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標準型電子カルテはいつから運用が始まる?現状と今後・やるべきことを解説

公開日/2026.03.24 更新日/2026.03.24
目次

医療DX推進の一環として、現在「標準型電子カルテ」の開発やモデル事業が進められています。病院経営者や開業医の方は、一般的な電子カルテとの違いや開発・運用状況、今後導入に際して何をすべきかを把握しておく必要があります。今回は、標準型電子カルテの基本や現況と今後やるべきことを中心に詳しく解説します。

標準型電子カルテとは

標準型電子カルテとは、医療DXの一環として政府が主導となって開発・普及を進めている、国際標準規格「HL7 FHIR」に準拠したクラウド型電子カルテです。

従来の電子カルテはメーカーごとに独自の仕様で設計されていたため、医療機関をまたぐデータ連携が難しく、紙の紹介状を介したやり取りが一般的でした。標準型電子カルテは、このバラバラな仕様を国際規格であるHL7 FHIRの仕様に統一する試みです。

規格が標準化されることで、全国医療情報プラットフォームに接続して、診療情報提供書や処方情報などの重要データを全国どこでもスムーズに共有できる社会を目指します。

従来のベンダー独自の仕様に縛られず医療機関同士のデータ連携を円滑にすることで、とくに無床診療所や中小病院での業務効率化に寄与することが期待されています。

標準型電子カルテの開発・普及を進める目的

では、なぜ標準型電子カルテの開発・普及が進められているのでしょうか。ここでは、その背景について解説します。

医療DX推進につながり、医療機関同士の情報共有や連携を円滑にする

標準型電子カルテは「全国医療情報プラットフォーム(電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス等)」への接続を前提に設計されています。

医療DX関連の各システムと密接に連携できるため、診療情報提供書やアレルギー・検査結果など患者さんの重要情報を医療機関間でスムーズに共有することが可能です。

紹介先や地域医療機関との連携がデジタル化・効率化されることで、転院時や救急時の対応も迅速化し、切れ目なく質の高い医療提供につながります。

出典:厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)」

民間サービス・システムと組み合わせて、業務を効率化する

標準型電子カルテは、外部システムとのAPI連携を前提にシステム構築が進められています。API連携とは、異なるシステム同士が自動でデータを受け渡す仕組みです。

民間サービスと柔軟に連携できる仕様により、外注検査システムや電子処方箋、既存のレセプトコンピュータ等とのスムーズな統合が可能です。データの二重入力や煩雑な事務作業が削減され、現場の業務効率向上が期待できます。

結果としてスタッフの負担が軽減され、より多くの時間を患者さんへの診療やケアに充てられるようになるでしょう。

【現状】標準型電子カルテの開発・運用状況

2026年1月時点で、標準型電子カルテはまだ本格運用が開始されていません。ここでは、標準型電子カルテの開発・運用状況について説明します。

【2025年3月】対象医療機関で標準型電子カルテα版第1弾機能の提供を開始

デジタル庁が2024年度から開発を進めてきた「α版」は、2025年3月より電子カルテ未導入の医療機関を対象にモデル事業として提供が開始されました。対象地域は「電子カルテ情報共有サービス」の先行モデル地域を中心に選定されています。

このモデル事業では、診療情報提供書や処方情報の共有など、全国医療情報プラットフォームとの連携を実地で検証し、現場のフィードバックを基にシステムのブラッシュアップが進められています。

出典:厚生労働省「第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料」

【標準型電子カルテα版の機能について】
・基本機能(レセコンに登録済みの患者情報の自動連携、レセコンへの算定情報連携など)
・診療録入力・参照
・全国医療情報プラットフォームとの連携
・電子処方箋のチェック・印刷
・外注検査連携
・PACS連携

【2025年7月】標準型電子カルテα版の機能拡充を開始

2025年7月より、標準型電子カルテα版の機能拡充が開始されました。3月のスタート時は紙カルテとの併用を前提とした運用でしたが、7月からは一般的な電子カルテとして単体で利用可能な水準まで機能が強化されています。

