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医療事務

クリニックDXとは?医療DX化に伴う政策や事例・導入手順を解説

公開日/2026.02.02 更新日/2026.02.02
目次

クリニックのDXを進めたくても、具体的にどのようなことを何から始めたらいいのか分からない病院経営者の方や開業医の方は多いではないでしょうか。本記事では、クリニックDXの基礎から導入メリット、導入の手順などを網羅的に解説しています。導入時の注意点や実際の事例紹介など、実務に役立つ情報も紹介していますので、ぜひ、ご覧ください。

クリニックにおけるDXとは?

クリニックにおけるDXとは、デジタル技術を活用してクリニックの業務効率化や患者サービスの質を向上させる取り組みのことです。DXは、「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタル技術を使ってビジネスや生活の形を変革し、業務の効率化や新しい価値の創造などを行うことを指します。

クリニックDXと医療DXの違い

項目 医療DX クリニックDX
目的 国が主導する医療システム全体のDX化 個々のクリニックの業務改善やサービス向上
取り組み 社会インフラの整備やプラットフォーム構築など 現場レベルの業務支援ツールの導入など

クリニックDXと医療DXは同じように捉えがちですが、実は、目的や取り組み内容の領域が異なります。

医療DXは国が主導し、医療・保健・介護業界全体の業務やサービスのDX化を目指しています。「全国医療情報プラットフォーム」や医療等情報の二次利用を通じ、良質な医療体制を構築できるよう社会や生活の形を変える取り組みです。

一方クリニックDXは、個々のクリニックが業務改善やサービス向上を目指し、現場レベルの業務支援ツールの導入などを行うことです。今後は医療DXの流れに沿って、各クリニックが主体的にDX化を進める必要があります。

クリニックにおいてDXが必要とされる背景

クリニックにおけるDXが求められている理由は、医療現場の業務効率化が急務であるからです。高齢化に伴い医療ニーズが拡大している一方で、医療業界は慢性的に深刻な人手不足に陥っています。そのため、医師やスタッフの負担を軽減できるDXの導入は日々の業務の軽減だけでなく、新たな人材獲得のためにも必要不可欠です。

また、デジタル化による利便性の向上は他院との差別化を図る要素となります。患者に選ばれるクリニック経営を考える上で、重要なポイントとなるでしょう。

クリニック経営者必見!「医療DX令和ビジョン2030」の3つの柱

厚生労働省は、2022年に「医療DX令和ビジョン2030」を策定して推進チームを設置しました。以下の3つの柱を掲げ、医療DXの実現を目指しているため、今後のクリニック経営にも影響を与えるでしょう。

全国医療情報プラットフォームの創設

「全国医療情報プラットフォーム」とは、保健・医療・介護の各分野をネットワークでつなぎ、患者さんや利用者さんの情報を共有できる仕組みのことです。これにより救急・医療・介護の現場における切れ目のない情報共有を実現し、サービスの抜本的な効率化や現場の負担軽減を目指します。

また、情報を一元管理することで、全国どこでも過去の既往歴や服用中の薬剤情報を即座に確認できるため安全で最適な医療を提供することが可能となるでしょう。

【ポイント】
・国の計画に沿ったシステム導入などへの対応が必要
・患者情報の活用により、診療の質と安全性を高められる

電子カルテ情報の標準化等

「電子カルテ情報の標準化等」とは、医療機関同士でスムーズなデータ交換や共有を推進するために、国が主導して標準規格を整備する取り組みです。

現在、電子カルテは多くの医療機関で導入が進んでいますが、使用しているシステムや登録情報に差異があり、連携が難しい現状がみられます。そのため、登録する項目や形式の標準化を進め、異なるシステム間でも円滑に情報をやり取りできる環境を構築し、より連携をしやすい状態にするのが狙いです。

