多くの病院が赤字経営である要因は?成功のポイント・改善事例を解説
病院経営の課題や問題を抱えていませんか?赤字が続いている、何をどう改善したらよいかわからないなど、課題に直面している病院経営者様は多いでしょう。本記事では、病院の経営者様に向けて、赤字になってしまう要因と経営を改善させるポイントを紹介します。自院の現状や課題と照らし合わせて、改善策を分析してみましょう。
病院経営の実態
病院経営の実態はどのような状況でしょうか?ここでは、病院の損益状況および経営状況の調査報告について紹介します。
【一般病院の損益状況】※1施設あたりの数値
| 令和6年度(千円) | 令和5年度(千円) | |
|---|---|---|
| ① 医業収益 | 3,127,987 | 3,058,886 |
| ② 介護収益 | 55,136 | 54,634 |
| ③ 医業・介護費用 | 3,397,892 | 3,323,462 |
| ④ 損益差額 | − 214,769 | −209,9432 |
出典:e-Stat「医療経済実態調査(医療機関等調査)/第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)/報告」
【令和5年度・令和6年度の医療法人の経営状況】
| 令和6年 | 令和5年 | ||
|---|---|---|---|
| 医業収支 | 医業収支が「黒字」の病院の割合 | 41.1% | 44.6% |
| 医業収支が「赤字」の病院の割合 | 58.9% | 55.4% | |
| 経常収支 | 医業収支が「黒字」の病院の割合 | 51.5% | 58.5% |
| 医業収支が「赤字」の病院の割合 | 48.5% | 41.5% | |
一般病院の経営データを見ると、医業・介護費用が収益を大きく上回っており、令和6年度の損益差額は約2億1,000万円以上のマイナスを計上しています。また、医業・経常収支ともに前年より赤字病院の割合が増加しており、収益よりもコストがかさむ構造的な厳しさが一層深刻化しています。
この背景には、人件費や物価の高騰により、収入以上に経費が膨らんでいる現状があります。赤字幅も拡大傾向にある中、持続可能な医療提供体制を守るためには、構造的な赤字からの脱却を目指す戦略的な経営判断が急務といえるでしょう。
病院団体の要望と政府の施策
| 医療施設等経営強化緊急支援事業について |
|---|
| ・生産性向上・職場環境整備等支援事業 機器導入や改修による効率化と環境改善 ・病床数適正化支援事業 病床削減や機能転換による適正化を支援 ・施設整備促進支援事業 物価高騰に対応し、施設の整備を支援 ・分娩取扱施設支援事業・小児医療施設支援事業 分娩・小児医療体制の維持・確保を支援 ・地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設) 分娩施設間の連携強化や体制確保を支援 ・地域連携周産期支援事業(産科施設) 産科施設間の連携体制やネットワーク構築を支援 |
物価高騰等による病院経営の危機を受け、8つの病院団体が国に入院時の食事療養費や基本料の引き上げなど計5項目を要望しました。これに応じ、政府は上記表の「医療施設等経営強化緊急支援事業」等の対策を講じています。
また、医療費の適正化を目的とした病床数削減の動きも加速。さらに2025年10月には、自由民主党と日本維新の会が連立政権合意文書を発表しました。これには、物価高騰に苦しむ医療・介護業界の現状を踏まえ、経営状況を好転させるための施策を実施すると明示されています。
参考:自由民主党「自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書」
これらの国の施策や現状は、病院経営の赤字がもはや個別の自助努力の限界を超えた、構造的問題であることを示唆しています。国は省エネ機器導入やDX推進への助成を支援の柱としており、経営者には、これら公的支援を最大限活用しつつ、国の指針に即した効率的な経営体制へ転換する戦略が不可欠といえるでしょう。
病院経営が赤字に陥る4つの要因