政府は2025年3月・7月のモデル事業の結果を踏まえ、α版のシステム改修を並行して実施しています。標準型電子カルテの完成については、現段階で2026年度からを想定していますが、モデル事業の状況を踏まえて時期や方法について検討段階です。

出典:厚生労働省「個別事項について(その18)医療DX」

【今後】標準型電子カルテの運用はいつから?政府のスケジュール

引用:厚生労働省「第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料」

現在も標準型電子カルテの開発やモデル事業が進められていますが、実際の運用はいつから始まるのでしょうか。ここでは、2026年1月時点でわかっている政府のスケジュールに基づいて解説していきます。

【2026年度中】標準型電子カルテの本格提供開始を目指す

政府は、標準型電子カルテについて2025年度中に本格運用に必要な機能要件や導入支援策を明示し、2026年度中のシステム完成を目指すとしています。現在行っているα版での検証を経て、より実用性を高めた本格版が提供される予定です。

政府は2026年度中の完成を目指しているため、今後の本格運用の具体的内容や支援策についての発表が待たれます。

【2030年】すべての医療機関で電子カルテの導入を目指す

政府の「医療DX令和ビジョン2030」では、2030年までに必要な情報を共有できる電子カルテを概ねすべての医療機関に普及させる目標を掲げています。

オンプレミス型からクラウド型への移行を強力に推進し、全国的な情報連携と業務効率化の実現を目指す戦略です。電子カルテ未導入の医療機関には標準型電子カルテの設置を、すでに電子カルテを導入している医療機関には、電子カルテ情報共有サービスなどに対応できるシステム改修が求められています。

これにより、災害時のデータ保護やサイバーセキュリティ対策も強化されます。医療機関経営者には、この目標を見据えた計画的なシステム刷新が求められています。

標準型電子カルテの導入を進めるメリット・デメリット

標準型電子カルテの導入には、さまざまなメリットがあります。一方でデメリットもあるため、あわせてご確認ください。

標準型電子カルテの導入によるメリット

医療機関側のメリット 患者さん側のメリット
・医療機関同士の連携・共有がスムーズになる
・一貫性のある質の高い医療を提供できる
・業務効率の向上を目指せる
・医療DXに関連する診療報酬を算定できる
・一人ひとりに合う安全な医療を受けられる
・緊急時でも適切に医療を受けられる

標準型電子カルテの導入は、オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスとのシームレスな連携を可能にします。具体的には、傷病名やアレルギー、検査結果等のデータを全国の医療機関で共有できるため、医療機関間の連携や救命救急時の対応が円滑になります。

さらに、標準型電子カルテはクラウドベースのため、従来のオンプレミス型に比べて導入・更新コストを抑えやすい特徴もあります。常に最新のシステム環境を維持できる点がメリットです。

なお、患者さん側にとっては、情報共有が円滑に進むことで、緊急時なども安心して医療を受けやすくなる利点があります。

標準型電子カルテの導入で注意すべきデメリット

医療機関側のデメリット 患者さん側のデメリット
・医療従事者が活用や操作方法に慣れるまで時間がかかることもある
・万全なセキュリティ対策が欠かせない
・仕組みや活用方法に慣れるまでに時間がかかることもある

標準型電子カルテの導入には、既存スタッフの操作習熟への負担やシステム刷新に伴う初期コストに対する懸念が伴います。これは、患者さんにとっても共通のデメリットとして考えられます。

また、クラウド移行に伴う情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティリスクに対し、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づく厳格な体制整備が不可欠です。

導入を成功させるには、従業員への的確な教育とサポート体制の構築が求められます。

【状況別】標準型電子カルテの本格運用前に経営者がやるべきこと

標準型電子カルテの本格運用が開始する前に、しっかりと体制を整えておく必要があります。ここでは、状況別に経営者側でやるべきことを確認しましょう。

【電子カルテ導入済み】医療機関がやるべきこと

次回更新時、電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋に対応するシステム改修等の実施

すでに電子カルテを導入している医療機関は、次回のシステム更新に向けた準備が必要です。

医科無床診療所においてオンプレミス型を使用している場合は、更新時に「標準型電子カルテに準拠したクラウド型」への移行が推奨されています。すでにクラウド型を導入済みの場合は、標準型への迅速な切り替えが目標です。