【ポイント】
・標準規格に対応した電子カルテへの更新や導入準備が必要
・次回のシステム選定では、標準型への対応が必須条件となる

診療報酬改定DX

「診療報酬改定DX」とは、デジタル技術を活用し、病院や診療所、薬局、訪問看護ステーションにおける業務負担を軽減する取り組みです。診療報酬は2年ごとに改定され、その前後の期間に事務作業が増加し、通常業務に支障が出てしまうケースが少なくありません。こうした負担をDXによって抑えることが期待されています。

具体的には、診療報酬や患者負担額を計算する「全国共通の電子計算プログラム」を国が開発・提供します。さらに、標準様式のアプリ化やデータ連携を推進することで、改定に伴う複雑な事務作業を効率化し、現場の業務をよりスムーズに進められる環境を整備していく方針です。

【ポイント】
・診療報酬改定DXにより、改定時のシステム回収コストや業務負担が軽減される
・全国共通の電子計算プログラムに対応するシステム更新が必要

クリニックのDX化によって期待できるメリット

クリニックのDX化は、業務効率化や患者体験の向上といったさまざまなメリットが期待できます。とくに、DX化の中でも、院内だけで機器の購入やシステム構築・運用する従来の「オンプレミス型」ではなく、インターネット経由で行える「クラウド型」にすることで、より多くのメリットを得られるでしょう。コストの抑制にもつながります。

ここでは、具体的なメリットを3つ見ていきましょう。

業務の効率化によってスタッフの働き方改善につながる

クリニックのDX化は日々の業務を効率化し、スタッフの働き方改善に大きく貢献するでしょう。患者データをデジタル管理することで、今までの紙による保存や管理の手間が大幅に削減されます。

また、オンライン予約やWeb問診システム等の導入で受付業務の負担が軽減され、スタッフがより診療や患者ケアに集中できる環境が整うでしょう。

電子化によってコスト削減やBCP強化が可能になる

クリニックのDX化によって、コスト削減とBCP(事業継続計画)の強化が可能になります。たとえば、電子化によるペーパーレス化は、用紙代や保管コストの削減につながるでしょう。

また、データのバックアップが取れるため、自然災害などの緊急時でも情報を守り、事業を中断させずに早期復旧を目指せる強固な体制を構築することが可能です。

待ち時間の短縮や患者体験の向上が期待できる

クリニックのDX化により、待ち時間の短縮や患者体験の向上が可能です。たとえば、オンライン予約やWeb問診システムの導入で、待ち時間が短縮され、スムーズな受診を実現します。

さらに遠隔診療を活用すれば、自宅にいながら医師の診察を受けられるケースもあります。このように患者さんの通院負担を減らし、満足度を高めることが期待できるでしょう。

クリニックDXの具体的な事例

クリニックDXを導入するために現場ではさまざまな取り組みが行われています。ここでは、予約・受付から会計、医療サービス提供に至るまで、クリニックDXの具体的な事例を紹介していきます。

【予約・受付】オンライン予約・問診システムの導入

クリニックの予約・受付におけるDX事例として、オンライン予約・問診システムの導入が挙げられます。オンライン予約は待ち時間を短縮し、スムーズな受診の実現が可能です。

また、問診システムを導入すれば、患者さんは来院前に症状を入力でき、クリニック側も事前に情報を把握できるため、双方の手間を減らし診療効率を向上させられます。

【診療情報】問診表やカルテ、処方箋などのペーパーレス化

カルテや処方箋、問診表などの診療情報をペーパーレス化することで、データを一元管理が可能です。これにより紙のコスト削減や事務作業の効率化が進み、過去の医療情報へのアクセスもスムーズになります。

また、データをクラウド化してバックアップを取ることで、災害時のデータ紛失リスクに備えられる点も大きなメリットです。

【会計】自動精算機やキャッシュレス決済の導入

クリニックの会計におけるDX事例としては、自動精算機やキャッシュレス決済の導入があります。セルフレジ等を用いて会計業務をデジタル化すれば、窓口スタッフの負担は大幅に軽減が可能です。