病院経営で赤字になってしまう要因として、医療の担い手不足や人件費の増加などが考えられます。病院経営の大きな課題を招く要因4つを見ていきましょう。
医療従事者の不足
医療従事者の不足は、病院経営を圧迫する大きな要因です。少子高齢化による労働人口の減少に加え、地方や過疎地域での医師偏在等が重なり、人材確保は困難を極めています。
日本の病床数は国際的に見ても多く、限られた医療従事者が過剰な病床に分散配置されることで人材不足がより深刻化しています。この構造的な人手不足が診療科の閉鎖や診療時間の短縮を招き、患者数と収益の減少に直結しているのです。さらに、現場の過重労働が新たな離職を招く「負の連鎖」で機能不全に陥る例もあり、人材不足が赤字経営を加速させる深刻な構造的問題となっています。
人件費・各コストの増加
| 令和6年度(千円) | 令和5年度(千円) | |
|---|---|---|
| 医業・介護費用 | 3,397,892 | 3,323,462 |
| (主な内訳※)給与費 | 1,824,906 | 1,787,592 |
| 医薬品費 | 403,225 | 398,231 |
| 給食用材料費 | 27,226 | 25,764 |
| 診療材料費・医療消耗器具備品費 | 298,744 | 285,269 |
| 委託費 | 240,359 | 231,654 |
| 経費 | 197,395 | 192,421 |
出典:e-Stat「医療経済実態調査(医療機関等調査)/第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)/報告」
※医業・介護費用の内訳の一部を記載しています。
経営赤字の大きな要因は、人件費の増大と物価高騰に伴うコストの著しい上昇です。上記の表が示す通り、給与費に加え医薬品や給食費、その他経費が軒並み増加しました。
とくに人件費は、医療の質維持や労働環境改善に向けた増員・ベースアップの実施により、一般病院の平均比率で58%に達するなど高止まりしています。また、委託費も増加幅が大きく、委託先の人件費増加により委託を行う費用も上昇していると考えられます。
これらの多岐にわたる費用の増加が、収益構造を大きく圧迫する要因となり、経営状況を急速に悪化させています。
外来患者数の減少・病床利用率の落ち込み
| 令和6年度(人) | 令和5年度(人) | |
|---|---|---|
| 1日の平均外来患者数 | 1,212,243人 | 1,233,703人 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況 Ⅱ病院報告」
※全病床を対象とした数値です。| 月末病床利用率(令和7年9月) | |
|---|---|
| 総数(病院) | 76.9% |
| 精神病床 | 81.7% |
| 感染症病床 | 10.6% |
| 結核病床 | 26.3% |
| 療養病床 | 84.7% |
| 一般病床 | 73.2% |
出典:厚生労働省「病院報告(令和7(2025)年9月分概数)」
1日の平均外来患者数は令和5年・令和6年を比較すると1.7%減少しています。また、令和7年9月時点の月末病床利用率は、全体で76.9%です。
多額の人件費や設備投資を抱える病院にとって、収益の柱である入院稼働の伸び悩みは経営にとって致命的です。空床が生む損失は大きく、利用率が損益分岐点を十分に上回らなければ、固定費を賄いきれずに経営赤字に直結する深刻な状況といえます。
新型コロナウイルスによる影響
新型コロナウイルスの流行は、病院経営に多大な影響を与えました。感染拡大防止のための厳格な衛生対策に伴うコストは大きな負担となり、非緊急の診療や手術の延期も多く発生。さらに、医療従事者の感染や過労による離職の増加などで、大事な人材が流出する事態も起きました。
また、患者さん側も緊急ではない受診を控えたり、予定していた入院を延期したりすることがあり、本来の収益源が減少。新型コロナウイルスの影響を受けて、多くの病院が経済的に厳しい状況に置かれました。
病院経営を改善する7つのポイント
・雇用状況の見直しを行う
・労働環境の整備と管理職の教育・育成を行う
