教育を通じて、スタッフ交代時も安定した運用を維持できるようにしましょう。
負担軽減のためにレセプトの外注を検討している場合は、下記記事も参考にしてください。

診療報酬改定の影響を受けやすい
特定疾患療養管理料は、診療報酬改定で算定要件や対象疾患、点数が見直されるため、改定内容を把握せずに運用すると算定誤りのリスクがあります。
2026年度改定でも実務に影響する見直しがおこなわれているため、最新の告示・通知を確認し、電子カルテやレセコン、院内ルールを速やかに更新しましょう。
また、改定情報の収集を特定の担当者だけに任せると、現場への共有が遅れる可能性があります。
定期的な院内研修や情報共有の仕組みを整え、組織全体で制度変更に対応できる体制を構築しましょう。
自院だけでの対応が難しい場合は、外部パートナーの支援を活用する方法も有効です。
継続的な情報収集と運用体制の見直しをおこなうと、算定精度の維持と査定リスクの低減につながります。
診療報酬改定への対応に追われ、個別指導に不安を感じている場合は、ソラストの「保険診療遵守支援」で模擬指導から体制整備まで一括したサポートを受けるのもおすすめです。
特定疾患療養管理料の算定時のポイント
ここでは、算定時に特に確認しておきたい3つのポイントを解説します。
対象疾患が主病かどうかを確認する
特定疾患療養管理料を算定する際は、対象疾患が主病であるかを必ず確認しましょう。
特定疾患療養管理料は対象疾患を主病とする患者のみが算定対象であり、対象疾患が副病として記録されている場合や、主病として治療していない場合は算定対象外です。
また、複数の診療科を受診している患者では、主病を治療する診療科のみが算定対象となり、複数の診療科による重複算定は認められていません。
一方、主病を他の医療機関で治療している場合は算定できないものの、主病が異なる場合は、それぞれの医療機関で算定できるケースもあります。
主病の判断が曖昧なまま運用すると算定誤りにつながるおそれがあります。医師が主病を判断し、医療事務に算定指示する体制を整えましょう。
算定頻度に注意する
特定疾患療養管理料は、月2回まで算定できるものの、算定時期や回数には細かなルールがあるため、算定頻度には注意しておきましょう。
初診料を算定した日や、初診日から1か月を経過するまでは算定できないため、初診月は原則として算定対象外です。
なお、1か月経過日が休日にあたる場合は、直前の休日ではない診療日に療養管理をおこなっていれば算定できる例外規定があります。
また、入院中の患者や退院日から1か月を経過していない患者も算定対象外です。
算定回数を属人的に管理すると上限を超えて算定するおそれがあるため、電子カルテやレセコンを活用し、算定回数を適切に管理できる体制を整えましょう。
療養上の管理と記録を徹底する
特定疾患療養管理料を算定するためには、計画的な療養管理に基づく療養上の管理をおこない、その内容をカルテへ適切に記録しておく必要があります。
記録がない場合や内容が不十分な場合は個別指導で返還対象となる可能性があるため、診察のたびに療養上の指導内容や患者の状態、治療計画に基づく管理内容の要点を記録しましょう。
形式的な記載ではなく、実際におこなった療養管理が分かる内容を残す意識も重要です。
電子カルテでは、記録テンプレートを整備して入力漏れを防ぎながら、記録の質を維持しやすくする方法もあります。
ただし、テンプレートによる定型的な記載だけに頼るのではなく、患者ごとの状況を踏まえた具体的な記録を残す意識が重要です。
具体的な記録により、レセプト査定だけでなく医療安全上のリスク低減にもつながります。
また、定期的に記録内容を確認し、医師と医療事務がフィードバックをおこなう体制を整えると、医療機関全体の質向上につながります。
算定漏れ・査定リスクを防ぐための運用ポイント
ここでは、算定漏れや査定リスクを防ぐために実践したい3つの運用ポイントを解説します。
算定ルールを院内で標準化する
対象疾患や算定要件、算定回数の上限などの院内ルールを標準化し、属人的な判断を減らすと算定ミスの防止につながります。
また、疑義が生じた際の確認ルートを明確にしておくと、担当者が変わっても一定の算定精度を維持しやすくなります。
診療報酬改定後は対象疾患や算定要件が変更される場合もあるため、院内ルールの見直しと継続的な周知が欠かせません。
患者への説明体制を整備する
患者が算定内容に納得できるよう、初回算定時には療養管理の目的や内容、請求の根拠を分かりやすく説明すると、クレームや不信感の予防につながります。
療養管理の意義や算定根拠を受付・窓口スタッフとも共有し、継続的に説明できる体制を整えると、患者の納得感や信頼関係の向上につながります。
システム活用で算定漏れと入力負担を減らす
電子カルテやレセコンに対象疾患や算定回数、算定要件を確認できる仕組みを組み込むと、人的ミスによる算定漏れや過剰算定を防ぎやすくなります。
また、記録テンプレートや多職種連携記録フォームを活用すると、入力負担を軽減しながら、記録の質と一貫性を維持しやすくなります。
さらに、診療データを可視化すると、患者ごとの療養管理や算定状況を把握しやすくなり、算定漏れの早期発見にも有効です。
自院だけで対応が難しい場合は、医療事務の専門知識を持つ外部サービスの活用も検討しましょう。
算定漏れや増収余地が気になる医療機関は、匿名化したレセプトデータだけで診断できるソラストの「診療報酬適正化診断」をご活用ください。