また、患者さんにとっても会計時の待ち時間が短縮され、支払いがスムーズになるなど、双方にとって利便性の高い環境構築につながります。

【医療サービス提供】遠隔診療やAIを活用した診断支援

クリニックの医療サービス提供におけるDX事例として、遠隔診療を活用した診断支援が挙げられます。ビデオ通話などオンライン診療を導入すれば、通院が難しい患者への対応が可能となり、在宅医療の質向上にもつながるでしょう。

さらに、風邪など軽症の症状で受診を控える層に対しても、気軽に診察を受けられる利便性を提供できるため、患者数の増加が期待できます。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、遠隔診療の需要は一層高まり、新しい医療提供のスタイルとして広がりを見せています。

クリニックでDXを導入する手順

実際にクリニックでDXを導入するには、4つのステップを踏みます。ここでは、課題の特定から効果検証まで、着実にDX化を進めるための4つのステップについて分かりやすく解説します。

1.課題の特定とDX化の目標設定

まずはクリニックの現状を詳細に分析し、業務効率やサービスの質などにおける課題を洗い出すことから始めましょう。課題は多岐にわたりますが、それらに優先順位をつけることが重要です。

その上で、解決すべき優先度の高い課題に対して、DXを用いてどのように改善するのか具体的な目標を設定します。明確なゴールを決めることが、導入を成功へ導くための第一歩となるでしょう。

2.必要なツールを選定する

設定した目標や課題に応じ、電子カルテシステム、オンライン予約・問診システムなど自院に最適なツールを選定します。同時に、導入までのスケジュールや詳細な予算計画も立てましょう。

費用は初期費用に加え、ランニングコストや端末代、スタッフ教育費なども含めたトータルコストで考えるのがポイントです。また、IT導入補助金などが活用できる場合も多いため、負担を軽減するためにも事前に利用可能な制度を確認しておきましょう。

3.運用体制の構築とスタッフへの研修を実施する

DX導入の際は、一度にすべてを変更するのではなく、優先順位をつけて段階的に進める「スモールスタート」を心がけましょう。この対応により、現場の混乱を最小限に抑えられます。

また、実際にシステムを扱うスタッフ全員に対し、導入の目的やメリットを周知し理解を得ることも不可欠です。その上で、新しいツールの操作方法に関する十分な研修を行い、全員が不安なく業務を行える運用体制を整えていくことが、DX定着への近道となるでしょう。

4.導入後の改善と効果検証を行う

DXは、システムを導入して終わりではありません。運用開始後は、定期的に効果検証を行いましょう。実際に利用するスタッフや患者さんの評価を取り入れて、現場に業務フローの見直しやシステムの改修といった改善策を継続的に実行していきます。

こうした地道なブラッシュアップを繰り返すことで、DXの効果を最大化し、より質の高いクリニック運営を実現できるでしょう。

クリニックでDXを導入する際の課題と注意点

DXの導入には、具体的にどのようなハードルがあるのでしょうか。ここでは、セキュリティ対策やコスト面、スタッフや患者さんの心理的な障壁など、事前に押さえておくべき課題と注意点を紹介します。

セキュリティ対策が必要となる

DX化の進展に伴い、セキュリティ対策の重要性が一層増しています。デジタル化には、患者情報の流出やサイバー攻撃、不正アクセスといったリスクが伴うからです。

そのため、外部サービスを選定する際は、機能面だけでなく、セキュリティ対策が万全であるかを最優先事項としましょう。

導入・運用コストがかかる

DX導入には、システム開発や機器の購入、セキュリティ対策など様々な費用が発生します。導入時の初期費用だけでなく、月々のランニングコストがかかる点にも注意しましょう。