・不要なコストを削減・適正化する
・サービスの質向上を目指す
・経営戦略を見直す
・専門のコンサルティングを活用する
厳しい経営環境を改善し、安定した黒字経営へ転換するにはどうすればよいのでしょうか?では、現状把握から戦略の見直しまで、病院経営を成功させる7つのポイントについて紹介します。
現在の経営状況を正しく把握する
経営状況の正しい把握は、病院の経営成功に欠かせない重要な要素です。一般的な企業であれば当たり前のことでも、病院経営ではおろそかにされやすいため、収支を正確に把握しましょう。
医業の収益はどのくらいであるか、どのくらいの経費がかかっているのか、収支のバランスを確認し、収入と支出の詳細なデータを分析します。医師は医療のスペシャリストではありますが、経営の視点が欠けてしまう場合も。経営指標を活用して病院全体の収支状況を評価し、改善が必要な箇所を迅速に特定するなど、客観的視点にもとづいて現状把握に努めましょう。
雇用状況の見直しを行う
雇用状況の見直しも、病院経営の課題解決に重要なポイントです。現状の人員配置や業務負荷を正確に把握し、必要に応じてスタッフの再配置や新規採用を行いましょう。
個人の努力や成果を正当に評価できる制度を導入することで、勤務している医療従事者やスタッフのモチベーションを上げられます。現状維持で満足せず、つねに福利厚生や給与の見直しなどを検討しましょう。
また、定期的な研修やスキルアップの機会をつくって医療従事者の専門性を高め、離職率の低下を図ることも大切です。
労働環境の整備と管理職の教育・育成を行う
雇用状況の見直しとあわせて、職員にとって働きやすい環境に整えることも大切です。労働環境の見直しにより、職員の離職率防止や定着率の向上を目指せます。
また、病院経営を担う管理職への教育・育成体制を整える必要もあります。管理職が経営の知識を適切に持つことで、経営改善に向けた効果的な施策の立案や実施を進められるようになるでしょう。
不要なコストを削減・適正化する
病院を継続して経営していくためには、不要なコストを削減し適正に保つ工夫が重要です。 【見直しが必要な経費】・通信費
・水道光熱費
・保険料
・診療材料費
・業務委託費
・人件費 など
医薬品は仕入れ先を絞って1社あたりの取引金額を増加させて、値引き交渉をするのもよいでしょう。在庫を持ちすぎないことで、医薬品の期限切れによる無駄も省けます。
通信費や水道光熱費などの固定費は、インターネットや電話回線などを見直すことでコストを削減できる可能性が。カバー範囲が過剰すぎる保険も見直してみるとよいでしょう。
また、人件費を大幅に削減することは難しいですが、業務の効率化を図るためにIT技術を活用することもおすすめです。電子カルテやAIを活用した診断支援システムの導入を検討することで、全体的なコスト削減ができる場合もあります。
サービスの質向上を目指す
病院として収益を上げるためには、集患が重要です。「困ったときにはこの病院に行く」「ここで診てもらいたい」と思ってもらえるように、地域の患者さんからの信頼を獲得する工夫が欠かせません。高い医療技術を持ち、サービスの質を向上させることが不可欠です。
地域の特性や患者さんのニーズを正しく把握し、特性に合わせた経営体制にする必要があります。患者さん目線を考えつつ、スタッフの教育や働きやすい職場づくりを目指し、円滑なコミュニケーションが取れるように改善しましょう。
また、業務プロセスの最適化やITシステムの導入を進め、病院内部の効率化を図ることで、医療従事者や事務スタッフ、患者さんすべてにとってよい環境を整えられます。充実した職場環境を整えることで、患者さんへのサービス向上、さらには病院の黒字化にもつながる可能性があります。
経営戦略を見直す
病院を経営する際は、都度戦略を見直しながら経営を進めることが重要です。地域住民に対して病院の認知度を高めるPRやマーケティング戦略を強化し、潜在的な患者さんを掘り起こしましょう。
待ち時間の短縮や診療の質向上など、患者さんのニーズに応えることも大切です。とくに待ち時間の短縮は、患者さんに見えやすい部分であり、患者満足度を高める施策として欠かせません。