一方、病院(有床医療機関)では、大規模なシステム刷新が困難な場合も多いため、まずは「HL7 FHIR」等の標準規格に対応したデータ連携基盤の整備や、ベンダーに対する標準化対応のロードマップ確認を進めていきましょう。

【電子カルテ未導入】医療機関がやるべきこと

電子カルテ情報共有サービス/電子処方箋に対応できる標準化された電子カルテの導入を進める

現在、電子カルテ未導入の医療機関の一部では、標準型電子カルテのα版を用いたモデル事業が進められています。未導入の医療機関においては、まず導入の可否を検討する必要があります。

また、病院に対しては、国として2025年度中を目標に電子カルテの標準仕様を示し、こちらへの移行を促す対応を進めています。

情報共有の円滑化や診療報酬での評価といったメリットと、導入コストや操作習熟などのデメリットを十分に比較・検討しましょう。

2030年の普及目標を見据え、将来的な拡張性が高い「標準規格準拠」のシステムを視野に入れることが重要です。

ソラストでは、DX導入支援など幅広く対応する「医療機関経営支援サービス」を展開しています。標準型電子カルテへの移行や導入にお悩みの方は、専門的なノウハウを持つソラストへぜひ一度ご相談ください。

標準型電子カルテの導入に使える補助金

標準型電子カルテの導入には、補助金が利用できます。ここでは、標準型電子カルテの導入に使える3つの補助金を紹介します。

電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金

電子カルテ情報共有サービスの導入に向け、病院向けに2024年3月から申請が開始されたシステム改修費等を支援する補助金制度です。施設規模に応じて補助上限額が設定されているのが特徴で、主に標準規格(HL7 FHIR)への対応や基盤接続費用が対象になっています。

申請条件 ・すでにオンライン資格確認等システムおよび電子処方箋管理サービスを導入しており、電子カルテ情報共有サービスを利用できるシステムの環境整備が完了している
・病床20床以上を有する医療機関
申請期間 2024年3月〜2031年9月30日
交付額 【健診実施医療機関の場合(健診部門システム導入済み)】
・大規模病院:657万9,000円を上限(事業額の1,315万8,000円を上限にその1/2を補助)
・中小規模病院:545万7,000円を上限(事業額の1,091万3,000円を上限にその1/2を補助)

【健診未実施医療機関の場合(健診部門システム未導入)】
・大規模病院:508万1,000円を上限(事業額の1,016万2,000円を上限にその1/2を補助)
・中小規模病院:408万5,000円を上限 (事業額の817万円を上限にその1/2を補助)

※大規模病院:病床数200床以上
 中小規模病院:病床数20~199床
補助対象項目 ・システム改修費用
・システム適用作業等費用(SE費用、ネットワーク整備等)
・健診部門システムと電子カルテシステムの連携費用
交付申請の流れ 1.電子カルテ情報共有サービスを利用できる環境を整備する
2.システムベンダー等へ費用を精算する
3.システムベンダー等から領収書および領収書内訳を受け取る
4.必要書類を添付して補助金を申請

医療機関向け総合ポータルサイト「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」

IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)

IT導入補助金は、電子カルテ等のDX投資に活用できる補助金制度です。

2025年12月時点で公表されているリーフレットでは、制度名を「デジタル化・AI導入補助金」とし、補助金は最大450万円、補助率は1/2〜4/5としています。

なお、2026年1月現在、2026年度公募の詳細は未発表です。準備が整いしだい公募が開始されるため、今後の最新情報を適宜チェックしましょう。

中小企業庁:「デジタル化・AI導入補助金」でIT導入・DXによる生産性向上を支援!