さらに、ツールを現場で使いこなすためにはスタッフへの教育も不可欠です。そのための時間やコストも、計画に含めておくことが無難です。

スタッフや患者が心理的な障壁となる可能性がある

スタッフや患者さんの層によっては、新しい技術に対して抵抗を感じる人もいます。システムを使いこなせず、不便に感じることがないよう配慮が不可欠です。

ITに不慣れな方でも扱えるよう改良したり、マニュアルを作成したりするなど、誰もが安心して利用できる使いやすい運用体制をしっかりと整備していきましょう。

クリニックDXに関するよくある質問

クリニックDXや医療DXは比較的新しい概念であるため、さまざまな疑問をもたれるでしょう。ここでは、クリニックDXや医療DXに関するよくある質問を紹介していきます。

Q.医療DX推進体制整備加算とは?

A. 医療DXに対応し、情報を診療に活用できる体制を整備した医療機関へ加算する制度です。

医療DX推進体制整備加算とは、2024年に新設された制度です。この制度では、オンライン資格確認で得た情報を診療に活用し、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの導入を進める医療機関を評価・加算します。医療DXに対応した体制を確保し、情報連携を通じてより質の高い医療を提供することが狙いです。

Q.看護における医療DXにはどのような取り組みがある?

A. 電子カルテやAI活用で業務を効率化し、負担軽減とケアの質を高める取り組みが進められています。

看護における医療DXの取り組みには、電子カルテやモバイル端末による記録の効率化、AIモニタリングによる患者のバイタル異常の即時検知などが挙げられます。これらは看護師の事務・身体的負担を減らしてケアの時間を確保し、同時に医療安全やサービスの質を高めるものです。技術を活用して業務を改善し、看護の質を向上させる取り組みが進んでいます。

Q.クリニックDXを進めるパートナーはどう選ぶ?

A. 現場の業務フローを理解し、定着まで伴走する信頼できるパートナー選びが重要です。

クリニックDXを進めるパートナーとは、システム導入から定着までを支援する専門企業やサービスを指します。選定時は、現場の業務フローへの理解や伴走姿勢に加え、セキュリティやサポート体制の充実度が重要です。課題に親身に寄り添い、過去の実績や評価に基づいた信頼できる相手を選ぶことが、クリニックDXを成功させる上で最も大切です。

課題を見極め、クリニックDXを計画的に推進しよう

クリニックDXは、「医療DX令和ビジョン2030」の推進により避けて通れない課題です。本記事では、導入のメリットや具体的事例、実践的な手順や課題までを網羅的に解説しました。クリニックにおけるDX化は単なるシステム導入ではなく、業務効率化と患者サービスの質を高める経営改革です。自院の課題を見極め、計画的に推進していきましょう。

ソラストでは、リモート医事サービスや診療報酬請求業務の精度向上と効率化が図れるサービス、医療事務スタッフの教育に役立つツールを幅広く提供しています。クリニック経営者さま、開業医さまの状況に合わせ、適切な支援をご提案できるのが強みです。確実なDX推進と経営課題の解決に向け、お気軽にお問い合わせください。

著者プロフィール

著者:ソラストオンライン
医療事務コラム執筆担当
医師や医事課のみなさまをはじめとする医療従事者の皆様に、お役立ち情報を発信しています。
監修者:櫻井 寛司
医療法人の理事・理事長補佐として経営管理、財務、人事・労務、医師採用まで幅広く統括。 介護保険制度の開始当初から訪問介護・看護・リハ、デイケア、介護医療院など多様な医療・介護サービスの運営に携わる。 地域包括支援センター管理者や有料老人ホームの経営顧問も務め、地域医療・介護の体制づくりに貢献。 日本医療機能評価機構のサーベイヤーとして医療の質向上に取り組むほか、三次救急での臨床経験とMBAを背景に、実務と学術の両面から医療経営や介護制度に関する専門的な提言を行う。 2025年有限会社ラピモルト設立 代表に就任 医療福祉経営支援・研修支援会社 顧問先5社 2025年財団法人 IGP協会 理事

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