多角的な改善を行い、病院経営の安定化と持続可能な成長を目指していきましょう。
外部のコンサルティングサービスを活用する
医療と経営に必要なスキルは異なるため、院内のリソースだけで対処せず外部の専門家の力を借りる方法がおすすめです。経営のプロであるコンサルタントを活用すれば、失敗のリスクを最小限に抑え、本来の医療業務に専念できます。
ソラストの「医療機関経営支援サービス」では、病院経営者の皆様が抱える経営課題の解決に取り組み、ITの導入支援や働き方改革、「収益の最大化」(診療報酬請求の適正化)に向けたサポートも実施しています。専門家の知見を味方につけ、経営基盤のさらなる強化を図りましょう。
【ソラスト】病院経営の改善事例
実際、プロの支援によって経営状況はどのように変わるのでしょうか?では、ソラストが実際に支援を行った病院経営の改善事例について紹介します。
【事例1】診療報酬請求精度調査| お客様の声 |
|---|
| ・今回の診断結果で、堅実に実施している部署、担当者については、評価してあげたい。(266床 A院長) ・これから取組むべき課題が見つかった。ありがとう。(304床 B院長) |
| 実際の収益改善事例 |
| ・精度調査実施前後で月額約160万円、年間で約2,000万円相当の収益改善につながった(199床 C病院) ・精度調査実施前後で月額約86万円、年間で約1,000万円相当の収益改善につながった(130床 D病院) |
「診療報酬請求精度調査」は、現状の診療報酬請求業務の実態を把握したうえで、算定の機会損失と算定漏れ・誤りの2つの軸から調査・分析して、課題や問題点を洗い出します。
ソラストの長年のノウハウを集積したICTツールを活用し、潜在的な算定項目やレセプトチェック・カルテの突合調査も行います。
【事例2】伴走型収支改善支援サービス| 実際の収益改善事例 | |
|---|---|
| 【施策】 ・医療従事者に対する勉強会の実施 ・対象患者を月末までにピックアップし、医療従事者と共有 ・毎月の算定率を指標として提示 |
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| 【結果】 算定率が大幅に改善し、「年間1,000万円相当」の増収に成功 |
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「伴走型収支改善支援サービス」は、貴院の伴走者として実質的な収益改善をサポートするサービスも展開しています。
医療機関経営支援に精通したアドバイザーが、現状の分析と課題の提案から、行うべき取り組みやその取り組み実施後の評価、さらなる改善支援まで、「PDCA」のサイクルで伴走してサポートします。
病院経営の今後と経営者に求められる行動
今後は地域医療構想や高齢化を背景に、病院の統合・再編が加速し、診療報酬体系や保険診療の抜本的な見直しが進むと予測されます。現状維持に固執すれば、時代の流れに取り残されかねません。
しかし、経営者はこの変化を好機と捉える視点が重要です。再編を単なる脅威ではなく、経営基盤の強化や課題解決の有効な手段として活用する柔軟な思考が求められます。変化を先読みし、能動的に動く姿勢こそが病院の未来を左右するでしょう。
また、より病院経営を安定させるために、病院の理念や基本方針を院内全体に深く浸透させることや、経営の根幹を担う管理職の教育・育成も欠かせません。医師は医業のスペシャリストです。そのため、経営層の医師だけでなく、管理職が自院の現状把握や経営に関する知識の習得をさらに深め、改善に向けた取り組みを積極的に行っていける体制づくりが求められるでしょう。
経営課題を乗り越え、選ばれ続ける病院を目指そう
病院経営の赤字は、人件費や物価高騰、患者数低迷などが主な要因です。脱却にはコスト見直しに加え、業務効率化やデータ分析、外部支援の活用がポイントになります。本記事で解説した成功ポイントやソラストの改善事例を参考に、厳しい医療情勢下でも選ばれ続ける、持続可能な経営体制の構築へと踏み出しましょう。
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