各自治体による補助金制度

自治体ごとに補助金制度を提供している場合もあります。ここでは、東京都が実施する「病院診療情報デジタル推進事業」を例に紹介します。

東京都が実施する「病院診療情報デジタル推進事業」は、都内の医療機関における電子カルテの導入と標準化を強力に支援し、地域全体で診療情報を円滑に共有・連携できる体制の構築を目的とした補助制度です。2025年度公募の場合、電子カルテシステムの整備支援や運用に伴う事務作業支援を行っており、補助率は200床以上の病院で1/2、200床未満の病院で3/4となっています。

なお、2026年1月時点では2026年度の事業内容は未発表のため、最新情報を調べておきましょう。

参考:東京都「令和7年度病院診療情報デジタル推進事業」

標準型電子カルテの機能や運用に関するQ&A

ここでは、標準型電子カルテの機能や運用に関するよくある質問に回答します。

Q.標準型電子カルテと従来の電子カルテの違いは?

A. 従来の電子カルテがメーカー独自の仕様で構築されているのに対し、標準型電子カルテは国際標準規格「HL7 FHIR」に準拠している点が大きな違いです。

従来のシステムはメーカーごとの独自仕様により、他院との情報共有が困難でした。標準型では国際規格の共通言語を用いることで、全国どこでも診療情報の参照ができるようになります。

また、標準型電子カルテはクラウド型であるため、導入コストの低減やセキュリティの標準化も図られており、医療DXを推進するための基盤としての役割を担っています。

Q.標準型電子カルテはどの企業が開発している?

A. デジタル庁主導のもと、株式会社FIXERが設計・開発を担当しています。

デジタル庁が全体を統括し、α版の開発ではFIXERが設計・開発を担当しました。2026年度中の本格提供に向け、モデル事業で得られた医療現場のフィードバックを反映しながら官民一体の体制で構築が進んでいます。

Q.標準型電子カルテを今後導入する場合、ベンダーはどう選ぶ?

A. 国際標準規格「HL7 FHIR」への準拠と、全国医療情報プラットフォームへの接続実績があるかを確認しましょう。

標準型電子カルテは最小限の機能に絞られているため、自院の診療スタイルに合った追加機能の有無も重要です。

また、診療報酬改定や国のAPI連携モジュールへの迅速なアップデート対応能力、さらには将来的なシステムの拡張性やサポート体制の充実度を重視してベンダーを比較検討することがポイントです。

Q.標準型電子カルテの導入費用は?

A. 標準型電子カルテの明確な導入費用は現時点で公表されていません。ただし、標準型電子カルテはクラウド前提での提供が想定されているため、一般的にはオンプレミス型(院内設置)よりも初期投資を抑えやすいと考えられます。

一般的な電子カルテの費用感としては、クラウド型の場合、(電子カルテシステム本体+導入支援費用として)初期費用100万〜200万円程度が目安とされ、月額費用は数万円程度が発生します(プランや機能、サポート範囲により変動)。

一方、オンプレミス型は初期費用が250万〜400万円程度(仕様によっては300万〜500万円程度)になるケースもあり、クラウド型に比べて初期負担が大きくなりやすい点が特徴です。

なお、ここでの金額はあくまで「電子カルテシステム(ソフト+導入支援)」に関する目安です。実際には、端末(PC・タブレット等)やネットワーク機器、プリンタ等の周辺機器、場合によってはデータ移行・連携設定などが別途必要となり、総額は上振れします。特に病院は利用端末台数・部門連携の範囲が広くなりやすく、診療所よりも総額が大きくなる傾向があります。

このように、標準型電子カルテも「クラウド型=初期負担を下げやすい」という特性が期待されており、コスト障壁を下げることで、政府は普及の後押しを進めています。

標準型電子カルテはメリットが多い!計画的に移行を進めよう

標準型電子カルテは、国際規格HL7 FHIR準拠により全国での情報共有を実現する医療DXの要です。2026年度の本格提供を目標に、現在もモデル事業や開発・改修が進められています。病院経営者や開業医の方は、補助金の活用やシステム刷新を早期に計画し、地域連携と業務効率化を両立させることが重要です。メリットとデメリットの双方を押さえ、自院の状況にあわせた対応を進めましょう。

ソラストでは、医療機関経営支援サービスを中心に、経営者さまをサポートする多数のサービスを展開しています。病院経営者さま、クリニック開業医さまの状況に合わせ、適切な支援をご提供いたします。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。

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